「東急エージェンシーらしさ」を具現化するには?
お話を伺ったのは、東急エージェンシーで新卒採用を担当する仲野大輔さん、新卒採用サイトの企画から制作までを手がけ、クリエイティブ業務を担当する諸橋秀明さんのお二人です。

同社 ソリューション本部 クリエイティブ局 諸橋 秀明氏(右)
――“顔採用”非常に大胆なフレーズです。ともするとネガティブにも捉えられかねない企画を打ち出したのは、なぜだったのでしょう?
仲野:有難いことに新卒採用では例年、多くのエントリーをいただいています。しかし、これまで新卒採用を担当してきて感じているのが、広告業界を第一志望とする学生が減りつつあることです。そのようななかで広告業界だけでなく、他の業種を志望されるかたも含めて、いかに“東急エージェンシーらしさ”を伝えて、振り向いてもらえるかがカギとなります。
あらためて「弊社らしさとは何か?」と考えたときに再確認したのが、広告業界としては後発だからこそ、「ほかにはない何かをつくり出そう」という、創業から続く信念でした。このDNAを具現化することが、「弊社とはどんな会社か」を見せることにつながるはずだと。
諸橋:広告会社の仕事は、クライアントの課題に対して解決策を考え、具現化させることだと考えています。そして、その解決策が4マスメディアを超え多岐にわたる今、既存の広告の概念にとらわれない新しい視野をもった学生の獲得は重要事項です。しかし仲野が言ったように、昨今そんな学生たちは、広告業界以外に目を向けている。そこで広告を志望していない学生にどうやって東急エージェンシーの魅力をアプローチするか、それが今回僕らに課せられたミッションでした。
このミッションを達成するには、就活生の間で話題になる「事件」を東急エージェンシーが起こさなくてはいけないと考えました。そして浮かんだのが「学歴の高さで選んでいるんじゃないか?」とか「最終的にはコネが重要になるんじゃないか?」とか、学生のあいだで囁かれている都市伝説の活用です。
“顔採用”も含めて、これらの都市伝説にはネガティブな要素が漂います。ネガティブな話題はすぐに広がりますよね。このパワーをポジティブに転換させれば相当な拡散力を持つだろう、と考えました。加えて当社は後発の広告会社なので、ある種チャレンジャーというか、やんちゃな感じがあります。企業の色と施策でマッチしているかなと思って、この案で行こうと決めました。
なぜ、顔採用?
――就活にまつわる多くの都市伝説がある中、“顔採用”を選ばれたのは?
諸橋:ネガポジ変換の要素とともに、WEBカメラを用いた顔認識という、テクノロジーの分野もアピールできるというのが、最終的な決め手です。言うまでもなく、現代の広告事業には、ITやコンピューターテクノロジーといった知識が欠かせません。毒気のあるアイデアで注目を集めるといった目論見はもちろん、テクノロジーの分野を担ってくれる、理系に秀でた学生にアピールすることも狙いだったんです。
仲野:しかし、注目を集められたとしても、結果につながらなければ仕事としては不十分です。また、話題になったとしても、ネガティブな風評が広がってしまっては意味がない。学生の方たちに「弊社らしい仕事とは何か」を伝えるには、自社サイトであっても、クライアントから依頼を受けた案件同様、ゴールとリスクマネジメントが必須でした。
そこで顔認識のテクノロジーを強く打ち出すべく、WEBカメラを用いた「せっかち顔」や「心配性顔」等の分析に応じて、「せっかち顔にはエントリーシートの設問を1週間先行公開」「心配性顔には面接時間5分延長」といった就活支援にまつわる特典を、抽選でプレゼントし、話題化から実際のエントリーにつなげようと。

リスクマジメントについても、「実際はルックスで選んだりしない」ことを理解できるコピーを練り、弊社の法務部門とも連携のうえ、サイトを完成させました。
――その結果、どれほどの反響があったのでしょう?
仲野:それなりの反響があるはずと期待してはいましたが、TwitterやFacebookでの拡散を始め、52サイトにも及ぶWEBニュースや、雑誌やラジオ番組にも取り上げていただきました。
諸橋:いろいろなメディアに取り上げていただいたのも嬉しかったですね。広告会社の仕事は基本、裏方。社名を連呼していただく機会は、なかなかありません。それが“顔採用”を話題に、何度も社名を口にしていただいて、社内の機運も高まりましたし、さらなる拡散にもつながったのではないかと思います。
仲野:その複合的な結果が、プレエントリー数の増加です。いずれも前年度の採用活動と比較して、新卒採用サイトへのアクセス数が400%、プレエントリー数が130%増加。さらに、理系のプレエントリー数も、大幅に増加したんです。
今回、実施した“顔採用”が、弊社にどのような好影響をもたらしてくれるのか、それは実際の採用が終わり、新入社員として活躍していただくまで分かりません。しかし、より多くの学生さんに弊社を知ってもらい、応募をしていただくという第一の目的は、十分、果たせたと自負しています。
出典元:D2Cスマイル