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リゾームマーケティングの時代

Googleは情報/データを喰らう怪物だ データの世紀、AI時代における新しい経済構造

マイデータは貨幣価値を発生させる

 その方法はたとえば、企業の内部留保に触手を伸ばすこと。時事ドットコムに「企業の内部留保、446兆円=6年連続で最高更新-17年度末」という記事がある。

 この多くはおそらく、資本収益率の高い企業がビジネスの結果、蓄積した金額だ。私は、これに税金を掛けろとはいわない。既に法人税を払っているから、二重課税になる。そうではなくて、効率的で効果的なマーケティング施策のために、有効活用して欲しいのだ。

 そこで、一例として考えたのが、前回の記事で紹介したようなテレビCMと情報銀行/マイデータを使った枠組みだ(参考記事)。

 ここでは、個人情報/データを「マイデータ」という個人が主導する資産と考えている。現在の法律では、個人情報/データに対する所有権は明確に規定されていないらしいが、これを個人に所有権が帰属するものと捉え、情報の所有者の許諾なしでは使えないとしたい。

 そうすることで、個人情報/データはマイデータという個人の資産となり、経済的取引の中で、貨幣価値を発生させる。人工知能などのテクノロジーの影響で、労働の価値が伸び悩む、あるいは低下する環境において、マイデータは有力な家計の収入源の一つになる。

 『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編』(かんき出版 2013)に、「フロー循環図」(p44)というのが載っている。これは、財市場、労働市場、資本市場の3つの市場でお金がどのように循環しているかを示したものだ。「家計」と「企業」という経済主体の中でお金のフローを描いている。

 この経済学の基本は改変できる。リゾーム化する社会の中で、すべての個人(家計)と企業がネットワークに接続していれば、個人情報/データの市場を組み込める。

 人工知能の時代、「企業(AI)」という経済主体に書き換えて、個人情報/データを「生産要素」の一つとして、労働力と同じように扱うのだ。すると人工知能は、個人情報/データを「消費する経済主体」になる。その結果、その消費の対価を、個人(家計)に支払うのである。

 これを制度化すると、個人は、マイデータを資産として運用し、収入を得ることができる。

 すべての個人が生まれた瞬間から個人情報/データを所有している。人間は存在するだけで価値がある。その資産を運用することで消費者として購買力を持つ。それは、つまり、「あなたは生きているだけで価値がある」というメッセージになり、経済的にも重要な存在となる。ある意味で、自律的なユニバーサル・ベーシックインカムの原資を、生まれながらの権利として持つのだ。

次のページ
人工知能は、「生産もするし消費もする経済主体」

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/19 15:00 https://markezine.jp/article/detail/29688

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