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ブランディングも「ROIに紐づけた効果検証」を。九州での利用拡大を目指すJQ CARDのブランド戦略

 抽象度の高い施策が多く、効果検証がおざなりになってしまいがちなブランディング。投資の目的も、結果の検証も“ふわっと”してしまっていませんか? 本稿では、ブランド力を数値化する手法「ブランド・パワー」を取り入れ、ブランド戦略の策定~実行に取り組んでいるJR九州のクレジットカード「JQ CARD」を取材。取り組みをスタートしてから約1年で、どのような収穫があったのか。九州旅客鉄道の山田和弘氏と、同社の支援を行うBrandismの木村元氏に話を聞きました。

ブランド・パワーを活用中、JQ CARDにインタビュー

MarkeZine:2023年12月にMarkeZine BOOKSから刊行した書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』。この好評を受け、3月に本書の講座化が決定しました。今回は、実際に「ブランド・パワー」を導入・活用されている、JR九州の山田さんに、活用事例を伺いたいと思います。

 さて、山田さんは書籍『ブランド・パワー』を読んで、著者のBrandism木村元さんに連絡されたんですよね。

山田:はい。書籍が発売されてまだ間もない頃、書店で平積みされていた『ブランド・パワー』を手に取り、その場で拝読しました。ブランドの競争力をいかに定量的に可視化するかという理論が前半で説かれており、後半ではケーススタディも補足されていましたよね。

 一般的なマーケティング書と比較して、内容が非常に実務的であると感じましたし、その意味で前半の理論解説にも関心を持ちました。非常に読みやすかったので1日で一気に読み、読み終わった後にBrandismさんに連絡しました。

九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部デジタル事業創造部 クレジット・企画 副課長 山田和弘氏
九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部デジタル事業創造部 クレジット・企画 副課長 山田和弘氏
九州旅客鉄道に入社し営業などを担当した後、ECサイトの運用に携わるように。まだ黎明期だったネット広告を活用しながら、JRと宿泊のダイナミックパッケージや楽天トラベルとの提携プランなどを開発。CDPやMAの導入などデータを活用したマーケティングの推進にも取り組んできた。2023年6月よりJQ CARDの担当に。これまでの経験を活かし、クレジットカードのマーケティング業務にデータドリブンな視点を導入中。

MarkeZine:そこからBrandismとの取り組みが始まったそうですが、山田さんがマーケティングを担当されている「JQ CARD」では元々ブランディングやマーケティングの課題があったのでしょうか? あわせて、JQ CARDについても簡単にお聞かせください。

山田: JQ CARDは、JR九州がクレジットカード会社と連携して発行しているクレジットカードです。JR九州グループの提供する鉄道サービス、駅ビルでのショッピングを“おトク”に利用でき、JRキューポがたまるクレジットカードとして、九州にお住まいの方をメインターゲットに事業を展開しています。

 Brandismに連絡した当時は、JQ CARDのさらなる成長・拡大を目指し、次の戦略を考えなければならないタイミングでした。というのも、コロナ禍を経たキャッシュレス決済の浸透にともない市場も拡大する中で、この数年、競合各社から様々なクレジットカードやQRコード決済のサービスが出ています。そのような中でJQ CARDがさらに成長するためには、新たなマーケティング戦略が必要だと考えていました。

JQ CARD
JR九州の鉄道サービスや、駅ビルでのショッピングをお得に利用でき、JRキューポがたまる「JQ CARD」

ブランド・パワーとは? JQ CARDが踏んだ3ステップ

MarekZine:JQ CARDは九州の消費者をターゲットにしているとのことですが、これまでどのように露出・販促をされてきたのですか?

山田:JR九州グループは、九州の主要都市でショッピング施設「アミュプラザ」を運営しています。JR九州の主要な駅や列車内で広告を掲出するとともに、アミュプラザでの買い物がおトクになるというカードの特長も踏まえ、アミュプラザに関連した広告施策を展開していました。

MarkeZine:そういった状況から、どのようにブランド・パワーを起点にした戦略策定をスタートしたのでしょうか?

木村:ブランド・パワーは、ユーザーもノンユーザーも含めたターゲット顧客からの「ブランド認知の量と質」を可視化する手法です。ブランドが目指すブランドイメージをしっかり獲得できているか、それが売上・利益に繋がっているかを競合の状況も含めて総合的に見ていくことが最終的なゴールになります。

株式会社Brandism 代表取締役社長 木村元氏神戸大学卒業後、2009年、ユニリーバ・ジャパンへ入社。 大手小売に対する法人営業を経て、マーケティング部門にてラックスやダヴなどのブランドマネージャーを担当。イギリス本社の勤務を歴て、日本のDoveブランドのカテゴリー責任者を担当。ユニリーバが買収したラフラ・ジャパン株式会社の代表取締役社長として買収後の事業成長を牽引。その後、株式会社Brandismを設立し代表取締役社長に就任。日系、外資のBtoB、BtoC領域まで幅広いマーケティング支援をBrandismで実行。
株式会社Brandism 代表取締役社長 木村元氏
神戸大学卒業後、2009年、ユニリーバ・ジャパンへ入社。 大手小売に対する法人営業を経て、マーケティング部門にてラックスやダヴなどのブランドマネージャーを担当。イギリス本社の勤務を歴て、日本のDoveブランドのカテゴリー責任者を担当。ユニリーバが買収したラフラ・ジャパン株式会社の代表取締役社長として買収後の事業成長を牽引。その後、株式会社Brandismを設立し代表取締役社長に就任。日系、外資のBtoB、BtoC領域まで幅広いマーケティング支援をBrandismで実行。

 JQ CARDの場合は、「マーケティング戦略の策定」を第1フェーズの目標に据えて、大きく3つのステップで取り組みを進めていきました。

1.現在の顧客層の分析:JQ CARDが持っていた1st party dataも活用し、自社の顧客の特徴と傾向を分析

2.STP分析:STP分析により、優先的にアプローチすべきターゲットを設定

3.ブランド・パワー調査:顧客ターゲットを定めた上で、そのセグメント内でのブランド・パワーを調査

 最初に行ったのは、現在の顧客層の分析です。クレジットカードを発行する際の登録情報があるので、元々JQ CARDには1st party dataがしっかり蓄積されており、高度なデータ分析も行われていました。ただし、匿名性のある情報であるため、契約のきっかけや使用目的など、顧客の特徴を把握することはできません。そこで、1st party dataだけでは得られない必要な項目を調査・分析し、まずは顧客のリアルな姿を把握しました。

 次に行ったのはSTP分析です。当然ですが、「九州に住んでいて・まだJQ CARDを発行していない人」だとターゲットが広すぎます。限りある広告予算を有効に活用するには、自社の課題と機会を分析した上で、戦略上のターゲットに優先順位をつけなければなりません。

 STP分析を行い、優先的にアプローチすべきターゲットを設定した後、そのターゲットを対象にブランド・パワーを調査していきます。対象を絞り込んだ上で、「JQ CARDに対する認知の量と質」を調査するというのがポイントです。これにより、どのようにブランドイメージを伸ばしていけばよいか(=コミュニケーション戦略)を具体的かつロジカルに考えることができます。

3月18日(火)に『ブランディングの「効果検証」に特化した専門講座』を開催! BtoC、BtoBどちらのマーケターにもマッチするカリキュラムとなっています。詳細はMarkeZine AcademyのHPからご覧ください。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/02/19 09:00 https://markezine.jp/article/detail/48153

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