常に接点を保つ“エブリデイ富士通”
――1社でそんなに来られているとは、部門の広がりがよくわかりますね。
ええ。それに、年に数百回開催するセミナーも、クラウドやIoT・ビッグデータ、モバイルといったいずれのテーマでも、非IT・現場部門からの参加が過半数を超えていました。さらにこの1、2年は福利厚生ではなく事業に直結するものとして“働き方改革”というキーワードが登場し、人事や総務の方にまで当社のソリューションを検討いただくような潮流も生まれています。
そうした非IT部門で当社の営業がカバーできていないお客様が増える上に、ネットでの主体的な情報収集が進み、意思決定の直前まで、何なら意思決定自体もネットで行う場合も増加してきています。するとネットでの情報収集段階で候補に入っていないと話にならないので、この数年で急いでデジタルマーケティングを強力に進めてきたという経緯があります。
イベントに来ていただいてもその印象は瞬間的なものなので、もっと日ごろから密にコンタクトを図りたいと、部内では“エブリデイ富士通”をコンセプトに日々のアプローチを続けています。
――なるほど。先ほどご紹介いただいたオウンドメディア「FUJITSUJOURNAL」は、JAAのWeb広告研究会が主催する「2015WebグランプリBtoBサイト優秀賞」も受賞されていますね。
そうですね。私の本部内のデジタルコンテンツ部門が中心になって手がけています。以前は販促ツールも兼ねて、当社の動きをまとめた冊子を発行していたのですが、一旦休止していました。改めて自分たちで主導権をもってコンテンツ起点でのオンライン発信を始めたところ好評だったので、今度は「FUJITSU JOURNAL」を再編する形で、年4回の冊子の発行を再開しています。イベントで配布したり、再び営業が販促ツールとして活用したりしています。
組織横断プロジェクトで一貫したアプローチを実現
――そうした活動からも、営業との連携がうかがえます。多くのBtoB企業で「マーケティングと営業の壁」という課題を耳にしますが、御社ではどのように取り組まれているのでしょうか?
そもそもデジタルマーケティングの実践自体、組織横断の推進プロジェクトで進めています。オウンドメディアやSNSなどの情報発信チャネル、また各種ツールが整った2015年10月の段階で、営業・SE・IT・マーケティングを横断したプロジェクトを立ち上げ、すべての顧客接点で一貫したコミュニケーションを展開することを目指しました。
まず営業活動で得た情報や、イベントやセミナーへの参加状況、また以前から運用しているFUJITSU-ID という顧客プロファイルが22万件あるので、これらのお客様接点情報を統合してデータを一元化しました。以降はデータ分析と、それを元にしたMAによるシナリオ型プロモーションを実行し、リードを獲得し、中長期的な育成を強化してPDCAを回しています。
営業との連携にはまだまだ課題も多く苦労しています。たとえばよくあるのが、営業にリードを引き渡す段階でのロストです。営業は営業で、自分たちの計画やタイミングで活動をしているので、マーケティングからホットリードを渡しても、うまくいかないことも多い。私も営業だったので事情はわかりますが、引き継ぎが難しいと双方のモチベーションも下がってしまいます。
場合によっては、営業とマーケティングが最適に役割を分担し、営業が販売するケースに加え、マーケティングが販売までダイレクトチャネルで完了するケースも、もっとあってもよいかもしれません。
昔はそうした活動に営業の理解を得るのは難しかったですが、徐々に変わってきましたね。それは、営業も前述のような顧客の変化を肌で感じているからだと思います。大手の顧客1社から200人も来ているなどという情報をシェアすると、自分たちのやり方を変えなければと実感します。ただ、部門横断のデジタルマーケティング推進を始めて2年弱になりますが、予定ではもう少し、成果が上がっている見込みでした。半年くらいは遅れている印象ですね。