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イベントレポート

カギは生活者との「信頼」──Accenture Life Trendsが示す5つのトレンドを読み解く

生活者との関係構築におけるパラダイムシフト「CRM2.0」とは

 続いては、吉井氏から日本企業の取り組みのポイントが語られた。テクノロジーとの関係性のリバランスが求められる中、企業はテクノロジーを主体的に活用し生活者との関係構築を強化することが不可欠になるだろう。

アクセンチュア株式会社 ソング本部 Customer Growth Strategy マネジング・ディレクター 吉井雄太郎氏
アクセンチュア株式会社 ソング本部 Customer Growth Strategy マネジング・ディレクター 吉井雄太郎氏

 1990年後半、顧客ニーズが多様化する中で顧客関係を構築し最適化されたアプローチを行う考え方として、アクセンチュアの前身であるアンダーセン・コンサルティングが「CRM」という概念を提唱。これを「CRM(1.0)」と位置付けた上で、データ統合の限界やリアルタイム性の不足、組織のサイロ化といった障壁を突破するための「CRM2.0」が、吉井氏から紹介された。

 「CRM2.0は、人とテクノロジーが融合し企業活動を根本的に革新していく、生活者との関係構築におけるパラダイムシフトだと定義しています。生成AIとバディを組むことで統計解析や戦略策定、デザインもできるような高度に多能工化された人材によって、よりフラットでファンクショナルな組織へ進化していくのです」(吉井氏)

 このCRM2.0に企業はいかに取り組むべきなのか。「CRM2.0における1丁目1番地はデータの受領・統合」と吉井氏が述べるように、まずは生活者からより深いデータを取得できる信頼関係が大前提だ。その上で“一人十色”ともいえる多様で変化していく価値観を持つ生活者を理解し、信頼・共感を作るブランド作りを、言行を一致させながら進めていくことが大切だという。

 その実現のために、テクノロジーと人の力を活かしたプロセス改革を企業として横断的に行い、顧客体験価値(cLTV)とLTVの両立を検証するシミュレーションを通じた高速PDCAの確立が最後のピースとして必要になる。

CRM2.0を実現する4ステップ

 吉井氏はこの4つのステップについて、それぞれ解説を続けた。まず1つ目の「データの受領・統合」においては、企業の個人情報の取り扱いに不安を抱く人が少なくない中、生活者から多次元のデータを預かるためには、信頼・共感を得ていることが必須条件だ。

 2つ目の「信頼・共感の獲得」では、カンヌライオンズでもグランプリを受賞したハインツのプロモーションを紹介。感情的なつながりを築くために「It Has To Be Heinz(ハインツ以外ありえない)」というブランド愛を消費者自らに語ってもらうことを狙った。

 18ヵ国の生活者に対し行われた「ケチャップの絵を描いてもらう社会実験」では、97%がハインツのケチャップボトルを想起する絵を描いた。また、レストランでハインツのボトルに他社製品を入れる行為が横行する状況に対し、生活者に情報提供を呼びかけ本物のハインツケチャップを提供するキャンペーンでレストランの顧客化を図った。実際に、同社はグローバル売り上げ10%以上の成長を実現した上、競合からも3ポイント以上シェアを獲得することに成功。ビジネス成果を出しつつ、顧客との長期の関係構築を実現した。

 3つ目の「横断的なプロセス改革」としては、アクセンチュア自身の事例が挙げられた。アクセンチュアでは2025年春から全社員がAIエージェントとタッグを組んで業務に取り組む。業務の代替や意思決定も支援可能な環境を構築することで、人間はより創造的な業務フォーカスでき、業務のスピードアップや品質向上を見込む。

 4つ目の「cLTVとLTVの検証」では、資生堂の自社データを統一管理してそれぞれの寄与度を検証する取り組みが紹介された。同社では各データのcLTVやLTVへの寄与度・関係を定量化して、それらを両立させる施策と精度高く意思決定を実現できる形を目指している。

 「Accenture Life Trends 2025」で示された5つのライフトレンドと、それを踏まえた顧客・生活者との関係の構築や強化。同レポートでは、これからの時代に選ばれる企業やブランドになるために欠かせないトピックが示された。合わせて、それを実現する概念として提示された「CRM2.0」についても引き続き注目したい。

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48550

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