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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「プロのマーケターの定義を明確にすべき」スマニュー西口×広告クリエイティブディレクター小霜対談

現場に下りてきた無理は覆せない

小霜:本当ですね。それぞれの立場での独自解釈というか、忖度というか、そういうのをエージェンシーのストラテジックプランナー(以下、ストプラ)が受けてクリエイティブチームにまで落ちてくると、もうどうにもならない。ストプラへのブリーフ(オリエンシート)自体がこんがらがっていますから。

 僕がクライアント企業の経営層と直接やり取りしている場合は、その時点でもろもろ整理して、無理なことは「無理です」と言えますが、エージェンシーと仕事をするときはさかのぼって覆せないので、本当にしんどいです。

西口:そうですか……。小霜さんがクライアントサイドに入られる場合は、ブリーフ作成から関わるんですか?

小霜:そうですね。大体、僕の意見を聞こうという社長やCMOはそもそもあまりイメージ云々の話をされず、コミュニケーションを効率化したいからと全権を委任してくれるので、僕はエージェンシーの業務内容も汲みながら、ウィン・ウィンの関係を作るようにしています。

 さっきの“不都合な真実”じゃないですが、普通に考えるとおかしなことってたくさんあるんですよ。商習慣だったり、業務フローだったり、役職だったり。でもそこを正論で押すと、必ず泣く人が出てきてしまう。

西口:僕もちょっと、耳が痛いですね……。

小霜:マーケティング部長やブランドマネージャーをすっ飛ばして、CMOから直でエージェンシーに指示しちゃえ、とかね。それは無理にやれば成果は上がりますが、きしみますよね。

企業内のジョブローテーションの功罪

西口:先ほどブリーフの話をうかがいましたが、ブリーフが間違っていると当然成果にはつながらないですよね。クライアントサイドにそれをちゃんと遂行できる人がいないのが問題なのに、「エージェンシーを替えたい」と言われる。それって、ジョブローテーションの功罪だと思うんです。

小霜:そう、今それすごく問題だと思います。まず、アドフラウドや水増し請求などがこの数年で次々と明らかになって、業界全体がエージェンシー不信に陥っている現状があります。両者が腹の探り合いになって、業界全体が負のスパイラルに入ってしまっているんですね。昔はよくも悪くも水面下で結託して、そこから斬新な企画が生まれたりもしましたが、セキュリティやコンプライアンス重視の時代にはそれも消えました。

西口:お互いに何を考えているかわからない、溝がありますね。

小霜:そこに、ジョブローテーションの問題が拍車をかけているんです。異動は外注先との癒着を防ぐ理由もあるといいますが、2年やそこらで異動となるとほとんど素人で、エージェンシーの担当者のほうがブランドのことも過去の経緯も詳しくて、実質的に頼ることになる。エージェンシー不信だといいながら、自社内でマーケティングのプロを育てようとしないのは大きな矛盾ですし、ブリーフが悪いのに成果が出ない責任を押し付けるのは間違っています。

 信頼されなければ、モチベーションもパフォーマンスも下がります。もちろん、不正を働いていたら論外ですが、そうでないならクライアントサイドからまず信じてあげて、腹を割ってコミュニケーションを図るべきだと思いますね。

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「鳥の目」と「虫の目」を持とう

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/24 14:00 https://markezine.jp/article/detail/30855

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