動画マーケティングに取り組む際の選択肢
今、注目すべきは動画マーケティング。アメリカでは動画を導入したことでコンバージョン率(CVR)が1.8%から8%以上に急増した例や、サイト売上が平均で20~40%も増加したというレポートも現れている。(詳細:CVRが1.8%から8%以上に改善された例も! Zapposも注目の動画マーケティングで差を付けろ)
とはいえ、動画という未体験の施策に踏み出すことに不安を覚える人も居るかもしれない。動画の配信・コンテンツ管理のシステムをどうするか、動画視聴の解析はどうやるか、iPhone/iPadなどへの対応はどのタイミングで考えるか。自力だけで体制を整えようとすると、どれだけの費用・手間が掛かるのか見通しを立てにくく、対応しなくてはならない事項を考えるだけでも一仕事だ。
効果的な施策なら試してみたいが、費用・手間が掛かるのは嫌だ。そう考えるのなら、Brightcoveの提供しているSaaS(Software as a Service)型の動画配信プラットフォームを利用するという選択肢はどうだろうか。月間5万円からの料金で、次のような機能を利用できるようになる。
- 動画のアップロード/エンコード
- 動画コンテンツ管理…プレイリストの作成、RSSフィード、動画検索、配信先の地域フィルタリングなど
- 動画プレーヤーの作成/カスタマイズ…プレーヤーで再生する動画コンテンツ・プレイリストの割り当て、スタイル設定、友達にメール/Twitter投稿/埋め込み用コードの生成などのボタン設置による動画共有促進など
- 動画関連広告の配信
- 動画のパフォーマンス分析
世界的にメジャーな動画配信プラットフォームの中で、日本で事業展開をしているのはBrightcoveのみ。楽天や日経新聞、テレビ大阪など、大手企業での採用も進んでおり、日本での導入企業数はここ1年で50社ほどから120社程度にまで急増。世界で見ると2300社がBrightcoveのプラットフォームを採用しているという。
リーチ拡大のため、一元管理できるプラットフォームを
そんなBrightcoveのプラットフォームが11月2日に「Brightcove 5」へとバージョンアップ。顧客からの要望に応え、機能を強化している。同社によると、今回のメジャーアップデートに当たってのテーマは次の3つだ。
- より多くの人、場所にリーチする
- ビジネスバリューをさらに後押しする
- 生産性向上により貢献する
「より多くの人、場所にリーチする」というテーマの下、Brightcove 5では次のような機能が追加・強化されている。
- YouTubeへの配信・同期…YouTubeとシステム連係し、Brightcove上からの動画アップロード/削除、詳細・メタデータの同期など、一元管理を実現。特定のタグを付けた動画だけをYouTubeにアップできる自動化ルールも作成可能
- Apple HTTPストリーミングのサポート…マルチビットレートでiPhone/iPadへの動画配信を最適化
- モバイルSDKの強化…従来からのiPhone/iPod touch、Android用に加え、新たにiPad向け参照アプリを追加
どこでも動画視聴な可能な時代が到来
ブライトコーブ株式会社でマーケティング&プロダクトマネジメント シニアディレクターを務める須賀正明氏(写真左)は「動画をどこかで見る世界から、動画がさまざまなところで視聴可能な世界になってきました。自社サイトに動画があります、YouTubeにもあります、Facebookにもあります、ブログにもありますといったように、動画に触れる機会が増えています」とこのテーマの意図を語る。
動画をより多くの人に見てもらうためには、人が集まるさまざまなチャネルで配信する必要がある。だが、複数のチャネルで動画を配信すると、チャネルごとに管理の手間が生じてしまう。
そこでBrightcoveは、Web上の各メディアでの動画を一元管理できるプラットフォームになろうと目指している。まずはYouTubeとの連係を果たしたが、今後も動画サイト・ソーシャルメディアなどとの連係を強化していく計画だ。
また「さまざまなところで視聴可能」という意味では、モバイルでの動画視聴は無視できない。まだスマートフォン経由の動画視聴は全体の1~5%程度に過ぎないが、目覚ましいペースで成長中。2013年までにスマートフォン経由の動画視聴のトラフィックは66倍になるとするレポートもある。早い段階から対応しておいて損はないはずだ。
日本では動画解析へのニーズが高い
続いて、「ビジネスバリューをさらに後押し」という視点から、下記のような強化が施されている。
- 動画のパフォーマンス分析ツールの強化…従来版ではFlashでの配信ログのみの解析だったが、Brightcove 5ではHTML 5での配信ログも解析の対象に。また、新たに12種類のレポートを追加。検索語ランキング、リファラー、外部サイトでのドメイン別動画再生数などを把握できるようになった
- マルチビットレートストリーミングおよびDVRライブ配信…マルチビットレートストリーミングに対応し、ユーザーのデバイス・帯域・ランタイムなどに合わせて最適化。ライブイベント直後からVOD利用可能に。従来は不可能だったライブ配信時の広告掲載にも対応
日本の顧客から要望が強かったのは動画解析の機能。動画の効果を分析するため、強化してほしいという要望が多かったのだとか。一方、アメリカでは流入元の検索ワードを分析したいという声が大きかったという。
「アメリカは日本よりも強烈にSEOを意識して、細かいキーワードも意識しています。リスティング広告でも集客できますが、自然検索で上位に表示されることで、ビジネス的により優位に立てると考えているようです。リファラーや検索ワードなど、流入経路の分析も重視されています。昔は動画を置くだけで検索順位が上がり、ユーザーも喜んでくれましたが、競合企業も動画を置くようになりました。ビデオを改善して、競合よりも良いものを作ることが必要になっています。どういうビデオを置くとバリューを出せるのか、流入経路も含めて分析したいという要望が多くなっているのです」(須賀氏)
なお、Brightcove 5のパフォーマンス分析ツールは、Adobe SiteCatalyst、Google Analyticsなどのログ解析ツールと連係。日本産の解析ツールとの連係も実現に向けて調整している状況だ。
生産性を向上し作業負荷を激減
最後に「生産性向上にもっと貢献」というテーマについて。
サイト運営者側だけではなくユーザーの利便性も考え、テーマに沿って次のような点を改善している。
- 複数プラットフォームに対応の動画プレーヤー
- 動画アップロードの高速化…Aspera高速ファイル転送テクノロジーを採用し、アップロード速度を5~20倍向上
- URL短縮機能…プレーヤーからの動画共有をスムーズに
- Brightcoveモバイルアップロード…iPhoneで撮影・編集したコンテンツを直接アップロードできるアプリを提供
…単一のJavaScript埋め込みコードでFlashとHTML 5での配信に対応。ただ対応するだけでなく、ロゴの配置など、Look&Feelを同じように再現できるようになっている。またスマートフォンでの閲覧時にはボタンを大きくするなど、デバイスに応じたカスタマイズも施している
FlashとHTML 5の双方に対応の動画プレーヤーについては、テンプレートが用意されているため、簡単に導入することができる。だが、使っているうちに「こうしたい」という希望が出てくるようで、3か月程度も経つとカスタマイズしてチューニングしていく企業が多いのだとか。
須賀氏の発言にあったように、動画は自社サイトだけで掲載されていた時代は終わり、動画サイトやソーシャルメディアなどでの共有が進んでいる。
そうしたさまざまなメディアへの配信を管理するのは一苦労。さらにプラットフォームの違いによるFlashなのかHTML 5なのか、といったテクノロジーの違いに対応するのも手間が掛かる。
そうしたマーケターの悩みの種になりそうな「複雑さを軽減するプラットフォームになりたい」と須賀氏。YouTubeなどへの配信を含めて、Brightcoveですべてを一元管理できるようにしていきたいと今後の展望を語っている。