集英社×Reproの新しい挑戦
SaaS型のマーケティングプラットフォーム「Repro」は、アプリで取得可能なユーザーの属性データと行動データを蓄積・活用できる特徴を持つ。活用に関しては、ユーザーに合わせたプッシュ通知やアプリ内ポップアップ、ソーシャルメディア上の広告配信などが可能だ。
2018年10月には「Repro Web」もリリースされ、アプリとウェブを統合したデータを可視化・分析し、横断的なコミュニケーションが取れるようになった。
「創業から5期目に入り、市場が小規模だった頃からアプリマーケティングの啓蒙活動とサービスの開発を行ってきました。日本市場から今度は海外市場での挑戦、そして『Repro Web』のリリースや今回の『Repro AI Labs』での実証実験といった新領域への事業拡大を進めています」
「Repro AI Labs」は、生産性の高い最先端技術であるAIと機械学習の技術を取り入れ、マーケティングに活かすことを目的として設立された専門組織。同組織では今夏より、「離脱ユーザー予測」「AIによるパーソナライズされたコンテンツマッチング」「コンテンツの配信時間パーソナライズ」などの研究開発と実証実験を進めていた。その一環として行ったのが、集英社が提供するマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」における「離脱ユーザー予測」の実証実験だ。
次の時代を作る作品を発掘
なぜ「少年ジャンプ+」を提供する集英社は、今回の実証実験に参加したのだろうか。それに対し、平田氏は「アプリでの収益だけでなく、大きなビジネスチャンスをつかむため」だと答えた。
「集英社としては、アプリ内の売上高を拡大するだけでなく、アプリユーザーであるマンガ読者の裾野を広げること、そして新たな人気作家やヒット作品、つまり『次の時代を作る作品』を発掘することが非常に重要でした」
「少年ジャンプ+」を利用するユーザーは、何らかの目的を持ってマンガ作品を読んでいるケースが多い。これまでも、Reproでユーザーデータを分析しながら、その分析結果をベースにプッシュ通知を配信するといったコミュニケーションを実施。読者と新しいマンガ作品の出会いを創出する手段として活用してきた。
今回のRepro AI Labsと集英社による実証実験では「『少年ジャンプ+』から離脱しそうな傾向にあるユーザーをAIによって予測できるか」、「その予測したユーザーを離脱させないことができるかどうか」を検証。実証実験の対象を「離脱しそうなユーザー」に設定した理由について、離脱ユーザーの復帰(リエンゲージメント)施策の難しさが挙げられるという。
「一度アプリをアンインストールしてしまうとユーザーは90%は戻ってこないと言われています。アプリ提供者はそうなる前に、休眠ユーザーに対しリエンゲージメント施策を行うわけです。ただ、どのユーザーが離脱しそうかを人力で予測するのは非常に難しい。それをAIの力で可能にしようと考えました」