※本記事は、2022年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』74号に掲載したものです。
雑誌とオンラインメディアを統合し、サブスクモデルを開始
──ダイヤモンド社は、2019年6月から有料デジタルサービス「ダイヤモンド・プレミアム」を開始されました。主力であった雑誌「週刊ダイヤモンド」とオンラインメディア「ダイヤモンド・オンライン」のビジネスを統合する形で、サブスクリプションモデルを開始されたとのことですが、このビジネスモデルの転換にはどのような経緯や狙いがあったのでしょうか?
山口:背景にあるのは、雑誌ビジネスの凋落です。私は2017年頃からデジタル改革の社内プロジェクトに関わっていたのですが、そこで週刊誌市場の将来シミュレーションを作成したところ、現行のビジネスモデルを続けていくと、週刊誌市場は2027年に消滅するというシナリオが導き出されました。メディア環境が激変する中、紙とデジタル双方の編集部員の能力を最大化するには、「週刊ダイヤモンド」と「ダイヤモンド・オンライン」が本当の意味で融合して新たな収益モデル確立を目指すことが最善と考えるようになりました。
しかし、当時は雑誌を担う週刊ダイヤモンド編集部と、デジタルコンテンツを配信するダイヤモンド・オンライン編集部は別の局に存在していました。当然ミッションも異なり、記者集団が作るコンテンツを最大限活かして雑誌の部数を追う週刊ダイヤモンド編集部と、外部識者などのコンテンツによりPVを集め、広告収入で収益モデルを立てるダイヤモンド・オンライン編集部では追っている目標も別々でした。
2018年には2つの編集部の副編集長を兼任させてもらったのですが、異なる部署、異なるミッションではビジネスモデルの転換は不可能と悩んでいたところ、上司や上層部も同様の危機感を持っており、2019年4月に会社として編集部の統合を決断し、6月末に「ダイヤモンド・プレミアム」の立ち上げに至りました。
──編集部の統合により、コンテンツやチーム体制はどう変わったのですか?
山口:コンテンツに関しては、すべて“デジタルファースト”に変えました。雑誌発のコンテンツは既になく、現在はデジタル発で作った特集コンテンツを、雑誌用に再編集する形で展開しています。
チーム体制は、担当業界を持ち企業を深掘りする「記者チーム」、マーケットインの発想で特集を企画する「編集チーム」、外部著者と連携して独自コンテンツを配信する「デジタルチーム」の3つのチームに再編成しました。この3チームによって、会員登録なしで読めるフリーコンテンツ、無料会員向けコンテンツ、有料会員向けコンテンツという「情報の濃度」が異なる3種類のコンテンツを、バランスを見極めながら配信しています。