アテンションをKPIとする企業も。Spotifyが調査に踏み切った狙いは?
スティーブン:ある日本のグローバルIT企業ではアテンションを既にKPIとして導入しています。そもそも日本ではアテンションを測れるメディアがまだ限られているという現状がありますが、グローバルの動向からしても、利用は広まっていくと見ています。今後は電通のプランニングツールにもアテンションデータを組み込む予定なので、ゆくゆくはお客様の要望に応じてアテンションベースのメディア選定ができるようになるでしょう。
━━今回、Spotifyと共同でアテンション調査を行った背景を教えてください。

スポティファイジャパン マーケティングサイエンスリード 原田桃子氏
調査会社のニールセン、Twitter(現X)でのリサーチ担当を経て、スポティファイジャパン マーケティングサイエンスリードに着任。BtoB向けマーケティングリサーチを中心に、Spotifyの広告価値を明らかにし、広告主の効果向上をサポートしている。
原田:Spotifyとしては、リーチやインプレッションといった従来指標だけでなく、Spotifyの本当の広告価値を明らかにしたいと考えていました。特に、広告に対するユーザーの受容度が高いというSpotifyならではの強みをデータで証明できないかと思っていたところ、DJIBさんのアテンションエコノミーの取り組みを知り、ぜひSpotify広告でも検証してほしいと思ったことがきっかけです。米国でのアテンション研究でもSpotifyがパートナーとして参加していたという経緯もあり、今回の協力が実現しました。
スティーブン:Spotifyは日本国内でも大きな音楽プラットフォームですし、音楽ストリーミング広告の市場もここ5〜10年で大きく伸びています。そこで、スポティファイジャパンと協力して音楽ストリーミング以外のメディアの結果も含む包括的なレポートを作ろうと考えました。
━━調査はどのように実施したのでしょうか。
スティーブン:今回は、Spotify Freeプランを日常的に利用している18歳以上の日本のユーザー303名を対象に、30分間のオンライン調査を実施しました。参加者には、通常の使用感に近づけるため模擬的なSpotifyの画面からプレイリストを聴いていただき、最初に2本の動画広告と、プレイリスト再生中に4本の音声広告を流しました。その後アンケート調査も行い、ブランド認知や気分についてもヒアリングしています。広告は日用品、IT、金融など様々なカテゴリーを横断して用いました。
インストリーム広告、SNS広告よりもアテンション維持率が高い
━━調査結果について、特に印象的だった点を教えてください。
スティーブン:全体的に見て、Spotifyでは音声広告と動画広告の両方で、視聴者が高いレベルのアテンションを維持していることがわかりました。動画広告は他プラットフォームのインストリーム広告と比べて2.9倍、SNS広告と比べて5.1倍のアテンションを獲得、音声広告もインストリーム広告と比べて2.3倍、SNS広告と比べて4.2倍の高いスコアでした。


原田:アテンションの推移を見ると、他メディアでは広告の最初の1〜3秒でユーザーの注目度が急激に下がるのですが、Spotifyの場合は音声も動画も、アテンションが長く続くという特徴があります。これはSpotifyの大きな強みだと思います。

原田:Spotifyの広告はスキップできない形式ですが、他のスキップ不可のメディアと比べても約2倍以上のアテンション秒数を達成していました。つまり、単にスキップできず強制的に広告を見聞きさせられるためアテンション秒数が長くなるというわけではないと考えられます。
━━ブランドリフトに関する結果はいかがでしたか。
原田:ブランド想起リフトに関しては、音声広告で+25%、動画広告で+27%という結果が出ました。これは他のメディアと比較しても良好な数字です。
新たな発見だったのは、ユーザーがポジティブな気分でオーディオを聴いている時には、ブランド想起が8ポイント向上するという点です。ユーザーの気分に合わせたターゲティングや、気分に寄り添ったクリエイティブを作ることで、Spotify内でのアテンション効果をさらに高められると思います。