本連載では、生活者が"好き"や興味関心を軸に形成するゆるやかな集団=「界隈」を深掘りし、マーケティングの実践的なヒントを紐解きます。今回は、2000年代後半のニコニコ動画に始まり、リアルタイム配信やVTuber文化との融合を経て大きな盛り上がりを見せる「ストリーマー界隈」に注目! ストリーマーとファン、そしてファン同士が双方向につながり、熱量を循環させる界隈の構造を、市場データやSNSの投稿データ、話題化した事例を交えて紐解きます。企業が界隈の熱量に寄り添う「当事者」として関わるためのヒントを探ります。
界隈に刺さるコミュニケーションを実現するには
初めまして。スパイスボックス クリエイティブプランナー/コピーライターの髙橋大輝です。トライブや生活者のn=1の視点を重要視し、SNSやソーシャルメディア上のデータからターゲットの興味・問題意識・トレンド・社会状況を深掘り、企業・ブランドと生活者をつなぐ双方向のコミュニケーション施策を設計しています。双方の「なぜそれをするのか」「だからこうなのか」という納得感を重視したプランニングを日々行っています。
デジタル・SNSが台頭する現代において、既存の属性データだけに頼るアプローチは、ブランドとターゲット間にコミュニケーションエラーを引き起こす要因となります。特定の文化的共通項や熱量を共有する「界隈」は、独自の文化やルールを持ついわば「国家」のような集団です。彼らに刺さるコミュニケーションを実現するには、その文化を理解し、尊重した上で足を踏み入れることが第一歩となります。
▽過去に掲載した界隈分析の記事はこちら▽
「ストリーマー界隈」とは?
突然ですが、「ストリーマー」と聞くと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?
生配信でカメラの向こうへと語りかける人たち、ゲームや雑談で共通の好きを発信している人たち、バーチャルYouTuber……などなど。ストリーマーとは、インターネットのライブ配信を通じて、多岐にわたるコンテンツとともに自己表現をしている方々を指します。
今回は、その中でも「ゲーム実況や雑談などのリアルタイム配信を通じ、視聴者とコミュニケーションを行う配信者と、その周辺コミュニティ」に焦点を当てます。
ストリーマー界隈では、視聴者がゲームなどの共通の趣味やストリーマー個人を通じて「好き」を共有し、その連帯感によってコミュニティが形成されています。ここまでは一般的なファン構造と変わりませんが、ストリーマー個人を通じてさらに新しい「好き」を発見し、ファン同士でも「好き」を見つけ合うという循環構造を持っている点が、この界隈の大きな特徴です。
つまりストリーマー界隈とは、リアルタイムの双方向メディアの中で、好きなことを追求する個人と、それを応援するファンという2つの存在が互いに影響し合うことで作り上げられる界隈だといえます。
巷では「ライブ配信者」や「配信者」、「ライバー」など様々な呼び分けも存在していますが、本記事では「ストリーマー」と呼称を統一。ストリーマー界隈の変遷から界隈心理、その先で企業側がどう向き合っていくべきなのかを考察します。
「ストリーマー界隈」の変遷
ストリーマー界隈を話題にする以上、語らないわけにはいかないのがその変遷です。
2000年代後半から始まったストリーマー文化とは、どのような歴史があり、どのような変化をもって今の隆盛を誇るまでになったのか。そのコンテキストを理解しておくことが、界隈の人々からの共感を得るためには非常に大切であるといえます。
まず、ストリーマー文化の始まりは2000年代後半に登場した日本最大級の動画サービス「ニコニコ動画」からです。その頃はリアルタイム配信ではなく、録画型の実況という形をメインに、「投稿者」と呼ばれるクリエイターが各々に好きな動画を投稿していました。これは現在のYouTuberたちのスタイルとかなり近しいものといえるでしょう。
その後、2010年代に「Twitch」などの配信プラットフォームの台頭によって、リアルタイム配信が普及していきます。前述したとおり、これらリアルタイム配信は視聴者と近しい距離感でのコミュニケーションが可能であることで録画投稿型の勢いを凌いでいきます。そうした流れを経て、ストリーマーはタレント化、新たなストリーマーの形であるVTuber文化との融合によって、大規模なコミュニティへと変遷してきたのです。
最近では人気のタレントや声優などが新たにストリーマー界隈へ参入し、これまでになかった盛り上がりを見せていることも、この勢いを形作る一因となっています。
この変遷の本質は、メディアの進化だけではありません。「一方通行の情報消費」から「ストリーマーとファン、そしてファン同士が双方向に繋がり、リアルタイムで熱量を共有する構造」へと、生活者のコミュニケーションの主戦場がシフトしたことこそが、この界隈が持つ底知れない影響力の源泉なのです。
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髙橋 大輝(タカハシ ダイキ)
株式会社スパイスボックス アカウントプランニング局 クリエイティブプランナー/コピーライター
2019年入社。食品や美容、サービス、プロダクトなど幅広い領域で、生活者インサイトを起点としたコンセプト開発・施策プランニングにて支援。デジタル・SNSを出発点にひらかれた「共感」と「話題」を生むコミュニケーションを行う。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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