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「売れる店舗づくり」を支える、水上印刷が導く店頭販促オペレーションのDX/人件費4.5億円削減実績も

 ポップやポスターなどの販促物は、商品購入の決め手になる大事な情報提供ツールだ。しかし、設置・撤去に人手を要するなど課題は多い。そうした印刷物の周辺に発生する様々な課題をデジタルの力で解決しているのが、水上印刷だ。コロナ禍の影響で急務となっている、店頭販促におけるDXの課題と解決の道筋について、水上印刷の松尾力氏に聞いた。

業務負荷が大きい店頭販促、根本的な解決策とは

 昨今、様々な業種業態でDXが叫ばれるようになっている。たとえば、一般的なコンビニ1店舗あたりの商品数は約2,500アイテムとされており、新商品やキャンペーンに付随して、様々な販促物が発生する(参照データ)。特に人手不足に悩む小売業の店頭販促に関しては、これまでのような人力での対処から脱却し、デジタルでいかにオペレーションを効率化していくかが、重要視されている。

 「販促物は商品の売上に貢献する一方で、本部やメーカーさんから送られてくるものをすべて設置しようとすると、売り場が情報過多になってしまい、本当に売りたい商品が目立たなくなり、逆効果になってしまいます」と、水上印刷の松尾氏は、問題点を指摘する。

水上印刷 マーケティング部 課長 松尾 力氏
水上印刷株式会社 マーケティングディレクター 松尾 力氏
京都大学法学部卒業後、経済産業省にて中小企業支援、福島復興支援、ASEAN貿易交渉などに従事。水上印刷へ参画後は、ICT部門の立ち上げやコンサルティング部門の立ち上げなどを行い、構造不況と言われる印刷業界にて売上高2倍の成長を牽引。現在はマーケティング責任者として、チームの立ち上げ及びマーケティング業務全般を担当している。

 「売り上げの良い店舗ほど、届いた販促物の中から注力するものを取捨選択しています。ただ、何を設置するかの選定作業に加えて、取り付けや撤去、廃棄にも、膨大なリソースがかかっており、現場の大きな課題となっています。 

 昨今は、SNSやWeb広告などを使って、店外でもお客様に情報提供ができるようになっています。そのなかで、『店舗で、どんな情報を提供して、どういった買い物体験をしていただくか』を、店内・店外、アナログ・デジタルをトータルで考えていく必要があります」(松尾氏)

 実際、人口減少で労働人口が減り続ける中、店舗の業務負担を減らすことはどの企業にとっても重要な課題となっている。さらには昨今のコロナ禍で、その解決がいよいよ急務となっている。同時にSDGsの観点からも、環境負荷に対する関心も高まり、無駄になってしまう販促物を作らないという視点も重視されている。

 「最近では無駄なものをいかに作らないかということも、重視されるようになってきています。我々は、そうした印刷物の周辺に発生する様々な課題をデジタルの力で解決しています」(松尾氏)

「店舗」「本部」「メーカー」3者に及ぶ効率化のインパクト

 では実際、水上印刷ではどのように店頭販促の効率化を支援しているのだろうか。そもそも、販促物を取り巻く課題は立場により異なる。「店舗」にしてみれば、色々な販促物がバラバラと送られてくるので、受け取りや開梱、販促物の選定や設置にいちいち手間がかかるという実情がある。また、せっかく送られてきた販促物でも棚や什器のサイズに合わず設置されないという例も多い。

 一方「本部」や「メーカー」にしてみれば、販促物をきちんと設置して欲しいという思いがあるが、各店舗の棚や什器のサイズ、必要数量に合わせて販促物を作り分けるのは非常に手間がかかる。そもそも棚や什器サイズ、店舗の立地やサイズなどの情報を一元的に管理していないため、作り分けようにも作り分けができないというケースも多い。また、販促物を各メーカーや本部が別々に送るとなると、配送費もかさんでくる。

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 水上印刷ではこうした課題に対応するため、販促物の展開期間・数量・仕様などの「販促物データベース」と、店舗の住所や店内の棚情報などの「店舗データベース」を構築。後者のデータベースには、什器のサイズや窓の枚数まで蓄積されているという。さらにデータベースの情報は、同社のスタッフが専属チームとして、顧客からのメール・電話・FAXなどから収集しリアルタイムに更新し、常に高い精度を保っている。

 「販促物と店舗のデータベースを組み合わせることで、店舗に必要な販促物を必要な数だけ送ることが可能になりました。また、自社で企画・デザインから印刷、配送まで一括で行うことで、リードタイムを大幅に縮めることができ、急に決まったキャンペーンなどにも柔軟に対応可能です」(松尾氏)

店舗スタッフから見た視点で、作業効率化を促進

 実際の店頭販促のオペレーションには、どんな課題があるのだろうか。これについて、「従来、ポップやポスターなどの販促物は、異なる売り場のアイテムが一括りで梱包されていたため、店舗スタッフは店内を何度も往復して販促物を取り付けていました。加えて、販促物を掲出した後には、適切なタイミングで取り外す必要があります。一つひとつチェックしながら回収するのは人的リソースがかかり、またミスも発生しがちでした」と松尾氏は答える。

 これらの課題解決に向けて、「店舗での販促物を取り付ける業務負荷を削減するために、売り場や棚順ごとに販促物を梱包して配送しています」と松尾氏。このきめ細かな仕組みにより、店舗スタッフは店内を往復することなく販促物を設置でき、ここも店舗業務の効率化に大きく貢献しているという。

 さらに店舗スタッフの作業効率化のため行っていることとして、「細かいことですが、たとえばポップに商品照合用の画像や、撤去作業用のカラーバーを入れています。たとえば『今週はピンクのカラーバーのポップだけを外す』とルールを定めることで、作業効率が上がりミスが起こりにくくなります。昨今、増加している外国人の店舗スタッフの方にとっても、ポップなどの裏側に商品写真を入れることで、日本語が読めなくても、ポップと商品の紐付けが容易にできるようにしています」と説明。

 現場の課題とその背景を同社が深く理解しているからこそ、きめ細かな配慮が行き届いた解決案を提示できるのだろう。

「ポップのサイズ最適化で売り上げが2.4倍」という検証結果も

 先のような細かな店頭販促の課題を、水上印刷ではどのようにキャッチしているのだろうか。実は水上印刷は、実証店舗という位置付けで、コンビニ店舗を自ら経営しているのだ。

 「社内の担当者が実際にそこで働き、どういう業務負荷があるのか、どんな苦労があるのかということを検証しているんです。メーカーさんから送られてきた販促物のサイズが合わず、店内に設置することが難しいことも少なくなくありません。ただ、こうしたことをテストできる場は意外とないんですよね。そもそも本部とメーカーさん、どちらが確認すべきなのか、担当も曖昧で、誰も入り込めない領域になっていました」と松尾氏は語る。この店舗での気づきが、水上印刷のかゆいところに手が届くサービス立案に結びついている。 

 また、この実証店舗では、販促物の効果測定も行っているという。たとえば、どのサイズの什器にも設置できる汎用的な販促物にすると小さくなってしまうが、アイスクリームのコーナーのポップを什器のサイズに合わせた大きさのものと入れ替えたところ、1週間で売り上げが2.4倍になったという。「もちろん気候など他の要因もあると思いますが、サイズを最適化することで一定の効果があることがわかっています」と松尾氏。

 
什器のサイズに販促物を合わせることで、販促効果の拡大が見込まれる

大手コンビニでは4.5億円の人件費削減に

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、改めて店舗の価値が問われている。今後、小売業界はどのように変化していくべきなのだろうか。この問いに対し、松尾氏は「たとえば同じコンビニでも、オフィス街の店舗と駅前の店舗、郊外のロードサイドにある店舗では、利用者が店舗に求める目的は異なりますよね。チェーン店においては全店舗が『同じであること』に価値があった時代もありましたが、今はそれぞれの店舗が、それぞれの商圏でどんな売り方をしていくか戦略を持つべき時代になってきていると感じます」という。

 水上印刷では現在、大手コンビニチェーンの販促物におけるオペレーションの効率化を支援している。その成果について、「販促物の発送・製造を弊社で集約することで、配送・製造コストを約20%カットできています」と松尾氏。

 同時に、従来、販促物の取り付けと取り外しに1店舗あたり毎週1.5時間ほどかかっていた時間が、先に紹介した水上印刷の支援により、約30分の短縮につながったという。年換算で人件費が4.5億円削減できている計算となり、そのインパクトはすさまじい。「この浮いた時間で店舗は本業に集中することもできるし、売れる店舗づくりのための時間に投資できます」と松尾氏は力強く語る。

 「チェーン店舗として求められる機能を担保しつつ、店舗の個性を出す、そのバランスが大切です。店頭販促の業務負担を軽減して生み出された時間を、各店舗のオリジナリティを出す戦略づくりに投下していただきたいです」(松尾氏)

小売店も商圏ごとに戦略を持つべき時代に

 コンビニに限らず、どんな小売店でも、デジタルやリアル問わず、顧客と深くつながり、ライフタイムバリューを上げていく経営が重視されている。そのような環境下では、店舗しか提供できない価値やコミュニケーションが何かを、突き詰めていくことが差別化のポイントとなる。

 ショールーミングのように、単純に購入前に現物を見たいというニーズもあるが、それはWebでも事足りるだろう。やはり、「それまで知らなかった商品との驚くような出会いがあったり、お店での買い物自体の楽しさ、そしてWebではできない体験や情報を提供することが、ますます価値を持つでしょう」と松尾氏。

 リアルの世界をデジタルでいかに良くしていくか。店舗におけるDXは、リアルな店舗の課題と現状を知り尽くした人でなければ、その実行は難しい。現場の目線、現場からの気づきをどう解決するかという目線でデジタルを活用できるかが、店舗のDXを推進するための鍵である。

 「『デジタル×リアル』というのはまさに我々が得意な分野。店舗での販促や業務改善といったリアルな課題をデジタルの力で解決していき、ひいてはリアル店舗の『付加価値』を極限まで高めていく。そういったサポートを今後も続けていきたいと思っています」と松尾氏は力強く語る。

 店舗のDXは、自社だけで解決することが難しく、知見を持つパートナーの力が不可欠だ。きめ細かな配慮が行き届いたサービスにより、「店舗」「本部」「メーカー」の課題をwin-win-winで解決してきた水上印刷。「売れる店舗づくり」の戦略策定・実行に時間を投資するために、「コスト削減」「業務負荷の削減」に悩む小売企業にとって、店舗のDXを推進する強力なパートナーとなるだろう。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/15 11:41 https://markezine.jp/article/detail/35101