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テレビCM戦略の「認知ごっこ」を防げ。リテールメディアが本領を発揮する“オンターゲット”な活用例

国内小売/メーカーに聞いたリテールメディアへの「本音」

 まずメディアの運営元である小売事業者に「現状のリテールメディアの運営(獲得売上や利益)をどのように評価しているのか?」と尋ねたところ、「うまくいっている」と評価した企業は9%で、「なかなか苦戦している」が46%という結果だった。

 さらに踏み込んで「なぜ苦戦しているのか」(複数回答可)と尋ねたところ、次のような回答が得られたという。

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 課題には、「代理店などとの連携を含め、広告獲得のための営業運営体制の構築」や「広告知識やデータ分析スキルのある人材の採用」を挙げる企業も多い。日本のリテール事業者は「メーカーから仕入れた商品を販売する」のではなく、「店舗や自社サイトを広告メディア化する」というビジネスモデルの転換が組織的にうまくいかず、苦戦していると見られる。

 これに対し、アマゾンやウォルマートは「広告知識やデータ分析の高度スキルを備えた人材が社内で音頭を取ることで成功しています」と松田氏は説明する。ここが国内リテールメディアと米国との大きな差となっている。

 一方、メーカー側はリテールメディアについてどう捉えているのか。

 アンケート結果によると、メーカーのうち「個別リテールメディアに継続出稿していない」という企業は71%に上っている。つまり大多数の企業がリテールメディアの継続活用に課題を感じていると言える。その理由としては主に次のようなものが挙がったという。

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 ただ、それでもメーカーの50%は「日本でも環境が整えばリテールメディアに対する広告出稿の興味度は高い」と回答しており、リテールメディアに期待しているのも事実だ。

 これまで小売とメーカーの関係は「仕入れて商品を売る」「商品を卸して売ってもらう」という関係で、メーカー側が自社商品を小売事業者に“特に注力して売ってもらう”ためには販促費をかけるのが一般的だった。広告予算は販促ではなくマーケティング予算になるため、「小売事業者のメディアに広告を出稿する」という形は、そもそもの商習慣とはまったく別物だ。この戸惑いが、メーカーと小売事業者の双方に存在していると見られる。

テレビCM展開で起こりがちな「認知ごっこ」を防ぐ。事例から紐解くリテールメディアの活用法

 そんなメーカーのマーケティング活動のなかでも、特に大きな投資はテレビCMの展開だろう。

 小売店舗で買ってもらうには、まず認知度を上げることは重要だ。ところがテレビCMは、効果は大きいものの、それが売上にどれだけ寄与しているのかわかりにくい。実際、メーカー300社を対象とした調査(2023年4月・ノバセル社と実施)では「テレビCMを打っているものの、売上に寄与しているかわからない」「認知を積み上げているものの、売上に寄与しているかわからない」「認知は上がったが、売上は上がらない」という課題が上位になっていた。

 この「認知を広げても売上につながったかわからない/つながらない」という課題は切実だ。松田氏によると、酎ハイなどすぐ飲めるアルコール飲料分野(RTD:Ready to Drink)において、ある新商品が新規購買者を増やすためにテレビCMを打ったところ、「1,300GPRの出稿を行ったにもかかわらず、追加で新規購買者を獲得するには至らなかった」という結果に終わったという。松田氏はこのようなケースを“認知ごっこ”と呼称する。

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 続けて、「この状況を改善できるのがリテールメディアの活用です」と松田氏は明確に述べる。テレビCMの認知度向上を活かしながら、店頭で広告展開を行うことで、購入までしっかりつなげていくという戦略だ。

 カタリナマーケティングでは、ある日用品のテレビCM放映期と合わせ、購買データを基にしたデジタル広告配信と、店頭のインストアメディアでターゲティングオファーを行った。

 具体的には、ターゲティングしたユーザーがSNSやニュースサイト、動画サイトを視聴している時にその商品のデジタル広告を配信すると共に、店頭ではその商品を購入する時に使えるインセンティブ付きオファーを発券。インセンティブ付きオファーは、インセンティブで購入意欲を促すのではなく、「オファーに表示されている商品を消費者が“見る”ことで認知を高められるので、購買を促進させることができるのです」と松田氏は話す。実際、オファーを受け取って実際に使うユーザーは15%にもおよぶというが、さらにオファーを受け取りながらインセンティブは利用しないが当該商品を購買する率は通常の購買率に比べて2.4倍にもなっているという。そのため、値引きが必要ない場合は商品告知広告だけで展開するそうだ。

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 こうしてテレビCMとリテールメディアの施策を実施したところ、テレビCMだけに接触したユーザーと、テレビCM+オファーがリーチしたユーザー(オファーのインセンティブは未使用)の購買指数を比べたところ、後者のほうが1.5倍高かった。さらにテレビCM+クーポン発券されてかつ利用したユーザーだと購買率はさらに向上し、通常来店者の購買率の4倍に上ったという。

次のページ
リテールメディアを活用すれば獲得顧客の質も担保できる

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:カタリナマーケティングジャパン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/14 12:00 https://markezine.jp/article/detail/47478

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