オフラインデータは簡単に集められる
――前回は“オムニメディア化”の重要性と、それを実現するためにはしっかりとしたシナリオ設計、オフラインデータとオンラインデータの統合が重要になってくるとの話がありました(詳細はこちら)。この2つを行う際に意識すべきことはありますか?
オフラインデータとオンラインデータの統合を進める上で、まず必要になるのがオフラインデータの収集でしょうね。どうやって集めればよいのか悩む方も多いと思います。何かのソリューションを導入して収集することもできますが、投資や時間が必要になる。しかし、ソリューションを導入せずともできることは沢山あります。
たとえば、何気なく店舗の担当者が作成する「日報」。これもオフラインデータとして活用できます。
ECだと来訪者数はもちろん、閲覧した商品、どのフェーズで離脱したかまでわかりますが、リアル店舗の場合、売上の大小はわかっても、来店者数や試着人数はわからず売上との相関性が掴めなかったりします。
そこで、日報に来店人数がいつもと比べてどうだったかなど、5段階評価で書き込んでみる。それが100店舗あれば、1日で100、1ヵ月で3,000、1年間で36,000と有用なデータが集まります。レジ通過人数のわりに試着人数が少なければ、動線もしくはマーチャンダイジングに問題があるなど、改善点が見えてきます。こうした工夫次第でオフラインの行動をデータ化することは可能なのです。
そうして集めたオフラインデータとオンラインデータを統合した先に必要なのがシナリオの設計です。消費者にとって、オンラインもオフラインもタッチポイントの一つにしかすぎません。企業はそれを理解し、全タッチポイントで統一されたメッセージが届く設計をしていく必要があります。この2つができてこそ、オムニメディア化が進められると私は考えています。
メディアの効果を高める「タイミングマーケティング」とは何か
――その2つの前提のもと、タイミングマーケティングを行うことが重要なのですね。
当たり前ですが、どのメディアも適切なタイミングで使わなければ本来の効果が発揮できません。また、タイミングというのも、単純な時間軸の話ではなく生活者のマーケティングファネルにおけるステージのようなものを意識することが重要です。その前提でコミュニケーション設計することを私は「タイミングマーケティング」と言っています。
たとえば、同じユーザーに一緒のメッセージを送るとしても、そのユーザーが認知段階にあるのか検討段階に入っているのか、置かれているタイミングによって反応は違ってきます。
――顧客がどの段階かを理解し、それに向けたアプローチが必要ということですね。
そのアプローチをこれまで多くの会社はデジタル上で行っていました。デジタルであれば顧客が検討しているかどうかなどの把握はもちろん、それに合わせたコミュニケーションが非常にしやすいですから。
しかし、最近の印刷技術の進展により即時性の高いプリントが可能になり、DMなどのアナログメディアでもタイミングを踏まえたアプローチが実現できます。このように、デジタルとアナログのコミュニケーション手段が同じテーブルに乗り始めたことも、オムニメディア化を進めるべき背景の一つと言えます。