グローバル企業におけるマーケティングの今後
続いて、上島氏はグローバル企業が抱えるマーケティングの今後の課題について次の5つの点を挙げた。
- 進国と新興国ではネット普及やPC保有率が変わる。適したデバイスとチャネルを選択すること。
- コンテンツ(製品)情報配信先はWebサイト以外にも必要とされる。コンテンツ管理というよりもデジタルアセット管理が必要となってくる。
- リード創出から受注に至るリードマネジメントプロセスは先に定義し、ナーチャリング手段やシナリオや各地域に任せるべき。すべて日本から提供するというよりも各パシフィックに合わせてシナリオを考えた方がいい。
- 本社では各地域に対し、カスタマエクスペリエンスマネジメントのためのプラットフォームや仕組みが必要とされる。アメリカのアナリストデータによると、今後はすべてCXM(Customer Experience Management)の方向に向かっている。本社ではプラットフォームや仕組みは提供するが、運用するのは現地という考え方になっている。
- 国土の狭い日本のマーケティング手法は世界に通用しない。インバウンドマーケティングを主流に自然と認知される仕掛けをつくること。プッシュ型というよりは、ブログなどでいろんな情報発信によって接触し、ブランドを認知してもらう。
さらに、上島氏はフォレスターリサーチ社調べのアンケートデータを紹介。ヨーロッパ、北米のハイテク企業のマーケティング部門が最も重要視している指標は、1位 売上、2位 マーケティングROI、3位 リード関連の指標、4位 ブランド認知、5位 顧客満足度だという。
また、マーケティングシェルパ社調べの「マーケティングの目的は何か」を聞いたアンケート結果では、全935社のうち78%の企業が「質の高いリードを生み出すこと」と答えたことを明かし、「単にリードの数が多ければいいという考え方ではなく、PRとなるようなバズ(クチコミ)をどうやって生み出すのか、ソーシャルを活用して認知を広めるか、ということに海外では意識がシフトしている」と上島氏は語った。
では、いったいどのようにリードを管理すればいいのだろうか。SFAツールのステータス管理と同じような考え方で「リードマネジメントの定義が必要」だと語る上島氏。しかし、実際は定義をしないまま、とにかくリードを獲得することに注力しすぎている企業があまりに多いと警鐘を鳴らす。
「リードマネジメントの定義をしないまま、キャンペーンを打って大量のリードを集めると、実際に営業が売りたいターゲットではないというミスマッチが起こってしまう」(上島氏)このようにならないためには、すべてのマーケティングプロセスを整理して、評価指標・目標値を決めていく必要があるという。
目標を考える場合は、まず目標の売上を設定し、その売上のためにはどのくらいの商談数が必要か、その商談数を実現するには営業に渡すためのリード数はどれくらい必要か、そのリード数を集めるためには何が必要かという逆算で考えていく思考が大切だ。欧米で実施された「2011年度のマーケティング部門の予算はどの活動に配分されると思うか」というアンケート結果を見ても、リード獲得(ジェネレーション)よりリード育成(ナーチャリング)にあてる予算配分が年々上がってきているという事実がわかる。
新しい地域に進出したばかりの頃は、認知やリード獲得に予算をかけることは当たり前だが、ヨーロッパは多言語であり、国毎、地域毎に傾向が異なることにも注意が必要だ。
リードナーチャリングが必要な商材としては、検討から購入までのプロセスが長い、もしくは購入頻度が低いものに加え、単価の高い商材も挙げられる。次に一般的なリード獲得から受注までのマーケティングプロセスを見てみよう。
月に10件などリード数が少なければ、営業にすべて丸投げしてしまってもいいが、リード数が多いときには、すべて営業が対処することはできない。そのような場合は、営業に渡す前に対象リードを見極める必要がある。
さらに、その後ナーチャリング活動をしながら、育成&見極めをして確度の高いものを選別した上で、営業に渡せるタイミングを見極める。受注に関してはCRM、既存客はERPといった専用DBが存在するが、営業が使用するSFAは案件名・企業名で管理されている場合が多い。
しかしリードナーチャリングでは個人ベースで管理する必要がある。現状では、このナーチャリングデータベースと呼ばれるシステムが存在しない企業がほとんどであり、上島氏はその重要性を強調した。