従来の指標CPAの難点、そしてTCPAへ
続いて中川氏は、講演の主題でもあるTCPAが間接効果に関する指標であることを明かし、間接効果の重要性と扱い方の難しさを強調した。間接効果があるなら当然、直接効果もある。それが従来、広告の指標として重要視されてきたCPAだ。だが、中川氏はCPAを「広告価値を表す上で、CPAは表面的な側面しか表せない」と評する。
CPAは、コンバージョン1件における獲得コストを明確に示すため、非常にわかりやすい指標である。しかし、CPAは結果に隠された、裏で作用する効果を見逃していることも忘れてはならない。
リスティング広告などの獲得系広告の評価には有効でも、バナーやビッグワードのリスティング広告など認知系広告の評価には向かない。そこで中川氏は、「全体最適には欠かせないのは間接効果の可視化であり、TCPA(Total Cost Per Acquisition)がそれを実現する」とした。
間接効果とは何か、その重要性と複雑さ
TCPAに話を移す前に、中川氏は今一度、間接効果について確認した。ある人がコンバージョンへ至るまでの流れは、「ニーズ」「気づき」「認知」「理解」「検討」と段階があり、あれこれとキーワードを換え検索していく。
各段階でそれぞれ間接効果が働き、「ニーズ」からコンバージョンへと段階を進めていくが、これをどのように評価するのか、そもそもこれをどのようにデータ化するのかが難しいところだ。
実際に広告の効果を分析する際には、「アシストが多い少ない」を縦軸に、「直接のコンバージョンが多い少ない」を横軸にとり、各広告を分析する。
そこで判断に困るのが、コンバージョンは少ないがアシストが多い広告群の判断だ。
そのアシストと被アシストの関係を見誤って広告を切ってしまうと、コンバージョンの多かった別の広告の直接効果まで半減してしまう事態も引き起こしかねない。
中川氏は、この問題は広告に対する価値基準があいまいで、経済価値が不透明、どこへどれくらいアシストしているのかが見えづらいといったことに起因していると示唆する。
現行の効果測定ツールにも、概ね間接効果を測定する機能は備わっており間接効果という存在自体はメジャーになりつつある。にもかかわらず、そのデータを正しく分析し、実際に活用に移した事例は少ない。
というのは、中川氏の言うように「間接効果の分析は計算が繁雑になりがちで、使う側である代理店や広告主に説明が難しいため、結局は詳しい人しかそのデータを活用できていない現状がある」からだ。