“商品のDNA”から探るベストマッチングな体験
ここからは視点を変えて、ターゲットが購入・利用する商品からその商品の特徴をプロファイルした“商品のDNA”というアプローチから、商品・サービス開発のヒントを得よう。
“商品のDNA”とは、“生活者のDNA”の情報をもとに、「こういった価値観を持つ人たちがよく買っている商品は、近い特徴を持つ」というロジックに基づき、“生活者のDNA”と購買データを掛け合わせることで、“商品そのもの”のキャラクターを定義したものだ。“生活者のDNA”と合わせ、図表5にその概要を示す。

これらは“生活者”も“商品”も共通の指標であるため、同列で比較ができる。
さて、インテージのSCIデータ※4から2018年度における消費財の購入経験率を確認したところ、購入経験率の高いトップブランド群(234ブランド)の中で、自動運転積極層と消極層とで最も差が出た商品は“ハーゲンダッツミニ”であった(積極層が29.2%、消極層が24.4%と、4.8ポイント差)。
実際に自動運転積極層の“生活者のDNA”と、ハーゲンダッツミニの“商品のDNA”を見比べると、図表4(2)で表す通り、「特別感」や「ブランド感」、「内向的」といった因子の合致度が高い。

積極層のハーゲンダッツ購入割合が高いことは偶然ではなく、互いに共通するキャラクターを持っているからだろう。
自動運転車の中で、ゆったりと一人の時間をくつろぎながら、ハーゲンダッツを口に運ぶ。“絵になる”と感じたのは私だけだろうか。
完全自動運転がもたらす新しい体験
完全自動運転の実現により運転から解き放たれたドライバーは、より積極的に車窓からの景色を楽しんだり、同乗者との会話を楽しんだり、ときには睡眠にあてたりと、移動時間の過ごし方が大きく変化するはずだ。2019年の東京モーターショーでトヨタやスズキが発表したコンセプトカーのように、クルマはもはや動く「家や部屋」となるのではないか。その変化には大きなビジネスチャンスがある。無数のプレーヤーが自動運転ビジネスへの参入を目論む中、クルマや完全自動運転からかけ離れた業界であっても、生活者の価値観・意識をハブに、ターゲットと相性の良い商品・サービスを探り出すことができれば、より多様なビジネスチャンスが生まれるだろう。
※4 SCI(全国消費者パネル調査):全国15歳〜79歳の男女52,500人の消費者から、継続的に収集している日々の買い物データ。