メルマガの代替にとどまる、LINE@の現状
ソーシャルデータバンクは、デジタルマーケティングのサービス全般を支援する、2017年に創業したばかりの企業だ。中でも同社の存在感を押し上げているのが、LINE@を拡張するサービスでありマーケティングオートメーション(MA)ツールの「セールスマネージャーLiny(リニー)」(以下、Liny)だ。
LINE@は、ビジネスや情報発信に活用できる会社・事業者向けのLINEアカウント。LINE公式アカウントと違い、低い導入コストでLINEを使った集客や販促ができることから、事業規模や業種業態を問わず導入する企業が増えている。
しかし、ソーシャルデータバンクの代表取締役を務める伊藤俊輝氏は「導入企業で使いこなせている企業はほんの一握り」だと語る。
「近年お客様のマーケティング施策を展開するチャネルとして、LINEは欠かせない存在となった一方で、使いこなせていない、もしくは一通り機能を使っても効果が出ないという企業も目の当たりにしてきました。これは、LINE@がデフォルトで用意する機能では限界があるからではないかと考え、我々はLinyを開発しました」(伊藤氏)
では、現状のLINE@活用において、どういった点が課題になっているのだろうか。伊藤氏によれば「LINEらしい使い方ができていない点が大きい」という。
LINE@を活用する企業や店舗のほとんどは、一括配信を行っている。せっかくOne to OneでコミュニケーションしやすいというLINEの強みがあるにもかかわらず、これまでのメールマガジンと変わりがない使い方にとどまってしまっているのだ。
1,000人に個別対応はできない
LINEの長所は、メールよりも身近で、相手とOne to Oneでコミュニケーションしやすいツールであること。しかし、メルマガのようにイベント情報や商品情報を一方通行で送ることで、ユーザーを戸惑わせている。
LINE@には運用側とユーザー側がチャットできる「1:1トーク」機能が実装されているが、伊藤氏はその利用実態を挙げる。
「仮にメルマガのような使い方でも興味を持つユーザーが、発信元のアカウントに返信すると、“このアカウントでは返信できません”と非対応にしている企業が少なくありません。多数のユーザーからの返信に対応できないためですが、ユーザーにブロックを促す結果になるだけで、本末転倒です」(伊藤氏)
同氏はしかし「このような対応を取ってしまうのも仕方ない」と続けた。確かに、一斉配信して個別の返信が10件程度なら返信できるが、それが1,000件以上来たらとてもじゃないが対応できない。つまり、通常の個別対応に無理があるのだ。
では、ある程度のセグメントを切ってコミュニケーションを展開すれば良いのではないか。LINE@では、年齢や性別、地域など基本的な属性別でターティングすることができる。しかし、昨今の様々なマーケティングツールのターゲティング機能を考えると少し物足りなさも覚える。ソーシャルデータバンクのマーケティング戦略本部にて本部長を務める近藤剛氏は、これらの課題を踏まえてLINE@に必要な機能を明らかにした。
「企業がLINE@を使いきれない最大の理由は、顧客管理や販促、Webマーケティングに特化した機能がないからだと思っています。結局、年齢や性別、地域だけで、相手のニーズをつかむことは難しい。そのため、たとえば個別対応の有無、その内容などをExcelなどで蓄積し、別途管理しないといけない。これでは顧客管理の負担が増すばかりで、効果的な運用にはつながりません」(近藤氏)
LINE@にできないことを可能に
そこでソーシャルデータバンクのLinyが登場する。同ツールは、LINE@運用における個別対応、顧客管理の負担を軽減し、一人ひとりのユーザーに最適なアプローチを可能にする狙いのもと、LINE@の機能拡張ツールとして開発。拡張の中身は、主に3点に集約できる。
1.セグメントアプローチ
2.顧客管理(カスタマーマネジメント)
3.自動効率化(フォローアップ)
まず、セグメントアプローチでは、LINE@でもできる年齢や性別、地域などの基本的な属性情報に加え、店舗、担当者、来店(購入)回数、利用メニューなどといった条件を組み合わせた柔軟なセグメント配信が可能になる。
「商品の購入回数や特定の商品購入といった購買データ、対象ページの滞在時間や動画の視聴時間といったWebの行動データなどを活用したメッセージ配信ができるため、よりユーザーのニーズに合わせた配信が可能になります」(近藤氏)
次の顧客管理では、LINE@で取得したユーザーの個人情報やチャット履歴をLinyのデータベース上に蓄積、管理することができる。これまでのExcelで管理するといった手法だと、負担がかかる上に個別管理でミスを助長しかねなかったが、同機能により安全な管理体制を実現する。
「営業支援ツールで案件管理を行うように、各ユーザーの情報を管理できます。これにより、目的に沿ったセグメント配信を行うための基盤の整備が可能になります」(近藤氏)
顧客管理機能があることで、LINE@専任の担当者がおらず、複数人が適宜対応するような体制で運用しても、チーム内の誰が各ユーザーにどのようなアクションを取ったか把握できる仕組みなので、二重管理、漏れや抜けなどが出ないのもメリットといえそうだ。
ユーザーのニーズにLINE@中心で応える仕組み
最後のフォローアップは、MAツールでは一般的な「ステップメール配信」ならぬ「ステップメッセージ配信」ができる機能だ。
「指定時刻や特定のアクションからの経過時間などをもとにメッセージを自動配信します。そしてその人の反応に合わせて、シナリオを分岐させていきます」(近藤氏)
LINEユーザーの心理や状況を考えると、素早いレスポンスで適切なメッセージが求められがちだが、Linyの拡張機能はそれらをカバーできるものだ。
「Linyには独自のURL追跡機能があるので、どこでコンバージョンして、どれほどページに滞在したかを自動的に追えます。たとえば商品Aのページを長めに見ているユーザーには、サイトの履歴情報を踏まえてAの追加情報も送信できるわけです。よくある質問には自動応答を設定しておき、詳細で個別に対応すべき質問は人力対応へと切り替える、といったリアルタイムな対応を可能にします」(伊藤氏)
こうしたLinyの強みが支持を集めて、既に業種業態、企業規模もバラバラな500社以上がLinyの導入を進めている。
「ユーザーからすればLINEだとメールより気軽に問い合わせできる分、運用側の対応が試されます。気軽にコンタクトしてくるユーザーに、顧客管理機能のもと細やかな対応ができるので、一斉配信だけでは埋められない友だちとの距離を近づけることができ、ロイヤルティ向上につなげられます」(近藤氏)
広告費のカットや成約率向上に寄与
では、Linyはビジネスの現場で実際にどう活用されているのか? 500社以上のLinyの導入事例では、様々な業種業態にあった具体的なLinyの使いどころや効果が見られるという。
「人材業界では、新卒採用向けのイベントに導入した事例があります。学生とのやりとりをメールからLINEに切り替えたものの効率が悪く困っていた運営側が、Linyで導入してユーザーとのやりとりを効率化し、最終的には採用コストの削減につなげています。
また、EC企業が導入して、売り上げを保ちながら広告費を従来の半額に抑えた事例もあります。メールだとユーザーに開封されないケースがある中で、LINEでセグメント配信して、確度の高いユーザーに合わせたコンテンツを提供することにより、メールより高いコンバージョン率を実現しました」(近藤氏)
メールと違ってLINEは、特定の誰かとやりとりをしているという感覚を持ちやすい。ユーザーの利用動向を踏まえた、One to Oneを心がけた配信が可能になれば、必然的に効果が上がるといえるだろう。
「不動産の事例では、ユーザーの条件に合わせた情報が送りやすいと好評で、成約率も向上しています。LINEを通じて適切な情報が提供されていて、的を射た対応ができているからこそ、高い効果を生んでいます」(近藤氏)
また、Linyの導入は、即日で運用開始できるところも魅力の一つだ。LINE@を通じて、成果のスピード感を求めたい企業にとっては大きなメリットだろう。
時代に即して最適なものを
最後に、Linyによって拡張できるLINE@と他のLINEサービスとの棲み分けも押さえたい。伊藤氏は、「事業規模やビジネスの方向性に沿った共存が可能」と説明する。
「LINE@は個人管理のほか、複数名によるチームで同一アカウントを運用できるメリットがあります。LINE WORKSは、最近グループチャットも可能になるなど、顧客とチャットでやりとりすることに特化したサービスといえます。直接営業がセールスしていくものには向いています。
LINEビジネスコネクトは、LINEのAPIを活用し導入企業に合ったプラットフォームを独自開発するものです。開発期間・費用に余裕があれば適していると思います。当社のLinyは、あらかじめLINEに関するマーケティングにおいて必要なものを自社開発しているので、これまでLINE ビジネスコネクトを導入しなければできなかったような機能も安価に導入できます」(伊藤氏)
企業と消費者のコミュニケーションの関係性が変わってきている昨今、LINE@の存在感はさらに増す現実がある。「会社としてはLINEに限らず時流に応じて、お客様が最適なマーケティングのアプローチを追求したい」としており、ソーシャルデータバンクの展望からも目が離せない。
「実装スピードの速さが私たちの強みの一つです。開発と営業、販売部隊が同社内で行っているので、今後も営業先のクライアントから出てきたニーズや悩みを即座に実装するような柔軟性を発揮したい。
直近に関しては、他のマーケティングオートメーションやデータベースなどとも連携予定ですので、既に導入済みの仕組み、ツールと共存できるものになると思います」(近藤氏)
事業の発展には「LINEのマーケティング活用」が急務だ。Linyを突破口に、LINE@の成功事例がさらに増えることを期待したい。
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