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有園が訊く!

「人が欲するものの、根本は変わらない 」“使ってもらえる広告”は時代を超える

テレビCMとデジタルは思考のベクトルが逆

須田:もちろん自分の力量不足もあったと思います。今振り返ると、自分の性格がそもそもCMに合っていなかった。CMって、情報をひたすら削ぎ落として15秒や30秒に入るワンメッセージに絞り込んで、それを電波に乗せてバーンと100万人に届ける、一点突破の方法論じゃないですか。

 だから、リーダーであるクリエイティブディレクターが、とにかく周囲を説得し続けて、シンプルな案を貫かないと、芯の強いものにならないんですね。

有園:なるほど。

須田:でも僕は、クライアントやスタッフに「こうだよ!」と言われれば「あぁそうかもな」と思っちゃう性格で。そういう考え方もあるね、そういう事情もあるね、そうしないと間に合わないね、といちいち受けとめていたら、どうにもツラいだけで何一つ、うまくいかなくなってきたんです。

 それがコッチ側に来て、やってみて強く感じたのは、デジタルは本当に思考のベクトルが逆なんですね。Webは秒数も面積も制限がないから、やりたいコトも、言われているコトも、いろいろと試してみれば良い。様々な案でいろんな人に向けて、それぞれに合ったやり方でやろうという考え方の方が適している。むしろ、一点突破の考えではうまくいかない。だから僕の「性格」が非常にマッチしました。

有園:性格であり、思考回路が合っていたと。

須田:そう。あと、理由のもう一つは、そのころに中国に現地向けのCM制作で出張していて、いろんな困難に直面した時に、Mac一台でイラレやiMovieを使えば、言葉は通じなくてもなんとかなると実感したことです。言葉は違っても、デジタルのユーザーインターフェイスは一緒だという発見。

 かつ、それ以前からデジタルの動画撮影やデスクトップ編集を独自に研究していたので、大きな機材や編集室がなくても、CMクオリティの動画が作れる時代は、すぐに来ると思っていました。なので、ネット広告のことは、まったくわかっていませんでしたが、突破口はデジタルにあるのでは、と思ったんですね。

マスからデジタルへの越境に欠かせない発想の転換

有園:まさに、読みどおりになっていますね。それにしても、私からするとCM制作なんて王道なので、王道にいたのに苦しかったんだなと感じます。

 私も同じころ、博報堂担当の営業としてオーバーチュア(※3)にいて、CMが売りにくくなっていたことに悩んでいました。それで、CMに検索キーワードを入れてネットの検索連動型広告につなげるマス連動を思いついたんです。

須田:あれは新しい効果測定の策でしたね。そうやって各所でデジタルが興隆し始めていった。

有園:今、当時よりずっとデジタルが本流になってきて、かつて「1クリック10円なんて広告じゃない」といっていた人もデジタルを無視できないし、マスからデジタルへ移らざるを得ないクリエイターも増えています。実際、私も相談を受けたりするんですが、やはり苦しんでいるんです。

 CMは一つでいいけど、Webはバナーにしても違う絵と違うメッセージを配信条件の数だけ作らないといけなくて、絞り込む訓練をしてきた人にはそれはすごく難しいわけで。それは、指摘された「思考のベクトルが逆」ということに気付けていない、転換できていないからなんだと思いました。

 それで、いち早く越境してこられた須田さんから、そうした方々へ何かヒントをいただければと。制作の思考を、絞り込む方向から広げる方向へ、逆にすることがひとつですね。

須田:そうですね。やはり「使ってもらえる」広告という語彙にヒントがあると思います。よく「“使える広告”ですよね」と間違われるんですが、「使える」でも「使わせる」でもない。「てもらえる」がとても大事なんです。

※3 オーバーチュア:検索連動型広告の仕組みを開発した企業。2007年にヤフーが子会社化した。

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広告発信者にユーザーの行動の決定権はない

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26190

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