顕在層より潜在層の方が高CTRという結果も
MZ:具体的には、どのような施策が可能になるのでしょうか?
宮村:大きく2種類のソリューションがあります。
一つは、ニュースを見るというユーザー行動データを使う「ニュース閲覧ターゲティング」です。ヤフーには「野球」「自動車」など多くの記事を分類した「テーマ」と呼ばれるカテゴリーがあり、その膨大、かつ多様な種類を持つテーマを選択し、マーケティング施策に活用いただいております。テーマごとの閲覧者を潜在層としてセグメント化し、ターゲティング広告の配信リーチ数や顕在への展開率のレポーティング、また検索データ等と組み合わせたインサイト分析の利用も考えられます。
宮村:もう一つは、ニュース媒体という面の価値の特性を活かした、「トピックスPR」という新しい広告枠です。ブラウザ版Yahoo! JAPANトップページとYahoo! JAPANアプリの最上部にある「Yahoo!ニュース トピックス」を活用します。ヤフーで最もユーザーの注目度が高いこの枠の中に、企業様に出稿いただけるプロモーション枠を作りました。
MZ:潜在層へのリーチが強みとなるセレンディピティ・マーケティングですが、実践的な活用に詳しい電通デジタルのお2人から見てどのような価値があると考えますか。
井口:ニュースデータを使う取り組み方は、世の中のモーメントを捉えられますし、従来よりもユーザーの感情により近くで寄り添っている印象を感じます。
たとえばZ世代はタイパ重視が特徴といわれ、動画を見るにしても2倍速で見たり、情報収集も自分の興味あるものだけを取りに行ったりする傾向があります。でもそれでは、自分が気づいていなかったけれど、実は興味があったといった新しい出会いは減っていく。そこを捉えるのはユーザーにとっても企業にとってもポジティブだなと思います。
坂戸:私もYahoo!ニュースのユーザーの一人ですが、ニュースを見ているときは本当に何となく見ていて、まさに思いがけない出会いがあるなと感じています。ただしマーケティングへの活用を考えると、ポリシーなどの面でニュースデータは容易に扱えるものではなく、上手く使える方法を以前から考えていました。今回はニュースデータを広く使えるような座組を作っていただけたので、活用を広げられています。
MZ:電通デジタルさんでは今回各ソリューションの提案を行っていく中で有効な手段として判断するためにどのような工夫がありましたか? もし検証のデータなどがあればご提示ください。
坂戸:セレンディピティ・マーケティングを広く認知、理解してもらうことを目的として、広告配信の設計部分を電通デジタルでお手伝いさせていただきました。
その過程で、効果検証の実験も行っています。仕事としてマーケティングに関わっている顕在層に広告配信すると同時に、Yahoo!ニュースでマーケティング関連のニュースを見ている方を潜在層として同じ内容の広告を別途配信し、その差異を検証しました。
もちろん顕在層のほうが完視聴率が高く、サイト来訪後の滞在時間も長いなどターゲットユーザーの質は高いのですが、潜在層もユーザーの質が低いわけではありません。むしろ潜在層は配信の母数が大きいので、リーチ数が多いのはもちろん、クリック数、完視聴数は引けを取らない数字が出ています。特に、CPCについては顕在層の1/3程度、CTRについては、ニュース閲覧ターゲティングの方が実は1.5倍ほど高い数値です。現在も改善に向けて検証を続けていますが、全体効率を一定維持しながら効率よくリーチを拡大できている点はポジティブに受け止めています。