デジタルマーケティングを強化し大胆な改革を行う「銀座・和光」
大里:本連載では、店舗ビジネスの有識者や新たな店舗ビジネスで注目される企業の方々をお招きし、これからの店舗ビジネスの在り方を紐解いていきます。まず、和光のマーケティング部について詳しく教えてください。
米原:我々マーケティング部は和光が創業75年を迎えた2022年に、リブランディングを行うに際して「広報宣伝部」を改称して創設されました。親会社であるセイコーグループと連携しながら、継続的なブランドの発展に向けて、マーケティング視点での戦略展開を行っています。
米原:現在は特に、デジタルマーケティングを強化しており、SNS広告の出稿やメディアとのタイアップ、駅のデジタルサイネージでのプロモーションなども行っています。
大里:和光と言えば、多くの人が高級専門店として由緒正しいイメージを持っていると思います。故に、従来のプロモーション方法を継続してイメージを守ることに重点を置いていると思っていましたが、改革を大胆に進めていることに驚きました。
米原:和光は1947年の創業以来、長年多くのお客様からご愛顧いただいていますが、一方でその歴史の長さからか「入りにくい」「緊張する」といった声もうかがっていました。あらゆる世代の方からブランドを支持していただくためにも、デジタルマーケティングの強化を含め、和光自体も変化していきたいといった想いが現在のマーケティング推進の根底にあります。
新規のお客様が入りやすい新たな店舗づくり
大里:デジタルでの顧客接点改革を進める一方、和光では2022年、新しいコンセプトの店舗を続々とオープンさせるなどといった店舗起点の顧客接点改革を積極的に進めています。
一般的にはECの普及から、若者を中心に店舗離れが加速する流れがある中、和光が実店舗を増やしているのはなぜですか。
米原:ECへの拡大も行っていますが、お客様が和光の世界観を五感で感じることができるのは実店舗ならではと考えています。
そういった考えから、これまでご利用いただいたことがないお客様に和光を理解していただけるように、実店舗での新しい店舗体験の提供を重視しています。
新しい体験ができる場所として始めたのが、新形態の店舗「WAKO SITE」です。2022年10月に小田急百貨店新宿店、同年11月に銀座四丁目中央通り店をオープンしました。WAKO SITEでは「内から外へ」をコンセプトに、和光本店のおもてなしを本店とは異なる新機軸で発信しています。
米原:具体的には、コンセプトに合わせた新たな店舗名とそのロゴデザイン、本店の黒を基調にした色合いとは異なる白一色の内装などの変化を取り入れています。また、スタッフの服装もカジュアルなスタイルにしました。こうした変更をしている一方で、小田急百貨店新宿店では本店の外壁を3Dプリンタで再現した内装にし、既存のブランドイメージとのつながりも感じられるようにしています。
商品のクオリティーやおもてなしの質は維持しつつも、新しい和光の姿を発信することで、外国からの旅行者をはじめ、新規のお客様が入りやすいと感じる場所の創出を目指しています。