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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

先進的なCRMを実践する事例大全

「ROI可視化までお客様軸」に徹底改革 顧客LTVの最大化を目指すファンケルのCRM戦略

効果的なKPIを設定するために大切な「仮説づくり」

━━2024年1月には紙の情報誌もリニューアルされたとうかがいました。そもそもデジタル接点を数多く展開するなかで、現在の情報誌にはどのような役割があるのでしょう?

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ファンケルの情報誌と商品カタログ。上段がリニューアル以前、下段がリニューアル以降のもの

 1つには、既存のお客様は40代後半〜50代以降の方がかなり多く、情報誌を見てECサイトで注文される方が多いという理由があります。もう1つは、約40年にわたって続けてきた情報誌という絆の強さです。情報誌が届くこと、家にあることでファンケルを常に想起してもらえるので、購入の可能性も上がりますし、ブランドロイヤルティも上がります。「ECで購入されるから紙はいらなくなる」とはむしろ逆の発想で、ECの時代だからこそ紙の役割もあるのではないかと、むしろ情報誌を価値あるものにできないかという視点でリニューアルしました。もちろん、これが最終系だとは思っておりませんし、将来的に情報誌はどうしていくべきかということも考えながら、引き続きアップデートしていきたいと考えております。

 情報誌は創業期から制作しているもので、2024年以前は化粧品情報誌の『エスポワール』、健康食品情報誌の『元気生活』と2種類を展開し、またそれとは別に化粧品、健康食品の商品カタログがありました。2024年からは「お客様に提供する価値の『美』と『健康』を統合する」という方針を立て、化粧品情報と健康食品情報を一体化した情報誌「ファンケル フルーミー」に刷新。65歳以上のお客様には「ファンケル フルーミープラス」をお送りしています。

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 これにはデジタル施策と同様に、「LTVを高めるために、お客様への提案を「点ではなく『面』にしよう」という戦略を展開していたことも背景にあります。

 情報誌の送付先についても、データを分析して対象者を絞っています。合わない方には送付を止めてみたり、別のDMを送ってみたりするなど工夫を重ねています。

━━KPI設定の面では、LTVの向上を目指して「併売」「継続」の2つを意識し、改善されてきたそうですね。改めてどのような考え方が設定の鍵になっていますか?

 併売に関してもう少し具体的に分けて言いますと、顧客セグメントごとに化粧品内の併売状況や健康食品内の併売状況のほか、化粧品・健康食品を合わせた併売状況を確認していますし、通販・店舗の併売状況や、どのチャネルでどんなサービスを利用しているのかというところまで見ています。あとは先ほど話したように、アプリ登録・LINE登録などファンケルとのつながり状況も可視化しています。

 こうしてお客様を軸に様々な指標を可視化・共有するようになって、通販営業本部全体も変化しました。「これはどのお客様のためになっているのか」「あの施策は狙ったお客様層にあまり反応が良くなかったから、この施策はどうだろうか」というように、これまで施策や商品単体の売上の良し悪し中心だったこところから、どのお客様の併売が増え、継続が高まっているのかなどメンバーの意識も変わってきたと思います。実際にお客様を見る切り口を試行錯誤しながら変えて、打ち手を実行して、伸びしろがないと思っていた領域で売上が上がってくるなどの効果が出ています。

 私もこの3年間で学びましたが、表面的にデータを見るだけではうまくいかなくて、お客様軸でいろいろな切り口や新しいデータを見ること、さらに固定概念を捨てて、データを見て「ここをこうすればもっと良くなる可能性がある」というアクションにつながる仮説を見つけないと変化は起きないと思います。その可能性を見つけたうえで、指標を変えていくのが大事だと考えています。

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お客様軸をぶらさず、通販・店舗の融合を進める

━━ファンケルは徹底して「お客様軸」でCRMを推進していらっしゃることがわかりました。そんなファンケルがCRMを推進する意義、価値についてどのようにお考えですか。

 より多くの方に、より多くのファンケル商品をご利用いただき、続けていただくことで、より美しく、健やかになっていただくこと。これはファンケルの存在意義であり、CRMを推進する意義だと思っております。それに加え、商品やサービスを介したファンケルとのつながりや体験によって、ささやかな喜びが続く毎日を提供していきたいという気持ちでCRMの推進に取り組んでいます。

 ロイヤルティを高めることも、LTVや収益性を最大化することも結果であり、お客様を主語に、お客様を幸せにしたいという気持ちをもって、「お客様との絆づくり」を行っていくことがファンケルらしいCRMであると考えております。実は、取引先の方からよく「ファンケルの人は常にお客様を主語にして会話しますね」というお言葉をいただきます。これは、創業以来、お客様を大切に想う姿勢がファンケルのカルチャーとして根付いているからだと思います。

━━今後の展開についてもお聞かせください。

 大きくは2つありまして、1つは、店舗では2025年4月からお客様との関係性強化に向け、接客に役立つアプリを導入して全国展開しています。こうして店舗チャネルはカウンセリングやイベント体験を強化し、通販はさらにダイレクトマーケティング機能を強化することで、両チャネルの様々な特長を活かしたCRMや新たにチャネルを融合したサービスを創り出すなど、ファンケルらしい新しい価値をお客様に提供していきたいと考えています。

 もう1つは、せっかくLTVを高める取り組みが形になりつつあるので、お客様の数を増やす取り組みも行い、もっともっとファンケルの存在価値を高めることができればと考えております。

ファンケルの石川氏も登壇!LTV戦略が学べるセッションが無料開催

 2025年9月10-11日に東京・丸の内で開催予定の「MarkeZine Day 2025 Autumn」では、本記事で登場したファンケルの石川氏らが登壇するセッション『ファンケル×ゴルフダイジェスト・オンラインに学ぶ「ブランド想起」を広げるLTV最大化戦略(仮)』を実施予定です。

 パネリストとしては石川氏のほか、ゴルフダイジェスト・オンラインでデータを活用したエンゲージメント向上に取り組む加藤氏も招聘し、モデレーターに経営やCMO視点で長くデータを活用している、タネトシカケの代表、はなまるのCMOの髙口裕之氏を迎えます。

 顧客とのエンゲージメントを高め、LTVを向上させるためにどのような工夫が必要か、どのような発想でデータを活用すべきかなどが学べるセッションです。参加は事前登録制で席に限りがありますので、登録はぜひお早めに。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49453

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