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【特集】テレビ×マーケティング2023

ROI最大化と、意味ある出会いの創出を両立する。日産と博報堂DYが考えるテレビ活用の可能性

未来のお客様をつかむ「Dance Over There」

──クロスメディアについてはどのような取り組みをされているのでしょうか?

小倉:お客様にとって意味ある「偶然の出会い」を作る、社内では「Dance Over There」をキーワードに展開しています。企業からの一方的な発信ではなく、お客様側に立って立ち振る舞おうということです。この背景には、広告に対する生活者のスタンスの変化があります。

 弊社と博報堂DYグループさんの調査データによると「広告は商品の大事な情報源」と捉えるお客様は20年で半減しました。一方で、我々がアプローチしたい若年層には「商品やサービスとの偶然の出会いを楽しめることもある」とポジティブなお客様がいることもわかりました。そこで、既存の広告の概念にとらわれず、お客様視点に立ち、意味ある「偶然の出会い」を作ろうとしています。

 具体的には、OTTと地上波を横断し、露出の最大化にチャレンジしています。たとえば、フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『silent』では、地上波の番組内で純広告や番組連動CMを展開。さらにそれを活用したTVer上のミッドロールジャックを配信視聴者向けに行うなど、お客様に興味を持ってもらいやすい企画を実施。TVerでの配信も行ったことでアドリーチが全世代で上昇し、F2層では約4割がTVer配信によって獲得したインクリメンタルリーチでした。

関谷:「Dance Over There」とテレデジ統合指標での評価の、両輪を回し続けることで、メディア費の効率化やブランドスコアの向上といった成果が生まれています。

 たとえば、AaaSを活用して、数十万件のテレビ視聴ログデータを使い、テレビとデジタルバナーの最適化について検証したところ、ディスプレイ広告によるインクリメンタルリーチが10%増加しました。車種名の指名検索では、テレビのみの広告接触に比べ、テレビ+ディスプレイ広告の場合のサーチリフトが5倍に及ぶなど、大きな成果が見られました。

日産の考えるテレビ×マーケティング

──日産のマーケティング戦略において、現在テレビはどのような立ち位置にあるのでしょうか?

小倉:テレビは引き続き重要な役割を果たしています。実際のリーチ&フリークエンシーを見ても、テレビほど広範にリーチしてブランド認知を向上させ、商品の情報を届けられるメディアは現時点では他にありません。ただし、テレビ単体で最大効率を図るだけではROIの向上は見込めないので、テレビとデジタルの統合が重要なのです。最近はコネクテッドテレビの利用も伸びているので、『silent』の施策のように、同じ世界観の中で新たなタッチポイントが実現できることもメリットだと考えています。

赤星:自動車のマーケティングならではのテレビの立ち位置もあります。実は自動車の検討意識を分析すると、若年層のほうがテレビCMの影響が相対的に大きいのです。中高年は車が好きな人も多く、詳しくもあるため多様な情報源に触れて検討します。若年層は車への憧れが薄く、ライフスタイル変化などで必要に迫られ情報収集を始めます。しかし、詳しくないためCMのようなリーチが広く受動的なタッチポイントの影響が相対的に高くなるのです。

 全年代でテレビCMは重要ですが、若年層に十分に届くくらい出稿すると、テレビ接触の高い中高年がオーバーフリークエンシーになるため、テレデジ統合でリーチを最適化することが全体での効率化につながります。

──オンラインとオフラインの垣根を越えたプランニングと実行を実現するために、日産ではどのような体制を敷いていますか?

小倉:社内体制を考えるにあたって、特に弊社のような大規模なメディア投資をする場合、効率化だけではなく、マーケティング視点での全体最適が不可欠です。そのために、宣伝部をテレビとデジタルが統合した体制にすることはもちろん、事業部とも数字をタイムリーに共有して、共通理解を持って議論・判断ができるようにしています。

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マーケティングにおけるテレビ活用の課題

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/25 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42260

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