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ヒットを生み出すリサーチ術とは? 正しい「ターゲット」「セールスポイント」を見つける3ステップを解説

 モノがあふれ、コモディティ化が進む今、自社商品・サービスをどのように打ち出していくべきか模索する企業は多い。そんな中、電通の戦略プランナー・阿佐見綾香氏は著書『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)において、10年以上の戦略プランニング経験から得た“ヒットを生み出すリサーチノウハウ”を言語化。本稿では、阿佐見氏がヒットを生み出すために最も重要であると述べる“正しい「ターゲット」「セールスポイント」設定”と、それを見つけていくために必要な3ステップを解説する。

※本記事は、2022年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』78号に掲載したものです。

「ターゲット」と「セールスポイント」の見極めがヒットを生み出す第一歩

──本日は、阿佐見さんに「ヒットを生み出すリサーチ術」をお伺いしていきたいと思います。「モノが売れない時代」と言われている今、ヒットを生み出すには何が必要なのでしょうか?

阿佐見:最も大切なのは、正しい「ターゲット」と「セールスポイント」の2つを見つけることです。

 世の中には既にいろいろな商品があふれていて、大量生産・大量消費の時代が終わる中で、生活者は商品に対して妥協しなくなってきています。「これしかないからこれでいいや」ではなく、自分が本当にいいと思っているもの、自分にマッチしているものを、こだわって選び抜く人が増えています。こうした変化により、これまでマジョリティーと思われてきた塊の中にポンと商品を投げても、簡単には動かなくなってきました。

 とはいえ、すべてのモノが売れなくなっているわけではなく、今の時代にもヒット商品は次々と生まれ続けています。そしてそれらヒット商品を見ていくと、「ターゲット」と「セールスポイント」が正しく設定されていることがわかります。反対に、売れない商品はこの2つがズレていることが多いです。

 どの商品も何かしらの価値があると考えて作られているはずなので、それが届かない場合、まずは「ターゲット」が間違っていると考えられます。一方、届けたいターゲットをきちんと見極められているのに商品を買ってもらえないのであれば、それは「セールスポイント」が間違っているということです。訴求ポイントが違っていることもあれば、そもそも商品そのものにターゲットを動かすためのセールスポイントがない場合もあります。

 もちろんヒット商品は複合的な条件が重なって生まれるもので、様々な視点は求められるのですが、まずはターゲットとセールスポイントを明確に見極めていくところから始めると、成功に近づきやすくなると思います。

 そして、この2つを見極めていくために必要になってくるのが「リサーチ」です。

株式会社電通
第2統合ソリューション局 マーケティングプランニング部戦略プランナー
阿佐見綾香(あさみ・あやか)氏

電通入社以来、戦略プランナーとして企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電・アプリなど。大手からベンチャー・中小まで、幅広い業種・規模の企業を手掛け、リサーチで見つけたターゲットインサイトをもとにヒットをつくることを得意とする。本業の傍ら、リサーチに苦手意識がある人に寄り添ったセミナー、講演に登壇。電通のマーケティング部門にて、新入社員教育プログラム「マーケティングリサーチ研修」を担当。平均満足度は97%超。女性マーケティングチームGIRL'S GOODLAB(旧・電通ギャルラボ)、電通ダイバーシティ・ラボに参画。Forbes JAPANコラムニスト、日本経営合理化協会、宣伝会議、早稲田大学、国際女性ビジネス会議他、講演・寄稿多数。著書に『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる 調べ方の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)。持論は「LOVEのカタチが変わると消費が変わる」。

「リサーチ→仮説」ではなく、「仮説→リサーチ」の順番で

──多くのブランドは既にリサーチを活用されているかと思いますが、ヒットを生み出すために使っていくためには何かコツがあるのでしょうか。

阿佐見:そうですね、多くの企業は既にリサーチを活用していますが、「リサーチをしたものの、新規性のある結果を得られなかった/情報はたくさん得られたものの、次の打ち手が見つからない」といった悩みからリサーチの有用性を疑問視する意見を聞くこともあります。

 こういったリサーチを上手く使えていないケースで最も多いのが「とりあえずリサーチしてみよう」という始め方をすることです。私もそのやり方でたくさん失敗してきたので気持ちはすごくわかりますが、インプットしてから考えようとすると、失敗するケースが多いのです。

 もちろん、リサーチによって様々な情報をインプットしてから、咀嚼、構造化して答えを出していくという時間があるならいいのですが、多くの場合はそんな時間はありませんから、たくさん情報を集めたものの消化不良になって終わってしまうことも多いです。

 一方で、たとえばリサーチの予算もないし時間もない、今日中に提案書を作らないといけないという状況に置かれたらどうでしょうか。「調べてから考えよう」ではなく、最初から自分の頭で考えようとしますよね。これまでの経験や持っている情報、誰かから聞いた話など、自分の頭の中にあるものを組み合わせて仮の結論を1回出すと思います。

 そうやって「まず仮説を出した後に調べる」という順番にすることで、あれもこれも調べて収拾がつかなくなる事態は避けることができます。

データを漫然と見てから考えると、誰もが思いつくようなアイデアに着地しがち

──「リサーチ→仮説」ではなく、「仮説→リサーチ」の順番で取り組んでいくことが大切なのですね。

阿佐見:そもそもリサーチは、これまで気が付かなかった新たな視点や、意思決定に必要な情報をもたらしてくれるものです。しかし「仮説」のない“とりあえずリサーチ”をしてしまうと、調査しなくてもわかる結果ばかりが集まり、上手く活用することができないといった失敗につながります。一方「仮説」があれば、リサーチによって明らかにしたいことが明確になり、打ち手を見つけやすくなります。

 わかりやすい事例として、『広告マーケティング力』(誠文堂新光社)という書籍の中で紹介されているコカ・コーラの「No Reason」という非常に反響の大きかったキャンペーンを挙げて説明したいと思います。これは弊社の戦略プランニング・ディレクターの小宮広高が担当した事例です。

 コカ・コーラのキャンペーンを作るとなった際、まずは「コカ・コーラはいつ飲むとおいしいと思われているのか?」といったデータを調べたくなることが多いと思います。このとき、仮説を持たないままデータを見てしまうと、「暑いとき」「ハンバーガーを食べたとき」などの、新しく調べなくてもある程度わかっているような新規性のない答えしか得られないかもしれません。

 小宮はこれらのCMでもよく描かれているようなコカ・コーラを飲みたいシーンに対して、「これって本当かな?」と直感的に疑問を抱いたそうです。その違和感から、「どうも違うような気がする(これらのシーンではないのでは?)」という仮説を立てました。

『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)
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本質的なインサイトを捉えた、コカ・コーラの「No Reason」キャンペーン

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/06/28 07:30 https://markezine.jp/article/detail/39239

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