拡大するレコメンドウィジェット広告市場
世の中で「広告嫌い」の色が強まる一方、デジタルでは様々な広告手法が登場してきた。たとえば、長尺の動画広告、UGCの活用、インフルエンサーマーケティングなどがあるが、いずれにも共通しているのは「ユーザーにとって、有益なコンテンツとしても成立している」ということだ。「広告の価値」が改めて問われるようになってきている。
こうした状況下で、昨今注目されているのがレコメンドウィジェット型の広告である。レコメンドウィジェット広告の市場規模は、2017年に前年比で約2倍の148億円に成長。2020年には、2017年の約2.4倍の349億円にまで拡大するとの予測も出ている(デジタルインファクト調査)。
この市場をけん引するベンダーの一つにアウトブレインがいるが、同社がディスカバリー・プラットフォームという名称で、日本におけるレコメンドウィジェットのサービス提供を開始し、2018年11月で5年になる。現在では、朝日新聞デジタルをはじめとする大手新聞社から、モバイルの女性向けメディア、テレビ局など300を超える日本国内のプレミアムメディアが、同社のディスカバリー・ネットワークと提携しており、そのPVは国内で42億のPVを突破している。
さて、レコメンドウィジェット型の広告というと、コンテンツマーケティングひいてはブランディングが連想されるかもしれない。だが、本記事で紹介するのは、ダイレクトレスポンスマーケティングでのレコメンドウィジェットの活用について。アウトブレインを活用して、ダイレクトレスポンス×コンテンツマーケティングという新たな領域を開拓しているワンスターは、レコメンドウィジェット型広告の可能性をどう見ているのだろうか。
如実に感じていた「ユーザーの広告離れ」
ワンスターは、ダイレクトレスポンス系のデジタルマーケティングに強みを持つ。そんな同社がアウトブレインを活用し始めたのは、ネイティブアドですらまだ盛んでなかった2015年頃。当時のWeb広告は、レクタングルが主流で、パッと見て広告とわかるようなクリエイティブが多かった。
また先述した通り、コンテンツマーケティングというと一般的にブランディング寄りの考え方になることが多い。実際に、アウトブレインへの出稿も以前はほとんどがブランディング目的だったという。
では、なぜワンスターは、アウトブレインの活用を試みたのか。その先導を切っていたワンスターの増井氏は「ユーザーの広告離れを如実に感じていたので、むしろ、ダイレクトレスポンス×コンテンツマーケティングを成功させないと僕らの未来はないと思った」と、その理由を話す。
社内でも驚きと不安の声が上がったほど、ダイレクトレスポンス×コンテンツマーケティングは業界としても未開拓で挑戦的な取り組みだったが、その不安とは裏腹に、出稿の効果は最初から高く出たそうだ。増井氏とともに、アウトブレインの活用を先頭で進めている野上氏は、中でも新規顧客の獲得におけるアウトブレインのポテンシャルをこう語る。
「広告になかなか反応しないユーザーも獲得できるという点がアウトブレインの特徴ですね。実は潜在的ニーズがあるけれども、通常の広告には反応しないユーザーに、記事コンテンツでアプローチできているのでしょう」(野上氏)
潜在層へのアプローチについては増井氏も「既存メディアでの成果が落ち込むことなく、アウトブレインに出稿した分だけ売り上げが純増するんです。これは、我々がこれまでアプローチしてきたユーザーとは違う方々にアプローチできている証拠だと思います」と続ける。
広告だとわかっても受け入れてもらえるコンテンツとは
ワンスターがダイレクトレスポンス×コンテンツマーケティングの領域を開拓する際、最も注力したのは、最適なクリエイティブのフォーマットを見つけることだった。アウトブレインのメディア環境に合わせて、ユーザーに広告を届けるにはどうすればいいのか。記事広告をクリックした後も、広告を情報として受け取ってもらえるクリエイティブはどういったものか。試行錯誤を繰り返しながら、アウトブレインのメディア環境に適したコンテンツ作成の力を磨いていった。
そんなワンスターがコンテンツ作りにおいて重要視しているポイントは、「商材の深掘り」である。クライアントの商材を徹底的に深掘りして理解した上で、競合の商品にはない魅力をコンテンツに落とし込む。記事が広告だとわかっても、読んだ後に「買おう」「調べてみよう」と思ってもらえるコンテンツ作りを意識している。
その成果として、広告主からは「アウトブレインに出稿すると、売り上げだけでなく、検索数も上がる」といった声が上がっているそうだ。「記事広告でCVしなくても、コンテンツから知識や情報がインプットされているから、検索という次のアクションにつながるのだろう」と野上氏。広告の質が、様々な面に影響することがわかる。
クリエイティブ力で正しく戦える環境があってこそ
そして、ワンスターのコンテンツ力が活きるメディア環境にも注目したい。横に並ぶ広告を気にせず、クリエイティブで勝負できるメディア環境は、決して当たり前ではないからだ。
アウトブレインでは、薬機法に対応する形で、明確にコンテンツガイドラインを引いている。わかりやすく言うと、健康食品やコスメなどの商材では、「痩せた」「シミが消える」などのワードが使われることが多々ある。
だがアウトブレインでは、薬機法に基づき、こうしたワードを使ったコンテンツの掲載を認められない。社内に設置した専任のコンテンツ審査チームが外部業者と提携し、コンテンツやタイトルが薬機法に抵触していないかどうかを厳しくチェックしているのだ。
「以前はユーザーに誤解を与える可能性のある表現でも、出稿できてしまう状況がありました。ですが、アウトブレインは、薬機法を守って下さっているので、横に並んだ違反広告がより目を引いてしまわないかどうかを気にすることなく、純粋にクリエイティブ力で勝負できる。我々の強みを活かせるので、非常に有り難いです」(野上氏)
増井氏も、「確かに、『痩せる』とか『シミが消える』などの効果効能を表現することで、新規の獲得効率は上がるかもしれません。ですが、ユーザーの商品に対する期待値もその分上がってしまうので、継続率だったりLTVは結局下がってしまいます」と話す。惹きの強い表現は必ずしもクライアントの売り上げにつながらない、というわけだ。
さらに野上氏は、直接的に強い表現をすることのリスクをこう述べる。
「堅実に売り上げを伸ばしていったクライアント様の多くが事業を成功させています。足元でリスクを冒すくらいなら、正しく戦って正しく売り上げを伸ばしていくほうが、クライアント様へ貢献できるのです」(野上氏)
ターゲットとコンテンツの整合性も重要
コンテンツ作りにおいては、アウトブレインのメディアに来るユーザー像をしっかり捉え、そこにマッチさせることも重要だと野上氏は語る。
たとえば、アウトブレインが2017年より提供している、CVした既存ユーザーと類似する新規ユーザーに広告を配信できるインタレスト拡張配信の機能なども積極的に活用。トライアンドエラーを繰り返しながら、「インタレスト拡張配信に合うクリエイティブとは?」と、常にクリエイティブと運用方法にメンテナンスをかけているという。
そんなワンスターから見た、アウトブレインのユーザーにはどのような特徴があるのか聞いてみると、「アウトブレインといえば、男性ユーザー×PCのイメージが強いかもしれません。ですが、ずっと継続してアウトブレインに出稿してくださっているクライアント様は、女性向けの商材でご利用いただいています。
確かに、アウトブレインさんへの出稿はPCへの配信が多かった時もありますが、直近ではモバイルへの配信が9割を占める場合もあります。こうした事例も出てきているので、商材に合わせて柔軟に活用していきたいですね」と増井氏。
アウトブレインによると、同社のレコメンドウィジェットを束ねるディスカバリー・ネットワークの国内ユーザーは、モバイルが4,276万人、デスクトップが2,159万人(2018年1月時点)。特にモバイルでは、男女および年齢別のバランスが良く構成されている。
これは、ディスカバリー・ネットワークに近年モバイルの女性向けメディアが増えていることもあるが、生活者の中でメディアの使い分けが進んでいることも関係しているようだ。また、20代から60代まで年齢層が幅広く、高所得者数が多い点も特徴といえる。
広告を通して有益な情報を届けたい
最後に今後の目標を尋ねると、増井氏と野上氏は共に「より多くのユーザーに広告を通して有益な情報を与えていきたい」と話す。
「より多くのユーザーに正しくて有益な情報をしっかり届けたいというのが一番ですね。我々にとっては、クライアント様の売り上げ最大化が、ユーザーに情報を提供できたことの証拠だと思うので、売り上げの成長だけでなく、LTVの向上を目指していきたいです」(野上氏)
「クライアントさんの商品を必要としている人に、その情報を届けてあげるのが我々の仕事です。広告が嫌われるのは、広告が自分とは関係ないものと思われているから。“必要としている人に、必要な情報を与える”ことの精度が上がっていけば、本来そうであるように、広告は有益なものになるはずです。アウトブレインさんと協力しながら、すべての人に求められる広告を届けていきたいです」(増井氏)
より多くの人に、有益な情報を届ける。これを実現するとなると、今の配信の在庫量では足りなくなる瞬間が出てくるだろうと、野上氏。良質な面をさらに拡大し、対象となるユーザーを増やしていってほしいと、アウトブレインへの期待ものぞかせていた。
今後、さらなる拡大が見込まれるレコメンドウィジェット型の広告市場。ユーザーに受け入れられる新しい広告フォーマットとして、活用の幅がさらに広がっていくことが期待される。