Webサイト訪問数向上を阻む3つの課題&解決策とは?
ページ制作の土台を整えた後、ソフトバンクはWebサイトへの訪問数向上に着手した。この取り組みにおける主な課題は3つ。
1つ目は、コンテンツ作成におけるリソース不足で、専門性の高いB2Bコンテンツを量産するための人員が足りていなかったことだ。2つ目は、SEOに関する知識不足で、効果的なSEOができていなかった点。3つ目は、コンテンツ作成者のスキルが属人化し、共通の方法が確立されておらず、品質にばらつきが生じていたことであった。
これらの課題に対し、ソフトバンクは従来の方法からAIやテクノロジーを活用した新しいアプローチへと移行した。リソース不足に対しては、生成AIを積極的に活用した。
生成AIは、キーワード選定、SEOを意識した記事タイトル、構成案の提案、導入文、そして構成案に基づいた本文の作成までを短期間で行うことを可能にした。これにより、B2Bの専門性や技術力を含んだコンテンツの量産が効率的に行えるようになったのである。
生成AIツールに関しては、ソフトバンク社内で開発された「xBasecamp(エックスベースキャンプ)」を利用した。利用に関しても社内業務目的での利用を前提とし、機密情報や個人情報の入力は行わないといった注意事項が徹底されていた。

2つ目のSEO知識不足の解消には、SEOツールの活用が不可欠であった。ソフトバンクは「BrightEdge」というSEOツールを導入し、これまで「思い込みで正しくないSEOのやり方を実施していた」という課題に対し、具体的な改善箇所を提案してくれる機能で対応した。
タイトル、メタディスクリプション、H1見出し、ALT設定などSEOの基本要素を細やかにチューニングできるほか、自社のポジショニング確認や競合との比較を通じて、次に作成すべきコンテンツの計画を立てるのに役立てた。
3つ目の属人化したスキルへの対策としては、ナレッジ共有を徹底した。10名以上のコンテンツ作成者がそれぞれ異なる方法でコンテンツを作成していたため、品質の均一化が課題であった。このため、「1. 対策キーワード選定」「2. 1サイト1キーワードの徹底」「3. 検索結果や競合サイト確認によるページ構成」「4. SEO対策チェックリスト確認」というプロセスを共有することで、誰でも一定のクオリティを担保したコンテンツを作成できるようになったのである。
「こうして得られたナレッジをメンバーで共有することで、誰でも一定のクオリティを担保したコンテンツが作成できるようにやり方を変更してまいりました」

この共有されたチェックリストには、見出しの付け方や画像の適切な利用方法、内部リンクの設置ルールなど、具体的な項目が網羅されており、コンテンツの品質が標準化されたことで、チーム全体の生産性向上にも繋がった。
これらの施策によって、Web広告に依存しない自然検索からの流入量を確保することに成功した。検索結果10位以内のキーワード数は1年で大きく増加させて1,000以上を達成し、自然検索からの訪問数は33%アップという大幅な成果を上げた。
大きなPDCA×小さなPDCAでUI/UXを大幅改善
ソフトバンクはサイト訪問者をコンバージョンに結びつけるためのUI/UX改善にも注力した。このUI/UX改善は、「大きなPDCA」と「小さなPDCA」という2つのアプローチで推進した。
「大きなPDCA」としては、基本テンプレートの刷新が行われた。CMS移設時など、定期的にWebサイトのテンプレートを見直すことで、UI/UXを継続的に向上させる取り組みを進めたのである。例えば、情報設計の見直しにより、ユーザーが目的の情報に辿り着きやすい導線設計に変更したり、主要コンテンツの視認性を高めるレイアウトに改善したりといった根本的な改修が実施された。これにより、サイト全体のユーザー体験を根本から改善する基盤が構築された。
一方、「小さなPDCA」では、ページごとのクイックな改修やWeb接客ツールの活用が実施された。ソフトバンクではWeb接客ツール「Sprocket」を利用しており、ポップアップ表示などを通じて、顧客を次のアクションへ的確に誘導する施策を展開した。たとえば、資料ダウンロードページでの滞在時間が長いユーザーに対し、最適な資料を提案するポップアップを表示したり、セミナー情報に関心を示したユーザーに、関連するウェビナーへの参加を促す通知を行ったりするなど、個別のユーザー行動に合わせた細やかな最適化が可能となり、CVR向上に貢献した。

また、これらのUI/UX改善施策を実施する際には、様々な分析手法を用いて課題の抽出を行った。ツリーマップやファネル分析など、様々な分析手法を組み合わせることで、ユーザーの行動を多角的に把握し、仮説検証の精度を高めた。