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自社は王者か、チャレンジャーか? 立場で変わるブランド戦略の「定石」【書籍抜粋】

自社の立場で戦略の定石は変わる──王者とチャレンジャー

 戦略の根本的な部分で、自分たちが王者なのか、チャレンジャーなのかを判断し、戦略の定石を押さえることも重要です。それぞれの立場によって、勝てる見込みがある戦略アプローチは異なります(図3)。

図3 それぞれの立場がとるべき戦略
クリックすると拡大します 図3 それぞれの立場がとるべき戦略

 王者とは、自動車でいえばトヨタ、携帯電話キャリアならNTTドコモのようなブランド。同じような商品・サービス・価格であれば、多くの人は王者のブランドを選択します。そのため、下位の競合ブランドが仕掛けてきた差別化要素に対抗して、同じような施策を当てていけば、結果的に同質化し、競争力を保つことができます。

 王者はより強いブランド力があり、その多くは販売チャネルも充実しているので、同じような商品が出てくれば、消費者の多くはわざわざ下位ブランドの商品を買おうとは思わないからです。

 たとえば、トヨタが、スバルやマツダのようなメーカーの車を真似てつくれば、相当な販売シェアを奪うことができます。しかし、逆に、チャレンジャーであるスバルやマツダがトヨタの車を真似ても売れません。

 下位のチャレンジャーのブランドは、上位と差別化しなければ選ばれる理由がありません。とはいえ、スマホの時代にガラケーを出しても売れず、ハイブリッド全盛時代にハイブリッドエンジンなしの車は売れないでしょう。

 このように、消費者からすれば同質化しても満たしてほしい、いうなれば「選択の土俵に乗るための要件」は押さえつつ、他の要素で差別化するというバランス感覚がないと、ニッチすぎて販売量が少ない商品になります。そのバランスは目指す市場シェア次第で変わります。

「王者」の成功体験が裏目に? 戦略を誤る2つの落とし穴

 自社ブランドの立場と適合しない戦略を選んでしまう落とし穴にはいくつかパターンがあります。

 1つ目は「ほかに圧倒的王者の主力事業ブランドがある企業」です。この場合、組織の意思決定は“王者の戦略=総合化して全ニーズに応える勝ち方”に慣れてしまい、自社が弱者であるカテゴリの商品ブランドでも、チャレンジャーとして差別化することなく無意識のうちに守りの戦略をとって失敗しがちです。

 2つ目は「自社では過去の延長線カテゴリと思っているが、消費者からすると新しいカテゴリに見えるとき」です。ブラウン管テレビから薄型テレビ、ガラケーからスマホ、このように商品形状が大きく変化するときに消費者は新カテゴリとみなし、過去のブランド力はリセットされやすくなります。そのため過去の形状で王者だった企業側は、その自負心と過去からの習慣ゆえに差別化ではなく「全スペックが優れたモノ」を目指し続けて失敗するケースが目立ちます。

COLUMN なぜ専任の「ブランド戦略部」は孤立してしまうのか?

 日本の大手企業では2000年頃にブランド戦略が流行となり、多くの会社でブランド戦略専任の部署が設立されました。

 しかし、いざ立ち上げてみても経営層トップの関与が弱く、事業戦略やマーケティング4P施策と密接な関係にあるブランド戦略を統括する役割でありながら、それだけの権限と権威がなく頓挫した例は多いのです。商品ブランドの場合は、実際にビジネスの意思決定を担う事業部からの連携を促すインセンティブがなく、企業ブランド施策の場合は、企業ブランド広告を打ってみたものの効果が見えずに活動が減少するパターンが目立ちました。

 そうなると、残された部門の業務はブランド評価の調査、ブランドロゴ運用管理に留まってしまいがちになります。市場競争力を高めるというよりは、むしろブランド評価が低下するリスクから守るための、ブランドルールの運用管理の業務が多くなりやすいのです。気の毒ですが、現場からは運用ルールが窮屈に感じられ、陰では「ロゴポリス」などと揶揄されがちです。

 これらの問題の真因はブランド戦略部門の当事者ではなく、「市場競争力を高めるには事業部の関与と推進が必要」ということを理解していない経営陣側にあることが多いのです。

 ブランド戦略の専任部門をつくるときは、市場競争力とは直結しないけれど大切な「企業の理念的なメッセージの発信」が目的なのか、「事業部の商品・サービスのブランド戦略立案、実行、軌道修正のサポート」が目的なのかを明確にし、後者であれば特に経営側は手厚く支援し、事業部側の協力を引き出すことが必要です。

 ブランド戦略部門の設立には、経営層が関与し、ブランドで解決すべき事業課題を明確にするなど、与件の明確化が成功につながります。日本の大手企業の特性としては、すでに事業部と連携が成立し、一定の権威も確立した経営企画部内でブランド専任機能を立ち上げると、比較的スムーズに機能しやすい傾向があります。

 経営企画や経営管理の部門は事業部門に比べればプレッシャーはだいぶ穏やかですが、売上や収益の成長に関心が高く、投資の費用対効果にもシビアという部門特性があり、それがブランド戦略運営によい影響を与えているように見受けられます。

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この記事の著者

大久保 遥(編集部)(オオクボ ハルカ)

大学卒業後は編集プロダクションにて、主に料理や歴史などのムック本の編集を経験。その後ビジネス書・語学書を扱う出版社を経て、2017年より翔泳社の書籍編集部へ。翔泳社では「IT用語図鑑」シリーズ、「「ゆる副業」のはじめかた」シリーズの他、『インサイドセールス』『ど素人でもわかる経営学の本』など、ビジネス書・IT入門書...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/09/30 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77629

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