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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

これからのパーソナライゼーション

生成AIでパーソナライズをどう実現?中川政七商店が挑む「仮想人格」を活用した施策とその成果

AIによってパーソナライズしたコンテンツを生成する未来

──今後チャレンジしたい取り組みはありますか。

 今、お客様に適した、商品を集めて紹介する特集ページを自動で生成する取り組みを行っています。AIには特集記事だけでなく、商品情報や読み物の記事情報も学習させており、その中から最適なコンテンツを組み合わせて、お客様に提案します。そしてメルマガ、LINE、ECサイトのページを一気通貫で自動作成できる世界まで、一足飛びで行きたいですね。

 また、5年~10年スパンの構想として、商品ページや特集ページの完全パーソナライゼーションがあります。現在は1商品に対して1ページで、誰が見ても同じ内容ですが、お客様の知識レベルが多様なため、同じ説明文でも理解度が大きく異なります。補足説明を追加すると情報過多になり、結果的にお客様は読まずに画像だけ見るという状況になっています。

 そこで、クラスターごとに最適化されたページを表示する仕組みを考えています。同じ特集ページでも、商品の並び順や説明文の内容を、その人のクラスターに応じて自動で調整する。ページ自体が複数パターン存在し、一人ひとりに最適な情報を提供することで、ECサイトの体験をより向上させたいですね。

AIエージェント活用を見据えた取り組み

──かなり先を見据えていらっしゃいますが、他にも将来的な構想はありますか?

 10年先を見据えると、個人がAIエージェントを保有する時代が来るのではないでしょうか。スマホなどのデバイスに接続する形で利用されると考えています。

画像を説明するテキストなくても可

 そうなった場合、我々企業が持つ顧客データよりも、AIエージェントのほうが詳細なデータをもっていることになります。そうするとパーソナライズしたコミュニケーションはユーザー側のAIエージェントが担ってくれるので、ある程度適切にクラスターで分類ができていれば良くなると考えています。

 実際に、AIエージェントに顧客クラスターのデータを学習させて実験したところ、サイト内でのページの回遊行動が大幅に変わりました。その時代に向けて準備すべきことは、お客様がAIエージェントで商品を探す際に必要な情報を、わかりやすく提供することです。

──他にも、AI時代に備えて、何が必要になると思いますか?

 AIはAPI(プログラム間の連携技術)やJavaScript(ウェブページに動きをつける技術)のように動的に表示されるものを読むのが苦手なので、次のフェーズでは、AIが読みやすいHTMLの記述方法に対応することが必要になっていくと考えています。現時点でも、検索結果でAIの回答だけを読んでリンク先をクリックしない人が増えています。ECサイトを、AIが情報を正確に読み取れるよう、AI対応のSEO対策を進める必要があるでしょう。

 ただそこでネックになるのが、人によって別々の体験をする中で、どうやってブランドらしい一貫性を見せていくかということです。その意味では、ブランディングも並行して注力しなければいけません。

 パーソナライズの話をしている中で恐縮ですが、やはり一番重要なのは、「中川政七商店」と指名検索されることです。もし「茶碗」といったキーワードで検索された場合は、他のショップの製品もごちゃまぜにAIエージェントからレコメンドされてしまいますので。そういう意味でも、指名検索されるブランディングは技術が進化しても変わらず重要だと言えます。

 とはいえ弊社におけるブランディングは、割と相対評価で考えています。要はブランドがずっと同じ状態を保っていても、周囲の状況が変わるとズレが生じます。ブランドは一貫性を保ちつつ、時代に合わせて少しずつ変わっていく必要はありますね。

──中田さんご自身のお仕事は、AI活用によってどのように変わっていくと考えていますか。

 今、私が担当している業務の多くは、AIを活用することで効率化できるのではないかと考えています。その分生まれる時間を別の形で、工芸に寄与できるといいなと思います。

 弊社では「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、ECや直営店の運営に留まらず、工芸メーカーへの経営コンサルティングや地域発のプロダクトを表彰するアワードの開催など、多角的な事業に取り組んでいます。AIを活用することで、こうした取り組みをさらに加速させ、ビジョンの実現に一層近づけたらと考えています。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49539

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