続々登場する新技術、だが根本的な解決になっていない
もちろん、Cookieに代わる様々な技術も出てきている。たとえば、端末に固有のIDを使う技術、様々な情報を掛け合わせてユーザーを推測する「フィンガープリンティング」と呼ばれる技術、各社が独自に設定する固有のIDなどである。だが、「“アンチCookie”に対抗する技術にはなり得るものの、プライバシー保護という観点では根本的な対策になっていないのでは」と吉本氏は懸念を示す。
また、Googleは昨年8月、3rd Party Cookieのサポートを2年以内に終了し、それに代わるものとして「プライバシーサンドボックス」という構想を発表している。同社の広告売上は、売上全体の約85%を占めており、広告の利便性とプライバシー保護の両立は重要課題だ。プライバシーサンドボックスは、Cookieの代わりにプライバシー保護APIを使い、コンバージョン計測やターゲティング等の機能が予定されており、まだ開発中の段階。年内に試験導入されるとみられる。
マーケターが今、備えるべきこと
プライバシー保護やCookie関連の規制強化は、今まさに進行中だ。次にどの技術に置き換わるのかも不明なまま、規制の影響は既に出始めている。このような不安定な状況の中で、マーケティング担当者が備えるべき2点を吉本氏は示す。
データの透明性を確保する
まず1点目が、マーケティングで扱うユーザーデータについて、事業者側でしっかりと透明性を確保していくこと。取得したデータを何に使うのか、使われたくない場合にはどのように無効化(オプトアウト)できるのかを、プライバシーポリシーや利用規約に明確に示すべきだという。
外部の第三者も含めてユーザーデータを使う場合には、その点もしっかりとユーザーから同意を取得する必要がある。海外では同意管理プラットフォーム(CMP)が一般化してきており、「今年の後半にかけて、日本国内でもCMPへの注目度が上がってくるのではないか」と吉本氏は予測する。
インフラを整備する
2点目が、Cookie規制に左右されないマーケティングインフラを整えることだ。「影響を受けにくい自社データを主軸としたマーケティングインフラの構築が、急務になってくる」と吉本氏はみている。
たとえばイルグルムのマーケティング効果測定プラットフォーム「アドエビス」では、CNAMEトラッキングという計測方式で1st party Cookieとして効果を測定できる(※)。自社ドメインを使って自社データとして計測することで、3rd party Cookieを使わずにコンバージョンを測定することが可能だ。
(※)1st party Cookieには、Javascript処理による付与と、httpヘッダーによる付与と2種類の方式あり、Javascript処理による付与方式では、ITPに実装されているCookie保管期間の制限がかかる。CNAMEトラッキングでの計測では、自社サイトと同様のhttpヘッダーによる付与方式となり、ITPのCookie保管期間の制限がかからない。
効果測定のブラックボックス化に何とか対応できないかというニーズが高まっており、CNAMEトラッキングをリリースしてから半年ほどで既に400社ほどに導入されたという。
Cookieは「使っていない企業を探すほうが難しいほど、一般化している技術」と吉本氏。「自社にどのような影響を及ぼすと考えられるか、まずは棚卸しすることが大切」と呼びかけ、講演を結んだ。