コンテンツ、ユーザー体験、プラットフォームがSpotifyの強み
━━Spotifyが高いアテンションを獲得できる要因について、どのように分析していますか?

原田:主に2つの要因があると考えています。1つ目は、ポジティブな視聴態度と没入感の高さです。Spotifyユーザーは気分を上げたい時や集中したい時に音楽やポッドキャストを選ぶことが多く、自然と広告への意識も向きやすくなります。
2つ目は広告に対するユーザーの高い受容度です。85%のユーザーがSpotify広告は「押し付けがましくない」と答えるなど、他メディアでよく見られる広告ストレスがSpotifyでは少なく、そのためメッセージが伝わりやすいと考えています。

スティーブン:広告会社の視点で見ると、Spotify上のコンテンツは価値が高く、それらを見聞きするためには、ユーザーは少しの間であれば広告が気にならないと考えるのではないかと思います。また、動画は全画面表示、音声は没入感のある聴き方ができるといったSpotifyの体験の質の高さにも起因していると考えます。コンテンツ、体験、プラットフォームが良いからこそ、ユーザーはSpotifyの広告に対してポジティブな姿勢を持っているのです。
3つ目として、Spotify広告をスキップするには、アプリを閉じて再び開き、プレイリストに戻り、聴きたい曲を選び直す必要があります。この手間の大きさが、ユーザーをアプリ内に留めている要因でもあります。コンテンツ、体験、プラットフォームが良いからこそ、ユーザーはSpotifyの広告に対してポジティブな姿勢を持っているのです。
アテンションという評価軸で「広告=うっとうしいもの」が変わる
━━アテンションが評価指標として浸透していく中、デジタル広告やプランニングの未来についてどのようにお考えですか。

ジョシュア:アテンションの浸透で、広告はより良くなっていくはずです。現代人の多くが広告ブロッカーを使ったり、データ追跡を拒否したりしていますが、それはデジタル広告がうっとうしいものであると感じられてしまっているからです。アテンションが採用されれば、広告の表示場所やフォーマットに合わせたクリエイティブ制作や、より興味深いストーリーテリングが重視されるようになります。
マーケターは「この広告は見たいと思えるほどおもしろいか」を考えるようになり、結果として消費者のデジタル広告への印象も良くなるでしょう。
スティーブン:アテンションという考え方と指標は、世界でも日本でも、将来的にメディアプランニングとその評価、最適化の基盤になると思います。そうなる未来を見越して、マーケターの皆さんには、できるだけ早くアテンション測定を始めて、ベンチマークを溜め始めることをおすすめします。アテンションエコノミー研究の次のステップとしては、まだ調査していないデジタルチャネルや、TV・OOHなどのオフラインチャネルの計測へも拡大していく予定です。
原田:アテンションはまだ日本では比較的新しい概念ですが、DJIBさんが日本でアテンションエコノミーの検証を始めたことは、広告主の方々が新しい指標を取り入れるきっかけになると期待しています。今回の調査結果を踏まえて、メディアプランニングにおけるSpotifyの最適な役割についても引き続き検証していきたいと思います。