Cookieの代替技術は探さない!脱・広告依存を図ったエン・ジャパン
続いて、エン・ジャパンのポストCookieへの取り組みについて田中氏が説明。エン・ジャパンではCookieの代替技術を探すことをやめ、プロダクト改善とリサーチに注力する判断に至ったと田中氏は述べた。

加えて、利益率の問題や出稿先の影響を受けてしまうといった広告依存のリスク、若手マーケターの成長などを考え、長期的な視点で広告以外の仕事に挑戦することを選択したという。その取り組みの一つとして、田中氏はプレイドの提供するCXプラットフォーム「KARTE」の導入によるプロダクト改善施策を挙げた。これにより、マーケター自身がノーコードでサイトを改修することが可能となり、実際にCVRやサイトの回遊率向上、リピーターや新規顧客の定着率増加といった効果があった。
また、田中氏は顧客理解のためのリサーチにおけるアプローチも紹介した。たとえば同社の顧客インタビューの際は、転職理由を細分化し「当時の状況」「転職を意識した瞬間」など、インタビュー対象が転職に至った経緯を“漫画で書ける”ほど理解することを目指した。
さらにエン・ジャパンでは、自社ユーザーだけでなく、他社ユーザーや求人先の企業など様々な層に対象を広げてインタビューを実施している。
このような脱・広告依存の取り組みを進めるにあたり、いきなりゼロか100かで行うのは困難だ。少しずつ向き合い方を変える意識を持つと良い、と田中氏は提案した。
「1日8時間仕事をしているとして、そのすべてを広告関連業務に費やすのではなく、たとえば1時間はマーケティングツールの問い合わせをしてみる。あくまで広告に依存することをやめるという意識で、時間の配分や使い方を変えていく方法がおすすめです」(田中氏)
プライバシー保護対応はどうすべき?今日からできる第一歩は
セッションでは、ポストCookie時代のマーケティングに欠かせない2つのトピックが議題に上った。1つ目は「プライバシー保護への対応」となり、下地氏がNTTドコモのプライバシー保護における取り組み事例を解説した。
NTTドコモではパーソナルなデータの取り扱いにおいて漫画を用いて、その概要やメリットを伝えている。加えて、ユーザーは「パーソナルダッシュボード」という機能を用いることで、パーソナルデータの利用を許可する場面を選択できるのだ。

またNTTドコモでは“パーソナルデータ憲章”が存在し、「顧客データを元に新しい価値を生み出して、社会や顧客に還元することを目指す」という旨の記載がある。
社員はこの意識を持ってデータを運用したり、ユーザーとコミュニケーションを取ったりしており、「プライバシー影響評価(PIA)会議」はその一例だ。同社ではデータを使った施策を行いたい場合、担当者と法務部やデータ主幹部門との事前確認を踏まえたPIA会議が行われ、ユーザーへのメリットやリスクなどが議論される。

田中氏はNTTドコモの事例を受け、「『最初に何をしたら良いか』と迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。当社もそのように感じ、まずは社員のスキルマトリックスにプライバシーポリシーの改善を必須項目化することから始めました」と述べた。
さらに簡単な取り組みとして、田中氏は自社のプライバシーポリシーを読むことも推奨した。ユーザーへ同意を求めている事項を把握し、もし違和感があった場合、法務部へ修正の依頼や相談をしてみる。これがユーザーのプライバシー保護の第一歩目となるのだ。
