「プログラマティックTV」の現状とは?
セッションの最後に高瀬氏から紹介があったのが、「プログラマティックTV」の現状と将来性に関するレポートだ。
「とくにアメリカでは、次世代のプログラマティック広告の配信手法として『プログラマティックTV』の普及・定着に期待が集まっています。セルサイド、バイサイド双方が協力する体制ができればさらに需要が高まっていくという指摘がありました」
これを踏まえて高瀬氏は、プログラマティック広告先進国のアメリカの現状について解説した。
eMarketerによれば、2017年のプログラマティックTV広告費は前年比75.7%増の11.3億ドル、2019年には40億ドル近くになるという。
「アメリカではとくに18~34歳の若い世代と35~54歳のミドル世代では、テレビ放送よりもデジタルコンテンツに時間を費やす傾向が高くなっています。また、動画コンテンツの配信プラットフォームや視聴する機器も増加し、オリジナルコンテンツも2016年までの6年で71%増と急増しているそうです。
一方で、ストリーミングサービスやWeb TV、スマートTVなどサービスやデバイスが乱立し、ユーザーの視聴環境が必要以上に多様化しているという課題があります。
マーケティングを手がける側は、オーディエンスの視聴環境が多様化している状況下でも効率よくターゲットにリーチできることが望ましいわけです。これを背景に、今後はプログラマティックTVの普及がますます進んでいくと予測されています」
カギを握っているのはマスメディア、テレビ業界の動向だ。高瀬氏は最後に、アメリカのテレビ業界がプログラマティックTVをどうとらえているかについて紹介した。
加速するプログラマティックTV活用へのシフト
高瀬氏が紹介したのは、アメリカ・ニューヨークに拠点を置くCoalition for Innovative Media Measurement(CIMM)のCEOによるセッションだ。CIMMはテレビ局、エージェンシー、広告主、プラットフォーマーなど、プログラマティックTVのエコシステムを形成するプレイヤーがメンバーとなっている団体で、テレビやプラットフォームをまたいだオーディエンス計測に革新を起こすことを目的としている。
「プログラマティックTVの普及・定着には、オーディエンスにリーチできているかという『計測』技術の確立が不可欠という話がありました。この分野でもアメリカは先進国であり、数多くのシステムやソリューションが提供されつつあります。
そのうえでテレビ業界は、正確なオーディエンスターゲティングやOne to oneマーケティングができ、在庫管理が自動化できるといったメリットをよく把握しているということでした。現状のテレビ放送とプログラマティックTVとで相反するメリット、デメリットを把握したうえで少しずつ移行を始めているというのが現状のようです」
たとえば理想としてはファーストパーティデータやサードパーティデータをオーディエンスへのターゲティングに直接活用したいが、現状ではターゲティングの「最適化」に活用している状況だ。One to oneマーケティングも「限られた世帯単位」でのターゲティングを進め、在庫管理についても一部を自動化するといった取り組みが行われているという。
「テレビ業界・広告業界では、(1)オーディエンスベースで購入できる広告枠を増やす、(2)データセグメント名とその分類の標準化、(3)MVPD(multichannel video programming distributors)によるアトリビューションモデリングのための広告データ開示、(4)業界内での提携による番組や広告識別子の標準化、などを進めていきたいとのことでした。
プログラマティック広告の現場ではバイサイド、セルサイドの双方でクリアすべき課題があることを紹介してきました。透明性の課題は、プログラマティック広告のエコシステムが『量』から『質』を重視する大きなきっかけとなっています。バイサイドでは今後、一層のAI活用とマーケタ―による高度な戦略立案と良質なインプットが求められます。またセルサイドには、オーディエンスベースでのプログラマティックTVの有効活用を進めるために業界全体での取り組みをさらに加速していく必要があるという見解です」