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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

CXがサービスデザインそのものになる時代 “クリエイティブエクスペリエンス”の可能性

進化系CXの実現はどの部門の管轄か

――現状、CXはマーケティングの一環としてマーケターが担うことが多いと思いますが、進化したCXの実現をどの部門が担当するかによって成果も変わりそうです。どの部門が担当すべきでしょうか?

 難しいところですね。CMO以外に、システムやテクノロジーも大いに関係するのでCIOやCTOが担う場合もあるでしょうし、最近はCCO(Chief Customer Officer)、CXO(Chief Experience Officer)という役職も耳にします。

 企業によって正解は異なると思いますが、考える観点としては企業のデジタルマチュリティと、提供する価値の2つがあると思います。企業内のデジタル化が進んでいないなら、CTOなどが率いるのは難しいかもしれません。また提供価値がサービス寄り、たとえばホテルやエアラインなどのホスピタリティ系なら、顧客の評価を総合的に考えられる部門が担うべきでしょう。提供価値が製品ハード寄りならば、既存の製品を踏まえてそこにどのようなサービスをアドオンするかというサービス化の発想が必要になるので、開発とマーケティングが協力して担うということになるかもしれません。

――このレポートと同時期に、御社が所属する電通イージス・ネットワークから別途1,000名のCMOに対して実施した調査「CMO Survey2019」が発表されました。得丸さんのブログでも解説されていましたが、短期的成果と長期のビジネス転換とのはざまで苦悩することに触れられていました。

 CXを誰が担うのか、の話にも関連しますが、そもそも短期的なセールスやレベニューを追うことと、長期的な関係構築を踏まえたCX設計は、相反する視点が求められます。今回は、両方のミッションを背負って苦労している様子が浮かび上がりました。システム投資はもともと長期的な視点に立って行われるので、その点でCTOやCIOはマッチする部分があると思います。

前例がないことを発想するのが人の強み

――レポートではIsobar Globalが手がけた案件がクリエイティブエクスペリエンス実現の例として挙げられていましたが、他に得丸さんから見て好例はありますか?日本ではどうでしょうか。

 そうですね、AppleやAmazonはテクノロジーの“当たり前”を引き上げただけでなく、クリエイティビティによってCXに独自性が生まれていると思います。あるいは少し違うカテゴリーですがディズニーランドなども、人の感じ方や自然な動きなどを含めて包括的なCXを実現し、体験の期待値を上げています。日本でいうと、LINEは好例だろうと思います。“既読”やスタンプの仕組みは当初のユニークな体験から、今やすっかり定着し、そのような仕組みがない海外のメッセージサービスだと物足りなく感じます。

 ところで、先のCX調査でCXの責任を持つのは誰かという問いに「CEOの責任だ」と答えた人がいちばん多かったのが日本でした。これはまさに、ボトムアップとトップダウンの間でなかなか立ち位置を決めにくいミドルの悩みが表れていると感じます。日本において、CXをテクノロジー面から追求するだけでなくクリエイティビティも発揮させてよりよい体験や新しい体験を提供するには、複数の部門を跨いだ意思決定が必要ですし、単に部署名を変えたり責任を持たせたりするだけではない、組織的な構造転換と権限委譲が必要かと思います。

――では、テクノロジーやデータの扱いを含めて、進化したCXを構築する際に考えるべき点をうかがえますか?

 先ほど、CXをどの部門が担うかは「自社の提供価値」によると述べましたが、CX自体を見直すのも、まずここに立ち返ることが大事です。今までも、モノの購入の先に何らかの“ほしい体験”があったわけなので、業種を問わず、顧客に期待されている本質的な価値は何かを改めてつかむことが重要だと思います。

 加えてIoTの発展を踏まえると、購入後の継続使用やその満足度などもデータで把握できますよね。これもCX重視のトレンドを加速させている要素のひとつですが、購入後の体験も含めて長期的な視点が欠かせなくなっています。併せてデータの観点からは、今後ますます個人情報の扱いが厳しくなるので、データを預かって何を返せるのか、ベネフィットの明確化と説明責任を果たした上で取得するデータの種類を決めることがポイントになるでしょう。

 CXに限らず、前例がないものを機械が生み出すことは難しいので、そこをクリエイティビティをもって切り開くことが人間が機械に勝る数少ない領域になっていくと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2020/02/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/32915

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