モバイルとテレビ画面用でクリエイティブを作り分ける必要はあるか?
──YouTube CTV広告を活用する際、クリエイティブはモバイルへの出稿時に用いているものと使い分ける必要があるのでしょうか?
デバイスごとに効果的なクリエイティブ要素を分析したところ、現段階では、デバイスを問わず共通の要素が多いことがわかりました。よって、モバイル向けに推奨しているABCDフレームワークに沿ったクリエイティブは引き続き有効です。加えて、YouTube CTV広告ではテレビCMのクリエイティブをそのまま配信すると、広告想起やブランド認知などアッパーファネルのブランドリフトが高くなる傾向もあります。ですので、定常的にテレビCMの予算投資をしている企業が初めてYouTube CTV広告を試すときにはテレビCMのクリエイティブをそのまま配信することを推奨しています。
次のステップとして、YouTube CTV広告に戦略的に継続して戦略投資することが決まれば、広告主のマーケティングKPIに合わせたクリエイティブを制作されると良いと思います。たとえば、先にもお話ししましたが、YouTubeをテレビ画面で視聴するとき、モバイルやデスクトップPCでの視聴と比較して平均視聴時間が60%長い傾向があります。よって、短尺のバンパー広告でオールウェイズ・オンの認知施策を行いながら、長尺の広告をクリエイティブのローテーションに入れることにより、特定のブランドや商品の認知・理解を大画面を通してより深めていくという使い方もできます。
──なるほど。施策の目的やKPI次第で、色々なクリエイティブでのアプローチが考えられそうです。
そうですね。Googleでは、大画面・高音質・共視聴という環境特性のあるCTVならではの広告クリエイティブを試す価値は高いと考えています。従来の広告にはあまり見られないミュージックビデオ風のストーリーや、インタラクティブ性を持たせたQRコード付きのクリエイティブなど、アイデアは尽きません。
ABCDフレームワークとは
Googleが提唱しているクリエイティブガイダンス。Attention,Branding,Connection,Directionを基本原則としたクリエイティブを配信することにより、メディアプラットフォームにおけるROIを最大化させることを目的に作られている。
参考:Think with Googleより『4つのクリエイティブでコネクテッドテレビでの認知効果を検証——ベネッセと探る「ABCDフレームワーク』
CTVが従来のマーケティング課題を解決する新たなカテゴリーに
──YouTube CTVを新たな広告の出し先として活用したいと考えているマーケターに向けて、最後にアドバイスをいただけますか?
まず、「YouTube CTV広告」と考えるのではなく、CTV広告全体の視点で考えてみる必要があります。年代を問わず、生活者がオンライン動画をテレビスクリーン上で見るという行為は、みなさんも自分自身の実感値としてあるのではないでしょうか?
マーケティングにおいては、長い間、いかにオフラインとオンラインの垣根を取り払って施策を行うかが課題となってきました。その点、このCTV広告はテレビスクリーンで動画広告のメッセージを届けられるということで、まさにその垣根を取り払う象徴であると言えます。将来的には、たとえばアッパーファネルに向けた認知獲得目的の施策において「テレビか、デジタルか」ではなく、まずはCTVを主語に考え、そこからテレビCMとデジタルの動画広告を考えていくという時代も来ると考えています。
また、海外のユーザーにリーチしたい場合、テレビCMであればその国ごとでバイイングしなければならなかったところが、YouTube CTV広告なら日本で協働している広告会社と共に全世界に出稿できるのです。さらに、テレビ広告、デジタル上の動画広告、そしてティブ性を持たせたQRコード付きのクリエイティブなど、アイデアは尽きません。CTV広告の投資効果をクロスメディアで検証する手段も急速に整ってきており、この部分においては、実は日本は世界的にも取り組みが進んでいます。CTV広告という新たなカテゴリーそのものの芽生えが、従来のマーケティング課題を解決する新たな手段となり得ます。ぜひこの領域の発展を追いかけ、トライしてみてほしいと思います。
※1 Google/Intage、AudienceResearch2020、日本、n=4,666、2020年8月
※2 Google/TalkShoppeが日本国内において2021年7月に実施。
※3 2021年3月、日本でGoogleが実施。
