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セプテーニが最優秀賞、オレオが選んだ「LINEを活用したPlayfulな体験」とは?

 2020年2月、昨年に続きLINE主催のパートナー企業向けプランニングコンテスト「LINE Planning Contest 2020」が開催された。同コンテストで最優秀賞を受賞した株式会社セプテーニ(以下、セプテーニ)と、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)を提供したモンデリーズ・ジャパン株式会社(以下、モンデリーズ・ジャパン)へのインタビューを通し、ブランド価値の向上につながる企画発想の裏側に迫る。

LINEのサービスを活用し、企業と生活者とのコミュニケーション課題を解決

 「LINE Planning Contest 2020」は、LINEのサービスを活用して「企業と生活者とのコミュニケーション課題を解決する」ためのアイデアを幅広く募集するパートナー企業向けのプランニングコンテストだ。

 昨年に続き2回目の開催となる今回は、モンデリーズ・ジャパンと三井住友カード株式会社がRFPを提供。21社から計41チームの応募があり、1次選考を通過した10チームが最終選考に臨んだ。結果、最優秀賞はモンデリーズ・ジャパンのビスケットブランド「OREO(オレオ)」に対する企画提案を行ったセプテーニが受賞。優秀賞と特別賞は、三井住友カードについて提案した株式会社電通テック、電通アイソバー株式会社がそれぞれ受賞した。

 最優秀賞を受賞したセプテーニのチームメンバーは4人。チームを率いた西原裕史郎氏は、「課題に対して、LINEというプラットフォームの専門知識を生かすことができ、コミュニケーション戦略の策定から企画、クリエイティブ開発まで一気通貫で行えるメンバー体制で臨んだため、セプテーニとしての強みを活かせた。年齢も幅広く、オレオのターゲットとなる世代もメンバーに含まれていた」と振り返る。

最優秀賞を受賞したセプテーニのチームメンバー(左から)クリエイティブ本部 ソリューション部 岡井虹樹氏メディア本部 セールスプロモーション部 マネージャー 今西洋平氏クリエイティブ本部 ディレクション部 チーフディレクター/エキスパート 西原裕史郎氏メディア本部 セールスプロモーション部 コンサルタント 上田愛実氏
最優秀賞を受賞したセプテーニのチームメンバー
(左から)クリエイティブ本部 ソリューション部 岡井虹樹氏
メディア本部 セールスプロモーション部 マネージャー 今西洋平氏
クリエイティブ本部 ディレクション部 チーフディレクター/エキスパート 西原裕史郎氏
メディア本部 セールスプロモーション部 コンサルタント 上田愛実氏

オレオを“習慣的”に食べてもらうための企画アイデアとして “遊び心”を重視

 セプテーニが挑んだのは、世界的なビスケットブランド「オレオ」のPlayfulな(遊び心に溢れた)特徴を伝え、日常的に“楽しみながら”食べてもらう習慣を醸成するためのコミュニケーションプランだった。

 RFPを提供した背景について、モンデリーズ・ジャパンのマーケティング本部 マーケティングマネジャー兼デジタル&Eコマース統括マネジャーの葭山浩史氏は次のように解説する。

RFPを提供したモンデリーズ・ジャパン マーケティング本部 マーケティングマネジャー兼デジタル&Eコマース統括マネジャーの葭山浩史氏
RFPを提供したモンデリーズ・ジャパン
マーケティング本部 マーケティングマネジャー兼デジタル&Eコマース統括マネジャーの葭山浩史氏

葭山:オレオは、世界100ヵ国以上で親しまれているロングセラーブランドです。近年は「Stay Playful」という世界共通のメッセージを発信していますが、これにはブランドとして生活者に「遊び心あふれるおやつ時間・おやつ体験を提供したい」という思いが込められています。現在、日本市場で「オレオ」の認知率はほぼ100%に近いものの、オレオを食べる“習慣”は根付いておらず、近年の課題として認識していました。そこで、「ミレニアル世代の家族にオレオクッキーの喫食をPlayfulに感じてもらい、その体験が習慣になるような企画」を募集しました。

「家族が集まり、オレオを囲む」が実現できるアイデア

 そんなRFPに対し、セプテーニはミレニアル家族にとって身近なツールであるLINEを活用し、オレオを食べながら謎解きを楽しんでもらう企画を提案した。チームメンバーの西原裕史郎氏、岡井虹樹氏は企画のポイントを次のように語る。

西原:オレオのLINE公式アカウントを開設し、そこから出されるさまざまな謎に家族で協力して答えていく仕掛けになっています。「謎」に答えるためには、手元にオレオを置いておく必要があり、「Playfulな喫食」を表現しました。自然とリビングやダイニングテーブルなど家族が集まる場にオレオが置かれ、さらなる購買にもつながる仕組みを考えました。

岡井:クリエイティブを担当していますが、普段から企画を考える時は好きなゲームや動画など、身近なところから発想を得ています。今回のアイデアも、実は社内で活動している「謎解きサークル」がひとつのきっかけでした。仕事の後、サークルのメンバーで謎解きや脱出イベントに参加しますが、そうした活動が今回の企画に反映されています。子どもだけでなく、大人も一緒に楽しめるというヒントがそこにはありました。

最新機能を駆使して、クオリティー&実現性を高める

 また、企画を論じる場では、常にオレオを手元に置いてミーティングを行った。商品を手にとり、目で見て、食べながらイメージを膨らませることで、様々なアイデアが生まれたという。加えて、チーム内に商品のターゲットである「ミレニアル家族」がいたことも、勝因の一つだったと上田愛実氏。

上田:チームメンバーの今西と西原は、まさに「ミレニアル家族」の当事者です。ターゲットが抱える課題や置かれている環境は、当事者が最も理解しています。プランを練る過程で、彼らが父親としてお子さんにどんな思いをもって接しているか、家族でオレオを食べたエピソード、日頃のコミュニケーションなどを共有してもらうことで、アイデアを具体化していきました。

西原:実際、娘・息子と一緒に、最近SNSなどで流行しているオレオアートに挑戦してみたり、普段はじっくり観察することのないオレオの表面の絵柄や手触りをじっくり楽しんだりしました。日頃からクリエイティブ開発をする上で「ユーザー体験」を大事にしていますが、この時は人生で一番オレオを食べた期間だったと思います(笑)。結果、子どもを持つ親として「知育」の要素を取り入れたいと思い、日常の中で楽しく遊びながら、学びや思考力を養える体験が提供できる企画を考えました。

今西:子どもたちが、どのようにオレオを食べるのかを観察しました。そのまま食べるのか、割って食べるのか、あるいは牛乳につけて食べるのか……。家族を観察して、企画に活かすいい機会になりました。

 また、今回の企画が特徴的だったのは、LINEの法人向けAI事業「LINE BRAIN」を活用して謎解きのクオリティーを高めたことだ。「LINE BRAIN」はチャットボットやOCR(文字認識)、音声認識など最先端の機能を備えている。

今西:私が担当する部門では、LINEを中心とした様々なプラットフォームを活用して企業と顧客のタッチポイントをデザインし、提供しています。日々生み出される最先端のテクノロジーをキャッチし、それを設計に反映して提供するノウハウがあるからこそ、オレオというブランドが持つ資産と「LINE BRAIN」の画像認識AIを組み合わせることができました。また、「LINEである必然性」も生まれ、さらに実現性の高い企画へつなげることができました。

審査員の心を動かしたポイントとは?

 コンテスト当日のプレゼンテーションでも、セプテーニは審査員へ「謎解きクイズ」を出題し、実際に企画の楽しさを体験してもらうことを意識した。葭山氏も受賞理由の一つに、当日のプレゼンテーション内容を挙げている。

当日のプレゼンテーションの様子
当日のプレゼンテーションの様子

葭山:引き込まれるようなプレゼンテーションで、謎解きクイズも楽しませていただきました。そしてなにより、「この企画を通じてオレオが生活者に提供できる価値は何か、生活者がこの企画に魅力を感じる理由は何か」が明確でした。また、LINEだからこそ実現できる方法でメカニズムも上手く組まれており、今回のRFPに対応する企画としてバランスの良さが飛び抜けていました

 最後に、今回のコンテストに参加した意義について、葭山氏とセプテーニのメンバーは以下のように振り返った。

葭山:これから先も、オレオが「Playful」な価値を提供、発信していくことはおそらく変わりません。しかし、そのメッセージを伝える手法には、様々な可能性があることを発見することができました。多くのチームからの提案を拝見し、私自身が「学び直し」のきっかけをいただいたような気がしています

西原:LINEチケットやLINEチラシなど、様々なソリューションに触れ、LINEというプラットフォームを深く知ることができました。これからはセプテーニの強みである「高品質な広告運用」、「業界最高水準のクリエイティブワーク」だけでなく、LINE Biz Partner ProgramのPlanning Partnerとして「ユーザーとの継続的なコミュニケーション施策設計」においても多くのお客様のお役に立てると思います

今西:生活インフラとして定着しているLINEですが、友人や家族とのコミュニケーションツールという側面だけでなく、企業にとってユーザーにアプローチする手法が無限に広がるプラットフォームであると認識しています。今後はPlanning Partnerとして、最先端のテクノロジーを活用し、顧客の持つ商品やサービスが持つ価値、顧客体験をユーザーに届けていきます。

上田:一方的な広告コミュニケーションだけではなく、インタラクティブな活用方法がたくさんあるというLINEが持つ可能性を感じています。今後はより一層発想力を磨き、幅広い提案を実現していきたいです。

岡井:私のような若手もチャレンジできる場を提供していただけたことが、とても嬉しかったです。普段は聞くことができない他社の企画アイデアやプレゼンに触れることで、たくさんの刺激と新しい発見がありました。

 企業とユーザーとのコミュニケーションをより豊かなものにするため、各社が腕を競い合い、高め合う場となった「LINE Planning Contest 2020」。優秀賞を受賞した電通テック、特別賞を受賞した電通アイソバーもそれぞれ次のようにコメントしている。

電通テック

 普段から業務としてLINEに携わっているメンバーに加え、プロモーション領域全般のプランニングやOMO・DXに携わるメンバーでチームを結成しました。エスカレーターのマナー問題という社会課題を切り口に、三井住友カードならではのキャッシュレスの価値を訴求し、そのメッセージの表現方法としてLINEを活用する企画です。

優秀賞を受賞した電通テックのチームメンバー(左から)プラットフォーマー・ビジネス企画部 マーケティングテクノロジスト/プランナー 左奈田佑氏UVデザインプランニング2部 プランナー 荻原大樹氏プラットフォーマー・ビジネス企画部 ディレクター 望月悠未氏UVデザインプランニング1部 アートディレクター/デザイナー 狩野史帆氏(本人不在)エンゲージプロモーション2部 ディレクター 渡辺香志氏(本人不在)
優秀賞を受賞した電通テックのチームメンバー
(左から)プラットフォーマー・ビジネス企画部 マーケティングテクノロジスト/プランナー 左奈田佑氏
UVデザインプランニング2部 プランナー 荻原大樹氏
プラットフォーマー・ビジネス企画部 ディレクター 望月悠未氏
UVデザインプランニング1部 アートディレクター/デザイナー 狩野史帆氏(本人不在)
エンゲージプロモーション2部 ディレクター 渡辺香志氏(本人不在)

 LINEの活用を前提でプランニングを行う際、全てをLINEで完結させる方向にとらわれてしまいがちですが、世の中への拡散性を考慮した際、オフラインからLINEまでを一貫して考えていく重要性を感じました。普段は他社チームの企画やプレゼンテーションを拝見する機会もあまりないため、自分たちには無い視点や特色のある提案など、多くの刺激を受けることができた貴重な経験となりました。

電通アイソバー

 主にプランニングとクリエイティブ領域のメンバー編成です。今回は『マネーリテラシーだけでなく、自身の成長につながる』ことをコンセプトに、若年層に対して三井住友カードの認知獲得から利用までを、LINE上で一貫して行えるような企画を提案しました。一方でLINEだけに縛られず、インフルエンサー起用やリアルイベントなどの要素も提案に盛り込み、ユーザー中心のコミュニケーションプランが実現できたと思っています。

特別賞を受賞した電通アイソバーのチームメンバー(左から)エクスペリエンスデザイン本部 エクスペリエンスプランニング部 プランニング ディレクター 神澤由利氏エクスペリエンスデザイン本部  コミュニティデザイン部 シニア コミュニケーション デザイナー  荻野好美氏エクスペリエンスデザイン本部  コミュニティデザイン部 シニア コミュニケーション デザイナー  チェ・ジョンウン氏エクスペリエンスデザイン本部    クリエーティブ部   アート ディレクター  中川寿子氏
特別賞を受賞した電通アイソバーのチームメンバー
(左から)エクスペリエンスデザイン本部 エクスペリエンスプランニング部 プランニング ディレクター 神澤由利氏
エクスペリエンスデザイン本部 コミュニティデザイン部 シニア コミュニケーション デザイナー 荻野好美氏
エクスペリエンスデザイン本部 コミュニティデザイン部 シニア コミュニケーション デザイナー チェ・ジョンウン氏
エクスペリエンスデザイン本部 クリエーティブ部 アート ディレクター 中川寿子氏

 当日は各社のプレゼンテーションを目の当たりにして、興味を持って拝見すると同時に良い刺激を得ることができました。また、クライアント各社との関わり方も通常の出会い方とは異なり、とても新鮮に感じました。昨年も参加したメンバーがいますが、提案内容のレベルは全体的に高くなっていたと思います。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/01 16:52 https://markezine.jp/article/detail/33531