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直販EC「象印ダイレクト」の顧客接点を増やし、購入後もつながり続ける仕組みとは

 日本の老舗メーカーである象印マホービン株式会社の直販ECサイト「象印ダイレクト※」は、オリジナル商品の復刻花柄シリーズや予約販売など独自の施策を行っている。象印ダイレクトを運営する立野航さんと、象印ダイレクトをシステムで支援するインターファクトリー・武藤彩さんに話を聞いた。  ※象印ダイレクトの運営は象印フレスコ株式会社です。

情報発信を増やしたい 直販EC「象印ダイレクト」の取り組み

 象印マホービンでは、2020年11月から直販ECサイト「象印ダイレクト」を運営している。同社マーケティング部に所属する立野航さんは、サイトの企画段階から参加、システム選定やローンチ作業を経て、現在は商品・サービス企画やマーケティングなど、EC運営全般を担っている。

 「象印ダイレクト開設のきっかけは、これまで以上に製品の情報発信を行っていきたいとの考えが大きいからです。従来は、店頭や商品情報を掲載したウェブサイトが主な情報発信の場でしたが、発信する機会や量を増やし、包括的に象印を知っていただきたいとの思いから、情報発信のひとつとして象印ダイレクトを開設することになりました」(立野さん)

 製造元が直接消費者に販売を行ういわゆるD2Cサイトだが、ビジネス上の目標はどこに設定しているのだろうか。

 「売上は重要な指標のひとつですが、それを第一には置いていません。メーカーが自ら運営するECサイトだからこそ、さまざまな取り組みを試すことができると考えています。たとえば、引きの強い商品画像はどのようなものか、動画での解説は有効か、お客様はサイト内をどのように回遊され購入に至るのかといった施策などです。それらのデータや成果を社内で共有し、他社様のECサイトに商品を掲載いただく際に有効な施策をご提案できればと考えています」(立野さん)

 象印ダイレクトでは、サイトオープン時に株式会社インターファクトリーが開発・提供する、クラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」を採用した。コロナ禍の影響もあり、インターファクトリーには象印ダイレクトのようなD2Cサイトを作りたいとの要望が、メーカー企業から多く寄せられたと言う。

 「メーカー企業様によるD2Cサイトは、商品を管理する基幹システム、CRM、倉庫システムなど、さまざまな既存システムと連携することを前提に構築することになります。そのため、ECサイト構築システムには、既存の他システムとスムースに連携できる拡張性が求められます。ebisumartはそういった他システムとの連携の容易さや機能の定期アップデートといった『拡張性』について高い評価をいただいており、多くのD2Cサイトで採用されています」(インターファクトリー・武藤彩さん)

復刻花柄シリーズボトル
象印ダイレクトで販売している「復刻花柄」シリーズのステンレスボトル

 ECサイトは構築して終わりではなく、継続的な集客が肝要だ。象印ダイレクトではサイトオープンと同時に、1960年代後半から一世を風靡したレトロな「花柄」シリーズを、ステンレスマグ・ガラスポット(各3柄ずつ)で限定販売。注目を浴び、象印ダイレクトへの集客にもつながった。

 「復刻花柄シリーズを作った理由はふたつあります。ひとつは、象印ダイレクト開設にあたりお客様が来たいと思っていただけるような目玉商品が欲しかったこと。もうひとつは、以前から『花柄シリーズを復活してほしい』といった声を社内外からいただいていたことです。このふたつの理由をもとに、直販サイトだからこそできる取り組みは何かを考え、復刻花柄のステンレスマグとガラスポットを発売させていただくこととなりました。非常にご好評いただき、一部商品は売り切れとなったため、追加生産の運びとなりました」(立野さん)

象印マホービン株式会社 マーケティング部 サブマネージャー 立野航さん
象印マホービン株式会社 マーケティング部 サブマネージャー 立野航さん

 消費者の立場に立てば、購入の際にセールや利便性を訴求する大手モールや小売店サイトと比較検討するのは当たり前のこと。だからこそ、顧客の声を反映したオリジナル商品が話題になり、売り切れるほどの好評を博すという流れは、多くのメーカー企業にとってうらやましい成功事例だろう。象印ダイレクトでは、どのように話題づくりを行ったのだろうか。

 「ウェブ広告を出稿するなど基本的な取り組みは行っていたのですが、きっかけとなったのはご購入いただいたお客様によるSNSへの投稿でした。そこから連鎖的につながり、広がっていったと考えています」(立野さん)

ブランドを損なわない施策で自社ECを差別化

 象印ダイレクトのオリジナルアイテムには、復刻花柄シリーズ以外にも、デザイナーやアニメキャラクターとコラボしたステンレスボトルがある。2022年4月には、海外で販売している水彩花柄ボトルを国内では象印ダイレクト限定で発売するなど、定期的に新商品を投入していく考えだ。

 「象印ダイレクト独自の取り組みとして、ステンレスボトル、ステンレスタンブラーへのオリジナルプリント(50本以上で受付)を有料で承っています。2021年冬に、問い合わせ方法の導線を最適化する形でページをリニューアル。その結果、3月の卒業シーズンに向け、お客様からの問い合わせが増加しました。従来は個別にお問い合わせをいただいていたのですが、象印ダイレクトを窓口とすることで、オリジナルプリントに対し、お客様が気軽にお問い合わせいただけるようになったと感じています」(立野さん)

水彩花柄ボトル
2022年4月に発売を開始した「水彩花柄」ステンレスボトル

 さらに、2022年2月からは一部の商品で予約販売を開始、こちらも好評を博している。新商品を発表したタイミングで、象印ダイレクトにてその商品の予約注文が行える。2022年6月21日新発売の、圧力IH炊飯ジャー『炎舞炊き』シリーズ NW-FA型についてもこの取り組みを行った。また、2022年7月にはオーブンレンジのジャンルに参入。こちらも象印ダイレクトで、予約注文を受け付け中だ(8月31日まで)。

 「お客様からの反応を受け、直販ECサイトでの予約注文に一定のニーズがあることが確認できました。象印ダイレクトで予約注文されるお客様は、当社の商品情報ページをご覧になっていただいた上で、そのページに設置された『この商品を購入する』ボタンから象印ダイレクトにたどりついてくださる流れが多くなっています」(立野さん)

オーブンレンジ
現在予約受付中のオーブンレンジ 「EVERINO(エブリノ) ES-GT型」

 顧客の声を活かしたオリジナル商品の開発、オリジナルプリントのようなプラスアルファのサービス、そして新商品をいち早く手に入れたいファンに向けた予約注文の仕組み。いずれもD2Cサイトや自社サイト運営の参考になるとインターファクトリー・武藤さんは言う。

 「当社のカスタマーサクセスチームには、自社サイトと大手モール出店店舗との差別化についてのご相談がよく寄せられます。象印ダイレクトでのお取り組みは、ブランドを損なわずお客様のニーズに沿ってさまざまなご提案をなさっており、自社ECサイト運営の最適な施策ではないかと感じておりました」(武藤さん)

株式会社インターファクトリー ビジネスディベロップメント部 カスタマーサクセスチーム 武藤彩さん
株式会社インターファクトリー ビジネスディベロップメント部 カスタマーサクセスチーム 武藤彩さん

アフターケアで顧客とつながり続ける

 2022年3月に、象印ダイレクトはデザインリニューアルを行った。

 「リニューアル以前はコーポレートカラーの青を基調にしていたのですが、お客様が商品をより見やすく、より象印ダイレクトでのお買い物を楽しんでいただきたいという思いから、基調カラーを変更しました。復刻花柄シリーズやデザイナーとのコラボ商品については、象印ダイレクトのリニューアルをきっかけに、今まで以上に商品画像に力を入れています。まだまだ足りない点はあると思いますが、お客様の反応などを踏まえ、よりお客様に見ていただける、商品のことを知っていただけるように日々考えています」(立野さん)

 「サイトを拝見したところ、ユーザーに寄り添い、使いやすいようにデザインされていると感じました。当社のカスタマーサクセスチームでも、サイト内導線の改善等のご相談は承っております。その際にはGoogle アナリティクスでの定量分析やユーザー調査による定性分析を行い、改善アドバイスを行うといったサービスもご提供しております」(武藤さん)

対談するふたり

 象印ダイレクトの開設から、11月で丸2年を迎える。今後の展望を聞いた。

 「象印ダイレクト開設の目的は、情報発信の軸とし、お客様との接点を増やすことにありました。今後は、商品をご購入いただいたお客様に、より象印のファンになってほしいとの思いがあります。

 当社では象印ダイレクトの他にも、象印製品ご購入者様向け『ZOJIRUSHI オーナーサービス』や、製品の部品をお求めいただける『象印パーツダイレクト』といったサイトを運営しております。象印ダイレクトで会員登録いただいたお客様には、新商品や限定商品についてのメルマガをお送りしていますが、これらの別サービスにも積極的にご案内し、ご購入後もお客様のお役に立ちたいと考えています。商品をご購入いただいたら終わりではなく、ご購入後もお客様にどれだけ寄り添うことができるか。それがファンになっていただくことにつながると考えています。

 それを踏まえECシステムであるebisumartには、のしなどのギフト用オプションやセット販売など、まだ私たちが使いこなせていない機能がたくさんありますので、目的に合わせながらそのような機能も試してみたいですね。ECの世界は常にアンテナを張った上で、変化に対してアップデートを続けていかなくてはならないと考えています。インターファクトリー様には2022年6月に施行となった改正特商法にもご対応いただいたように、今後もシステム面でのサポートや、まだ利用しきれていない機能などのご提案を期待しています」(立野さん)

 「システムについては、『拡張性』『最新性』といったebisumartの特徴を活かし、今後も象印マホービン様をはじめユーザー企業様のご意見をお聞きしながら標準・オプション機能の拡充を目指していきたいと思っております。運用の部分では、象印マホービン様専任の営業担当やサポート担当と連携させていただきながら、象印マホービン様のEC事業をサポートさせていただければと考えております」(武藤さん)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39786