アラートメールを営業へ役立つ情報だと理解促す
――そのくらい簡単にすると、入力率は上がりましたか?
そうですね。ただ、100%ではなかったので、もう一押し工夫しました。これがMAツールで一番活用している点ですが、通常はMAツールで顧客にメールを送るところ、営業に送ることにしたのです。一度コンタクトした顧客が当社のサイトを訪れたなど、アクションがあった際にアラートメールを送り始めました。
ただ、当初はこれも多くがゴミ箱行きでした。そこで、それこそ顧客へのメールでPDCAを回すように、営業の反応が得られるように内容やタイトルの書き方などを変えながらPDCAを回していきました。メールには営業自身が入力したデータも差し込めるので、ただ「サイト訪問がありました」だけでなく、その企業の決算月の情報や、ロストした企業だという情報を盛り込んだり。すると、営業も自分が入力したデータが自分の役に立つことがわかり、今では入力率はほぼ100%です。メールの種類は、現在20種類くらいあります。
――なるほど。その、ロストした企業がサイトに来たという情報が生きるというのは?
ロストした企業がわざわざ当社サイトに来る理由は2つあります。一つは、自社が選んだ製品のほうがやはり良かったということを確認したい。もう一つは、選んだ製品に満足できず、やはり当社にすれば良かったという後悔の表れです。後者なら、もうすぐに受注できますよね(笑)。これも、営業が自分で「この企業はロストした」と入力していないと機能しないので、データはどんどん貯まるようになっています。結果、営業がいったん手放したリードにも、インサイドセールスから精度高いアプローチができるようになり、今では好循環が生まれています。
ちなみにインサイドセールスには新卒・第二新卒・業界未経験者を配属し、教育機関を兼ねています。いずれ営業に配属するので、デジタルネイティブな営業を量産するのが理想です。
やはり、Webマーケティングだけで得られる顧客情報には限りがあります。営業が直接会って、生身の人間同士で話をしてくると、モチベーションを含めてぐっと深い顧客情報が得られます。それを起点としているデータベースが、当社の最大の資産ですね。

営業現場を知ることは必須 連携と信頼が成果に
――マーケティングが強力に営業支援をしているんですね。“マーケと営業の壁”という言葉とは無縁な印象です。
そうですね、信頼関係も以前よりさらに増していると思います。営業の情報をしっかり把握していないと、クロージング直前の顧客にセミナー情報を送ってしまうなど、営業を邪魔することもある。そんな事態が起きないように、以前から神経を使っていましたが、ツールの活用でずっとスムーズになりました。
それと、Web系のツールを導入する際には経営からいつも「それは営業活動に役に立つのか」と問われ、判断基準が明確です。営業にもヒアリングしますし、それで突き返されたら仕方ないので、ツール選びで失敗したこともあまりないですね。
――なるほど。マーケティングの視点だけではMAツールは使いこなせない、と言われていますが、お話からは営業視点が欠かせないことがよくわかりました。
そこは本当に重要です。営業のことを知ることは、うまく連携して両輪で成果を上げていくために必要不可欠ですね。私はたまたま営業出身ですが、そうでないなら、ぜひ営業に同行して現場を知ることをお勧めします。そうすると、実際にどんな温度感でファーストコンタクトを取っているのかがわかります。行き帰りのちょっとした会話からも情報が得られますし、マーケティングが営業に寄り添う姿勢が伝われば、それが信頼につながり、その後のマーケティングも机上の空論にならずに済むと思います。