機械学習の得意と不得意
機械学習の得意な点として、まず精度の高い予測が得意であることが挙げられる。「ある商品を誰が買うか」「あるキャンペーンを誰が申し込むか」「Aさんは次に何を買うか」といった、大量の人やモノからビジネス上重要な要素をターゲティングすることが得意なのだ。
次に、目的となる変数のトリガーとなるイベントや条件を発見することも機械学習の強みだ。
3つ目に、実施を繰り返していくうちにデータが増えることで、予測の精度が上がっていき、より精度の高い施策を打てるようになることも特徴といえる。
他方で、不得意な点もある。
第一に、機械学習は制約条件がない問いには効果が期待できないことだ。たとえば、どのゲームならヒットするかや、KPIの数を何個にすべきかといった問いにはそぐわない。また、前例がなかったり、答えが一つでなかったり、過去のデータに傾向があまりない問いについては対応することが難しい。だからこそ、マーケターが機械学習の使いどころを考える必要があるのだ。
第二に、あらかじめトリガーが何かわかっている場合は、その仮説に基づいて施策を実行すればいいので、はじめからわざわざ機械学習で予測する必要はない。
第三に、一つのモデル式を作るのに時間がかかるということもデメリットといえるだろう。この点については、状況に適したツールを選ぶことで、必要になる時間を縮めることができる。
機械学習をMAに導入し投資ROIを最大化する
林氏は機械学習のメリットとデメリットを説明したうえで、機械学習を利用してOne to Oneマーケティングを実践する具体例の紹介に移った。
販促キャンペーンを実施する場合でも、様々なモデルを組み合わせて費用対効果を高めていくことが可能になる。キャンペーンの中で、「3ヶ月無料キャンペーン」、「1,000ポイントプレゼント」、「1,000円オフ」などのインセンティブを与える場合、それぞれをどの顧客に送るべきかをまず予測する。顧客クラスタごとにどのインセンティブを与えれば成果がでるのか、顧客クラスタとインセンティブの組み合わせごとに予測モデルを出して、一番高い効果が見込まれる組み合わせを実施し、投資ROIを最大化することが可能だ。
応用的な方法として、顧客のうち誰が優良会員になりそうかを予測し、優良会員になる確率が高い顧客だけに反応が高いインセンティブを与えるという施策も実現できる。
ブレインパッドが取り扱う「Probance(プロバンス)」は、Predictive Communication(予測するコミュニケーション)を実現するMAである。BtoC向けで大量データの処理を得意とし、機械学習を搭載している。クライアントの中には、社内外のデータを一元管理し、Webサイトやメールなど各チャネルで最適な施策を展開したところ、CVが1.8倍にもなったなど成果を上げている。
このように、人力では不可能な大量の組み合わせを分析し、その結果をもとに予測・最適化を行うというのが、機械学習が成果につながる勝ちパターンなのだ、と林氏は言う。
最後に、機械学習を活用したMAにおいて、人手で戦略を構築していくことで効果が最大化する点には注意しなければならない、と林氏は語る。機械学習は使いどころが重要でありすべてをAI任せにすることはできない。とりわけ全体戦略の策定はマーケターの力量にかかっていることを忘れてはならないと林氏は強調して講演を締めくくった。