グローバルな仕事から「リモートが当たり前」に
――大学在学中にmonopoを設立されたそうですね。その経緯や、貴社のビジョンについてお教えください。
佐々木:私たちは世界中のクリエイターとコミュニティを作り、グローバルに共創するクリエイティブカンパニーです。大学4年生だった2011年に、音楽サークルの一つ先輩だった岡田と立ち上げたのが始まりです。
周りにいる天才的なアーティストたちに仕事をアサインしたり、イベントを主催・協賛を募ったりするところからビジネスをスタートさせ、次第にウェブサイトの制作や統合的なマーケティングキャンペーンを引き受けていくようになりました。
掲げているビジョンは「A BRAND OF COLLECTIVE CREATIVITY」というものです。才能ある個人がクリエイティビティを最大限に発揮できるようコミュニティ化し、活躍のチャンスを広げていくことを目指しています。
――リモートによるクリエイティブ制作を始めたきっかけは?
佐々木:海外のクリエイターを集めて自社プロジェクトである『poweredby.tokyo』というライフスタイルメディアを制作・編集したことが大きなきっかけになりました。東京に住む外国の方目線で、東京の情報をスタイリッシュに発信してもらうことで、東京の新たなブランディングを確立したいと思ったのです。
以来、海外のクリエイターによる社員応募が増え、社内の公用語が英語やフランス語になりました。そして世界各国のクライアントから問い合わせが来るように。そのうち、海外のクライアントやクリエイターとリモート制作を行うようになりました。
2019年に立ち上げたmonopo Londonでは発注から納品まで一度もクライアントと顔を合わせないことも多いですよ。
――そもそもクリエイティブ制作をリモートで行うことは可能なのでしょうか。
佐々木:できます。事実、私たちはもう4年もリモート制作を行っていますから。海外のクライアントの場合は立ち会いなしに、リモートで試写をやるのは当たり前でしたし、アメリカのクライアントとブランドサイトを制作した時も、制作拠点・クライアント拠点を合わせると全4都市が完全リモートで、一度も会わずに製作を行いました。プロジェクトが終わった後、ヨーロッパのデザインウィークで初めて会って「Finally!(やっと会えたね!)」なんてハグする。私たちにとっては、そんなことが当たり前です。
実は海外においてリモート制作は比較的よくあること。そろそろ日本もそういう制作スタイルがあってもいいと思います。
コロナ禍で制作を断念したプロジェクトを助けたい
――御社では、2020年4月17日に新たなソリューション「Remote Native」をリリースされたとうかがいました。なぜ始めたのでしょうか。
佐々木: コロナの影響が出始めた頃、クライアントにアンケートを採ったところ、53.6%の企業がコロナの影響でクリエイティブ制作を断念したそうなんです。その理由の多くは「感染リスク」によるもの。ならばこれまで培ってきたグローバルなアーティストとリモート制作するノウハウを、役立てたいと考えました。今までの制作方法はできないと嘆くのではなく、「新しい生活様式」に適応した制作スタイルを模索したいと考えました。
――リモート制作を支えるmonopoのバックグラウンドは?
佐々木:国際色豊かでマルチスキルを持ったメンバーたちです。実は今、当社の社員の4~5割が外国の方か、外国にルーツを持つ方々です。社員は24名、インターンを含めても従業員数は29名にもかかわらず、ルーツは10ヵ国。そして8ヵ国語に対応しています。長い間日本で暮らしている英語ネイティブが多いので、グローバルな発想を持ちながら、日本人のインサイトもよく理解してくれます。
佐々木:プロデューサーの半数がエンジニアとしての素地があることも、リモート制作の助けになっています。クリエイターがみんなマルチスキルを持っていて、プロデューサーはプログラムのコードを書けるし、デザイナーはムービーを作れる。コピーライターがプランニングもできる。するとコストを抑えられますし、スピーディーに形にできます。
一緒に仕事をしている「コラボレーター」と呼ばれる外部のクリエイターも、世界中に700名ほどいます。たとえば、明日フランスで撮影がしたいと思ったら、現地のカメラマンに依頼すればすぐ実現できます。これは強いと思いますね。