※本記事は、2019年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』37号に掲載したものです。
「お客様ごと」に合わせたコミュニケーションを(アトレ)
2018年を振り返って
チャネルシフトが最も印象的でした。ECがリアルに顧客接点を広げたり、リアル店舗がデータを使ってパーソナライズするなど、チャネルを跨いだデータ活用の加速を実感しました。従来アトレでは、売上の過半数を占めるカード会員データをSC各店の開発・運営に活用してきました。2018年はJR東日本グループの共通ポイントである“JREポイント”にSuicaやVIEWカードのポイントが統合され、会員規模とデータ活用の幅が格段に拡大しました。そこで、オフラインのSCづくりだけでなく、今後どのようにオンライン上の顧客接点にデータを活用していくかを模索した年でした。
2019年へ向けて
消費環境が変化する中でお客様にアトレをご利用し続けていただくために、これまでの「街ごと」に合わせたSCづくりだけでなく、JREポイントやSuicaデータを活用し「お客様ごと」に合わせたオンラインでのコミュニケーションやサービス提供を目指します。リアル店舗のデジタルマーケティングは効果検証の面で課題が多いですが、JREポイントを基点とすることにより、店舗での購買を成果として計測できます。オンラインとオフライン双方のタッチポイントで取得できるデータを統合したマーケティングプラットフォームを構築し、駅でのより良い買い物体験の提供につなげていきます。
戦略企画室 主任 樋口 貴成氏
広告代理店を経て2011年にアトレに入社。大井町店にて開発やプロモーションを経験した後本社に異動。全社のプロモーション企画・予算管理を担当した後、現在はデジタル戦略の立案・推進を担当。Web関連プロモーションの企画やSC各店のサポートに取り組む。
データ&テクノロジーと感性を融合させる(I-ne)
2018年を振り返って
2018年は、Instagramの新機能、IGTVやShopNow機能、ストーリーズの進化、TikTok人気と広告開始など、激動のSNS新時代の到来を感じた年でした。BOTANISTで振り返ると、ボディケアとダメージヘアケアシリーズがヒット&グローバル展開が好調で3倍成長を続け、国境を越えてお客様に受け入れていただける喜びを感じたこと。BOTANIST Cafeのスムージーボンボンがヒットし、リアル店舗でお客様とのリレーションを築けたことなど、何ごともベンチャーマインドで新しいことに"素早く小さく試すこと"が重要だと改めて感じました。
2019年へ向けて
2019年は、パーソナライズされたプロダクト、サービス、コンテンツに注力していきます。それと同時に、普遍的な価値を追求し本質的なモノ作りを行っていきます。I-ne インサイトスコープ AI “KIYOKO(キヨコ)”やクリエイティブAI、全データを積極的に活用し、テクノロジーと僕らの感性を融合させ、ミュータントなモノを生み出していきたいです。世界中の人々の生活に、ポジティブなインスピレーションを与えられるような表現を追求し、世界に「J-beauty」旋風を巻き起こし、2020年に向けて日本をさらに盛り上げて皆様と良い年をつくっていきたいです。
取締役 ブランディング本部本部長 クリエイティブディレクター 今井 新氏
経営・事業戦略からブランド立案、プロダクトデザイン、コミュニケーション設計、広告クリエイティブディレクションを行う。「BOTANIST」や「SALONIA」をはじめ、15ブランド以上を手がける。EC事業を立ち上げ、ブランディング・マーケティングに特化するため、ブランディング本部を設立。ハードコアミュージックカルチャーに影響を受けクリエイティブ職に従事。
新たな商品価値をお客様に体感してもらいたい(江崎グリコ)
2018年を振り返って
2018年は、ユーザーが価値を感じる対象が、「モノ」→「モノ+体験」へ加速度的にシフトしたように思います。たとえば、「朝食りんごヨーグルト」は、お客様の「朝食りんごを夜食べる背徳感」というツイートをきっかけに、パッケージを暗闇で「夜食りんご」に光らせる企画を実施。その際、商品名を変えるだけでは面白味に欠け、グリコから“変身するよ”と言うのもシラケるので、PRは最小限に。結果、一人の消費者の“びっくりした”というツイートが広く共感を呼び、大反響に。“面白味”の体験共有により話題化が進んだ要因であり、改めてユーザー体験の重要性を実感した年でした。
2019年へ向けて
ヘビーユーザーの行動観察をすると、飲み会の後や気分が少し重いときなどに「朝食りんご」を食べてすっきりしているという発見がありました。これは独自価値であり、武器になる! ということで、“食後の朝食りんご”という訴求でヨーグルトの食シーンを広げる活動に注力しています。心がけているのは、「夜食りんご」で学びを得たお客様のインサイトに寄り添った丁寧なカスタマージャーニーの設計。2019年は、すっきりできるという価値をより多くのお客様に知って体感してもらう年にしたいです。今後も大真面目に、でも“面白味”を忘れずに邁進します。面白いアイデア募集中です!
マーケティング本部 乳業マーケティング部 発酵乳企画グループ 藤田 晃子氏
大学卒業後、IT企業でのプログラマー職、上海への留学を経て、上海江崎グリコに入社し菓子ブランドのマーケティングに従事。2009年に帰国後、江崎グリコにキャリア入社し、営業企画、アイス、ヨーグルトのマーケティングを担当。プライベートでは、娘の育児に奮闘中。
ブランドの存在意義を高める共通価値の創造へ(花王)
2018年を振り返って
デジタルマーケティング業界全体では自然言語解析やAIをはじめとするデータ分析が活性化していたと思いますが、個人的にはユーザーヒアリングにこだわり、できる限り直接お客様や、そのカテゴリーの専門家のお話を傾聴する機会を意識して増やしていました。鏡越しのインタビュールームではなく、直接対面でお話をお聞きしていくことで、ソーシャルリスニングや市場データ分析から伝わる空気感の答え合わせができるような感覚を得ています。結果、いくつかの企画に実際に活かすことができ、デジタル領域のプランニングこそ、直接人に会う機会を増やすべきという考えに至りました。
2019年へ向けて
花王には「消費者・顧客を最もよく知る企業となる」というビジョンがあり、私の職域ではデータ分析をより活用するためにも、お客様と直接会話していくことに継続して取り組んでいきます。また個人的にはメーカーのマーケティングは、いかにお客様の役に立てるか、困りごとの解決ができるかということが重要だと思っており、それを突き詰めていくと社会課題解決という視点も必要になると考えています。昨年はNPOの方ともお会いして社会課題の理解から企画を行いましたが、今年はさらに機会を増やし、ブランドの存在意義をより高めていくような共通価値の創造に挑戦していきます。
デジタルマーケティング部 データサイエンス室 広末 守正氏
1996年より花王のクリエイティブ部門にて映像制作、Webサイト構築、アクセスログ分析などに携わり、2003年より主にデジタル施策の効果検証・改善提案を担当、2012年よりデジタルマーケティング部にてデジタルを中心としたプロモーション施策のプランニング、実行・効果検証等を推進している。