CDPはDMPやCRMと何が違うのか
まずはCDPの機能における、DMPとの差異を整理しておこう(図表1)。

これまでのDMPの発端にあるのは、企業データを中心とした設計思想だ。対してCDPは起点が「実在する個人」に紐づくデータの集積であり、複数のシステムから同一人物の情報に統合する(カルテ)発想だ。それをリアルタイムに活用できる機能を持つ。病院にたとえれば外科・内科の仕分けや効率化ではなく、生活者(患者)個人の健康管理に寄り添うイメージだ。オプトインを前提としていても、施策次第では「気持ち悪い」ほどに自分のことを知り尽くされているという感覚を生活者に与えかねないので配慮が必要だ。
一方CRMとの比較では、CRMは「B2Bの世界」における既存顧客の電話番号や来店履歴の管理(カルテ)を構築する手法として、主にIT部門が中心となって管理してきた。これに対してCDPの管理はマーケティング部門を起点として存在する。一般生活者のネット上の個々のオウンドメディアの履歴や、スマホアプリ上の行動履歴、さらに「匿名のセグメント顧客層」にも一つずつIDをあてがって、広い範囲で個人の情報を積み重ね、リアルタイムに統合できる機能(させる設計)を持つ。
一番の鍵は近年のモバイルを含めたソーシャル上の履歴だ。CDPを使ってマネジメントする企業は生活者のソーシャル上の経歴を「顧客の360度ビュー」として構築し、顧客が選ぶコミュニケーションチャンネルに先回りできることだ。
既に米国ではEC企業だけでなく、トラディショナルな消費財ブランドもCDPの活用を始めている。特に後者は、これまでは直接顧客データを持たず、流通企業を通して生活者に製品を届けてきた。彼らが流通企業に対するB2BのCRMを越えて、CDPを活用してD2C(Direct to Customer)の関係を構築し始めた点は新しい。日本企業にもその動きが見え始めている。
本コラムはデジタルインテリジェンス発行の『DI. MAD MAN Report』の一部を再編集して掲載しています。本編ご購読希望の方は、こちらをご覧ください。