SNS時代の情報伝播の法則
「界隈」に対する学びを深めたら、次はいよいよアプローチです。どのようなアプローチ方法、盛り上げ方、情報の広げ方があるのか、ご紹介します。
なお、「界隈」はここ数年で顕在化してきた事象で、まだまだ歴史が浅く我々も研究を深めている段階です。そのため、冒頭にご紹介したトライブマーケティングで培ったノウハウを応用しつつご紹介します。
SNSを介して情報を受け取ることが当たり前になった現代において、必ず理解しておいたほうが良い法則があります。それは、情報は熱量の高いところから低いところへと流れていくというルールです。アイドルグループやアニメのファンコミュニティでも、政治における特定の政党支持層でも、社会問題への関心度でも同様です。
ジャンルを問わず焦点となる事柄に対して、最も熱量の高い層(=コアファン)が起点となり、その熱が周辺層へと伝わり、さらに外側にいる興味関心が低い層の目に届くところまで広がります。
つまり何かを仕掛けて反響を得たいなら、いかにして最も熱量の高い層を強く巻き込めるかどうかが重要になります。
 
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界隈を巻き込むポイントは「人」
では、どうやって巻き込むか。鍵となるのは、最初のきっかけを作る“ファーストピン”として最も効果的な「人」にアプローチすることです。「人」というと、一般的なインフルエンサーマーケティングをイメージする方も多いと思いますが、人選は、フォロワー数が多く影響範囲が広いインフルエンサーに限りません。重要なのは、「界隈」の中で影響力と熱量を併せ持つ人は誰か、という視点です。
「界隈」のファーストピンになり得る人物は、普段から企業案件を引き受けているとは限らないため、アプローチ先のリストアップも簡単ではありません。しかし、SNSデータを分析することで「界隈」の関連ワードを起点に影響力のある人物を絞り込んだり、過去にその「界隈」で話題化した事象において影響力があった発信者を特定したりすることは可能です。
その他、「学びを深める」ステップでインタビューを行う際は、その人がフォローしている「界隈」の有名人を教えてもらうのも有効です。さらには、インタビュイーとの信頼関係性を築き、検討中の施策を紹介しフィードバックをもらうのも良いでしょう。いずれにせよ、「界隈」における熱量のツボをおさえておくために、「界隈」の中心点に近い人々を味方につけることが重要です。
界隈の重なりを活用し、きっかけを誘うコラボレーション
最後に、「界隈」のマーケティングへの活用は、新たな顧客層の呼び込みにつなげられるかどうかについて触れておきます。
個人の視点に立つと、人はいずれか1つの「界隈」にだけ所属しているわけではなく、複数の「界隈」に所属・回遊をしています。「界隈」は強固なコミュニティではなく緩いつながりなので、いずれか1つの「界隈」だけに閉じているわけではありません。
一人ひとり、薄いフィルタのように複数の「界隈」がかかっているようなイメージです。これを「界隈の重なり」と呼んでいます。
 
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たとえば、人気アイドルAさん自身が所属する「界隈」の1つに、ゲームタイトルBがあったとします。そのアイドルAさんのファン層の中でも、ゲームタイトルBの「界隈」に属する人が比較的多いとします(つまり、Aさんのファン層とゲームタイトルBは相性が良いというケース)。
そうすると、このアイドルAさんがゲームタイトルBのプロモーションに起用された場合、Aさんのファン全体にゲームタイトルBが認知されることになります。それだけでなく、ファンの中にいた潜在顧客が新規顧客として定着する(歩留まりする)確率を大きく高めることが期待できます。
 
これまで、タレント起用やIPコラボは、「相性が良さそう」という感覚値で判断されることが多く、キャンペーン期間中だけ売上が伸びて、終了後に急落し、結局、どれだけ新規顧客が定着したかは正確にはわからない、というケースが少なくありませんでした。
しかし、界隈の重なりをうまく活用すれば、相性の良いコラボ先を事前に検証でき、キャンペーンの成功確率を高められます。さらに、キャンペーンの前後で顧客データを分析し、顧客層の変化を可視化することで、次のアクションへとつなげるPDCAサイクルを回せるようになります。
まずは、自社SNSの企画で、親和性の高い界隈のゲストをキャスティングしてみるなど、トライ&エラーを繰り返せるコラボフォーマットを開発するのも良いでしょう。
「界隈」の重なりを活用したマーケティングは、まだ研究途上の領域です。ただ、冒頭に申し上げたとおり、生活者自身が「界隈」について認識し既に定着している時代背景を踏まえると、この領域を掘り下げてマーケティングに応用していく価値は十分にあるはずです。
次回以降は、特定の「界隈」をより深くフォーカスしたレポートをお届けします。どうぞ、お楽しみに。

 
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                    
                     
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                
                                 
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                    
                                     
                                
                                 
                                
                                 
              
            