シーンによって使い分ける2つのレコメンデーション技術と活用法
ブレインパッド社が提供するレコメンデーションサービスには、『アソシエーション分析』と『カーネル法』の2つの分析技術が使われている。
『アソシエーション分析』では、KXENという超大量データマイニングツールを用意しており、集積したデータを使って算出された購入確率を元にマーケティングを行うことができる。
KXENを導入することで、サイト内での顧客行動が明らかになるため、その結果をレコメンデーションに使うだけでなく、商品開発やキャンペーンの立案にも活かせるのだ。集積したデータを他のシステムに連携させて、コールセンターでアップセルのための推奨リストとして活用することも。
アソシエーション分析では、確率をはじき出すための母数となる商品群が同じでないと、レコメンデーション結果には反映されないという特性があるが、もうひとつの『カーネル法』は、ブレインパッド社独自のアルゴリズムで、複数の商品間の関連性を辿りながら、レコメンデーションすべき商品を探し当てることを得意としている。
そのため、テール商品にまで誘導できる『カーネル法』では、“在庫を抱えないよう、売れ筋商品だけでなく死に筋までしっかりレコメンデーションしたい”といったニーズにも応えられる。
「どちらかを選ぶというのではなく、2つのアルゴリズムをうまく使い分けて、相互に補完しあうことが大切」(市川氏)
レコメンデーション活用事例
ここから、活用事例を紹介していこう。あるWebサイト(CD・DVD)は、すでにレコメンデーションルールを持っている企業だったが、データマイニングに1日20時間かかっていたところを時間短縮させるために、KXENと独自アルゴリズムを並列実装することを決定。
ひとつの商品のクリック数や購買履歴のデータを利用した。アソシエーション分析とカーネル法の両方を使いながら、導き出されたレコメンデーション結果をミックスしてWebサイト内で表示させたところ、40%以上のクリック率アップに繋がった。
また、Webサイトで取得したレコメンデーションデータをメールでも再利用。ブレインパッド社が保有する統合レコメンドエンジン『Rtoaster(アールトースター)』を使った。これまで全てのユーザーに対し、共通のキャンペーンやコンテンツを送っていたメールの中を、個別のユーザーに合わせてパーソナライズした。
さらに、取得したレコメンデーションデータを、メールだけでなく、実店舗の情報端末でも再活用し、店頭に備え付けてある情報端末に、顧客に配布したメンバーズカードを読み込ませることで、情報端末内でもレコメンデーションも可能とした。ユーザーは情報端末内で気にいった商品があれば、その場で注文票をプリントアウトして、レジで取り寄せ・予約も可能となった。
別の事例も紹介しよう。Webサイト(化粧品)では、TOPページのFlash画像内のキャッチコピーだけを、ユーザーの過去の購買履歴に合わせて、変更されるようにした。過去にクリーム系の商品を購入したことのあるユーザーには“ハリ効果”を訴求した文言を、年齢やサイト内で同じ系統の商品を閲覧していたユーザーには“シワ効果”を訴求した文言を、そして過去に同一商品を購入したことのあるユーザーには“パワーアップ”の訴求でリピート促進を狙うなど、ひとりひとりに刺さるコピーを追求することができる。
Webサイトで取得したデータをメール配信エンジンと連携させた事例は、オフィス用品通販A社。一括メール送信時だけでなく、商品の購入確認メールや配送メールなどのトランザクションメール生成時にも、レコメンデーションコンテンツを追加して送信している。
メール・情報端末(通販B社)の事例も興味深い。当初はレコメンドロジックのみの実装だったが、メール配信にレコメンドを掲載することで、コンバージョン率が劇的に向上したため、全メールに加え、実店舗の情報端末へも展開を実施。POSデータとも連携させることで、リアル店舗とWebサイトそれぞれのお客様を繋ぐことができるようにも。
ひとつのレコメンデーションデータで、Web・メール・実店舗の3つのチャネルへ水平展開した。「レコメンデーションデータを統一することで、複数のシステムを導入する手間もなく、お客様への情報もぶれないところがポイント」(市川氏)