現場で生まれるリアルなコンテンツが強み
顧客の声を聞いて、それを実現する手法をPelotonは持っている。トレセダー氏が「Pelotonはテクノロジー企業であると同時にコンテンツ・メディア企業である」と言うように、リアルな健康・ウェルネスコンテンツを作ることができるのだ。
台本などはないリアルな場において、優秀なインストラクターたちが毎日バイクやトレッド、マットの上でコミュニケーションを取りながら作り出す。このリアルなコンテンツこそが、ブランドメッセージをパワフルに発信できる差別化要素なのだ。
ブルームバーグが2021年1月に掲載した記事では「More-senior instructors make upwards of $500,000 in total compensation.(Pelotonのシニアインストラクターの総報酬は50万ドルを超える)」と書かれており、驚くとともに納得もした(出典:Bloomberg Businessweek「Peloton Moves Into Breakaway Mode to Secure Its Sudden Dominance」)。デジタルは模倣困難性が高いものではないことを熟知しており、差別化となるコンテンツやそれを作れる人への投資を怠らないのだ。
マーケティングの中のデジタル活用へ
トレセダー氏は「1st Partyは絶対に参加しなくちゃいけないパーティーよ」と冗談まじりに言ってから、次のように語った。
「1st Party データは、顧客との信頼関係を築き、安心して提供してもらう情報。その情報を基に付加価値となる体験を提供すれば、相互に有益な関係を築くことができる。従来のデジタル広告は顧客の生活の邪魔をしていた。顧客と生活に割り込むのでなく、会話する必要がある」
これら3つの先進的な事例は、DX・CX・EXが互いに切り離せない存在だと明らかにしている。Cookieless時代の到来とは関係なく、「デジタルマーケティング」を捨て、「マーケティングの中のデジタル活用」に全社一丸となって向かわなければいけないということであろう。
Adobeは「Adobe Experience Cloud」を提供することで、その実現方法を示してくれた。「コンテンツ&コマース」「データインサイト&オーディエンス(顧客理解やCDP)」「カスタマージャーニー(コミュニケーションの実行)」「ワークフローの連携」に、システムの導入が欠かせないのは事実である。企業はシステムを活用した上で、差別化要素となる自社の強みとして「顧客とのつながりや従業員の役割」を考え直す必要があるのだ。