日本の生産性向上にマーケティングは欠かせない
押久保:杉原社長は複数のIT系企業で事業部長や事業統括を務められ、昨年にオラクルに参画、今年4月に社長兼CEOに就任されています。営業畑ご出身の視点で、まずはマーケティング領域をどうご覧になっているか、お聞かせいただけますか?
杉原:マーケティングの領域は、日本の生産性を上げるために非常に重要なので、当社がこの領域でも企業を支援していくことで日本経済の活性化につなげたいと考えています。
マーケティングとは、単にモノを売る策ではなく、メッセージを知らしめる活動だと捉えています。ただグローバルで見ると、その点は日本は残念ながら遅れており、大きな変革の波にいまだ乗れていません。ここでまた、江戸時代の鎖国のような状態になってはいけない。クライアントやパートナー企業とともに、日本だけがこのまま取り残されることのないように、注力したいところです。
押久保:オラクルとしても、危機感を持っていらっしゃるのでしょうか。
杉原:そうですね、日本にはやはりいくつかの課題があります。消費税が上がり、生産人口は減っていきます。周りを見渡すと、海外の売上比率を高めようとする動きが加速している印象です。一方で、ICT分野の成熟には勝機があります。いろいろな分野でデジタル化が進み、今とうとうマーケティングのような、かつては人的に進めていた領域のシステム化、そして効率化が進んでいます。
デジタルマーケティングの発展は当然のこと
押久保:確かに、デジタルマーケティングが台頭して、従来のマーケティングとは様子が変わってきている印象です。
杉原:私は営業の出身ですから、ひと昔前はマーケティングというとアメリカが本場で「直感とセンスで時代を読む」「かっこいいクリエイター」なんていうイメージがありました(笑)。でもこれからは、直感やセンスといった右脳的な領域だけでなく、左脳を駆使してデジタルも司らないと勝てません。スマートフォンなどデバイスの普及、SNSの一般化といった環境変化も相まって、マーケターは右脳と左脳の能力を最大限に使っていく必要に迫られていると感じています。
また、私自身、スマートフォンで24時間ネットにつながっていますし、仕事にもプライベートでも必需品となっています。そんなユーザー環境を考えても、デジタルマーケティングが発展するのは当然です。
押久保:杉原社長からそうした言葉が語られるのは、とても興味深いです。デジタルの拡大を機に、いわゆるネット系企業ではなくITのインフラを支えてきた企業がマーケティング領域へ踏み出し始めている現状は、私も時代の変わり目だと感じています。
杉原:IT業界ではほんの少し前は「CIO(チーフインフォメーションオフィサー)に会いに行け」と言われていました。ですが、ガートナーがもう2年も前に「2017年にはCMOが持つ予算がCIOのそれを上回る」(参考記事,ITpro)と予測し、実際にそうした潮流が生まれていると思います。