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定期誌『MarkeZine』特集

アドテクが向かう先は危機ではなくチャンス

企業視点の捉え方から“私の”データへの復権

――インターネットの設計思想に照らし合わせれば、あるべき方向性と言えるのですね。一方で、データ活用の在り方に関する議論が、ここへきて急浮上したような印象もあります。

 それは、たまたま日本で広く一般の方々が個人情報の問題を認識し始めたのが2018年ごろで、それが2020年の個人情報保護法改正法案の決定につながった、ということだと思います。この問題はグローバルでは既に顕在化し、議論が重ねられていました。GDPR(EU一般データ保護規則)は2018年施行ですが、それに先立って「MyData.org」という団体が2013年ごろからロビー活動を続けていました。“マイデータ”には、パーソナルデータというそれまでの主流の呼び名は企業視点の言葉であり、個人視点では本来“私の”データであるという主張が込められています。

 また、こうした流れを知るのと合わせて、そもそも「倫理とは変わっていくものだ」と理解することも大事だと思っています。極端な例ですが、1,000年前は奴隷制度が当たり前だったわけですよね。でも、今そんなことを支持すると言ったら人格を疑われます。社会的倫理や道徳は、常に更新されていくものです。変わらない“正しさ”は、あり得ない。アドテクが登場し、次第にCookieが事業者側に便利に使われるようになったその当時は、社会風潮的に個人情報の扱いにあまり慎重になる必要がなかったかもしれません。しかし、今や時代が変わりました。当時の感覚を引きずって「今までのやり方で問題ない」「今までどおりにできないと困る」とわめいていては、足を引っ張る存在になるだけです。

 たとえば、私が以前所属していたGoogleのミッションは、世界中の情報を整理してすべての人々にアクセス可能にし、使えるようにすることです。そのためには毎日、あるいは毎時間毎分、リアルタイムで世界中のサイトをクロールし、たった今加わったものも含めて最新の状態をユーザーに提示できなければいけない。今、このデータ更新はAIがやっているわけですが、検索エンジンの前の時代は手動で、煩雑でした。検索エンジンの前の時代、1990年代後半は、検索ディレクトリーというのがあって手動で更新していたのです。あるとき誰かが「更新は3日おきでいいんじゃない?」と言ったら、「それは倫理に反するよね」という議論になったのです。「お寿司屋さんが新鮮なネタを仕入れて出すのと同じ。古い食材を提供するのは倫理に反するよね」と。それと同じです。世界中で日々新しい情報が出てくるので、それに合わせて更新していく。これがGoogleのミッションに沿うということであり、倫理的ということなんです。

 そして個人情報の課題が出てきて、社会的倫理が書き換わったとき、Googleのミッションの文言は変わらずとも、その発露や具現化の方法は変わります。つまり、企業の倫理もビジネスモデルも、世界の新しい倫理観に合わせて変わっていって然るべきで、変わらないと生き残れない。情報に関する倫理観が変われば、情報を扱う方法も変わるし、ビジネスモデルも変わるかもしれないのです。つまり、コンテンツとしての情報を更新するのと同じように、倫理観やモデルも更新していくべきということだと思います。

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ファーストパーティデータを取得していないのは甘え

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 09:33 https://markezine.jp/article/detail/34593

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