共通の文脈を捉えた発信でユーザーを巻き込む
MZ:IMJでは今伺ったようなポイントをクライアントの支援においても意識されているのでしょうか。
IMJ:檀教授がおっしゃるベースに相当する要素として、弊社ではSNS上の「共通の文脈」を特に意識しています。具体的には、ユーザーが共通して持つ記憶や知識のほか、同じクラスタで通じる共通言語のようなものを指します。
IMJ:SNSコミュニケーションを「てこの原理」にたとえると、力点が企業の施策、作用点がユーザーの反応、そして支点が共通の文脈です。支点の置き方を考えるのが私たちの仕事の1つだと考えています。
弊社が実際に手掛けた事例の中から、共通の文脈を施策に組み込んだものを2つ紹介します。1つ目は音楽系サービスでの事例です。お客様からは「ファンと自社の架け橋になるようなコンテンツ」が期待されていたので、まずは音楽ファンがSNS上でどのような文脈で発信しているかを探りました。そして「推しのアーティストを応援したい」「推しの存在を多くの人に広めていきたい」というインサイト=共通の文脈を見つけたんです。
IMJ:そこでこのインサイトを支点とし、ユーザーが推しについて発信しやすくなる投稿テンプレートを作成。盛り上がるタイミングを見計らって配布した結果、多くのユーザーからテンプレートを使っていただき、サービスに関するポジティブな会話も創出することができました。
もう1つの事例は、映画作品とのタイアップ施策です。ある作品と消費財のタイアップ企画を考案した際は、まずファンと同じ目線で作品について語れるくらい作品を読み込むことから始めました。その上でブランドと作品の接点を見つけ出し、商品のゴリ押しに陥らず、かといって作品だけのアピールにならないバランスを探っていったのです。
IMJ:最終的なアウトプットが、作品の登場人物とブランドが会話するコンテンツ。いわばタイアップという出来事を、作品の持つ世界観の延長線上に置いたような発信です。ファンの反応は好意的で、その文脈に乗っかってタイアップを応援するような会話も生まれました。企業とユーザー間で新たな共通の文脈を生み出すことができた良い事例だと捉えています。
今回紹介したのはどちらもTwitterの事例ですが、Instagramなど他のSNSにおいても同じような考え方で戦略を考えます。
MZ:各プラットフォームの文脈やターゲットの共通の文脈を網羅するとなるとかなりのボリュームになりそうですが、IMJではどのように共通の文脈を見つけ出し、支点を導き出しているのでしょうか。
IMJ:支点を見出すためには、やはりソーシャルリスニングが欠かせません。専用のツールを用いて、プラットフォームやターゲットの傾向を徹底して探ります。より詳しく探りたいときには、定量調査や定性インタビューといった手法で深掘りをすることもありますね。
またIMJにはSNS領域に特化したプランナーやディレクターが数多く在籍し、様々な業種で大手企業のSNS支援を100アカウント以上行ってきました。精鋭メンバー間で日々話題になっている投稿やトレンドを共有するだけでなく、それぞれが持つ仮説や検証結果などを相互に活用しています。
心地よいコミュニケーションに必要なのは「知的な刺激」
MZ:檀教授からご覧になって、SNSは今後どのように変化していくと思われますか。
檀:映画やテレビが誕生から20~30年を経てようやくメディアとして成熟したように、SNS上のコミュニケーションが心地よいものへと最適化されるまでにはもう少し時間がかかりそうです。ユーザーが「心地よい」「これいいね」と感じる発信を行うためには、知的な刺激によるほどよいドーパミンの放出が鍵となります。
高度な人間は学習することによって脳の報酬系が活性化され、ドーパミンを放出する。つまり人は知的な刺激によって快感を得られる生き物なのです。企業の発信においても、いかに知的に報酬系を活性化し、ほどよいドーパミンを出させるかがポイントになるのではないでしょうか。
MZ:IMJはクライアントのSNS戦略支援においてどのような価値を提供できるとお考えですか。
IMJ:檀教授のおっしゃる知的な刺激は、企業のコミュニケーションで言うところの「ブランドに関する新たな発見や深い理解」だと思います。私たちの提供できる価値は、まさにその知的な刺激をプラットフォームごとに最適化し、ユーザーにとって心地よい体験へと落とし込むことです。
たとえばマーベル映画が魅力的な世界観の中でファンに共通の文脈を作り出しているのと同様に、クライアント企業のブランドが持つ世界観自体のファンになってもらうことが理想的ではないでしょうか。そのために私たちはSNSの中でクライアントのブランドがどうしたら受け入れられるかを探り、サポートしていきます。
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