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NYの第一線で活躍するルース氏があげるマーケティングトピックス
田中:2つ目のテーマは何でしょうか?
ルース:次のテーマは、マーケティング・コミュニケーションです。ここで話したいのは、動画についてです。動画はアメリカでも、世界中でもまさに爆発的な流行を見せています。TikTokしかり、Threadsスレッズしかり、今やSNSは動画のためにあるようなものです。
マーケティングにおいても、みんな動画を使う新しい方法をいつも考えています。
3つ目のテーマは、マーケティング活動のメトリクス(成果指標)についてです。財務用語を使って自身の仕事の成果を報告する重要性は、マーケティングにおいてもどんどん高まっていると見ています。
こうした財務用語が重要になった背景には2つの理由があります。1つ目の理由として、マーケターは自分が会社にどのような価値をもたらしているかを、まずは理解しなくてはなりません。自分自身の仕事を自ら評価し管理するということですね。
もう1つの理由は、会社の上級マネージャーたちが財務用語で話すからという単純なものです。もし、何か新しい企画を提案したり、年間計画を実行したり、より大きな予算を獲得したいのであれば、CEOがわかる言葉で計画を説明しなければなりません。つまり、財務用語です。
田中:財務用語というのは、ROIとかキャッシュフローとかでしょうか。
ルース:P&Lに含まれるものすべてです。「私はこれだけのお金を投資し、これだけのリターンを得ました」と言えるかどうかですね。P&Lを見れば、レベニュー、コスト、利益がわかります。私の友人は「P&Lを見れば、CEOが下した決断をすべて見ることができる」と話していました。
就任期間が短い傾向にあるCMO、回避策は財務用語の習得にある?
田中:マーケターはマーケティングアクションを始める前に、どのようにして財務的な成果を予測すればよいのでしょうか?
ルース:去年のROIがわかっていれば、「これが過去5年間のROIです。これを踏まえて、来年はこれよりもよい結果を導き出します」と言えますよね。すると、財務計画を考えるエグゼクティブたちは「なるほどね。それで進めなさい」と言えます。
この予測はこれまでに実施してきたすべてのキャンペーンをもとに立てられているものです。これから実施するキャンペーンのプレP&Lとも言えます。
ただ、このようにお答えすると、先生はきっと「前例のないまったく新しいアイデアについてはどうするのか?」と言われますよね(笑)。
田中:はい、ルースさんの想像の通りです(笑)。
ルース:確かに、まったく新しいアイデアの場合は、過去の結果からは予測できません。ですが、マーケターが継続的に改善を行い、毎年よい結果を出していれば、シニアマネジメントはマーケターを信じ、喜んでリスクを取ってくれると思います。
田中:財務的な思考や議論が、クリエイティブなアイデアを殺すことにはなりませんか? 私にとって、マーケティングのプレゼンテーションはとても刺激的です。ですが、財務関連のステートメントは、重要ではありますが、あまり面白くないかもしれません。
ルース:私は違うと思います。実行される時にクリエイティビティが発揮されるのではないでしょうか。
私は、マーケティング活動がP&Lに素晴らしい結果を残した時に興奮しますし、満足します。反対に、とてもクリエイティブなアイデアでもワークしなかったら、ボスには「うまくワークしませんでした。もうこれを再びやることはありません」と言うしかないでしょう。
私たちが財務用語抜きで自分たちの成果を話そうとしたら、彼らは私たちのことをコストセンターだと思うはずです。そうではなく、マーケティングはプロフィットセンターであるべきです。デジタルで様々なものを可視化できる今日、私たちはそうなれるはずです。
田中:その話は、CMOの就任期間にも関係してきますか? この2000年代、CMOの期間はすごく短くなっていますよね。
ルース:まさしくです。たった数ヵ月のこともありますよね。直接的な関係はわかりませんが、CMOの就任期間には間違いなく大きな変化があります。CEOやCMO、CFOのようなCxOの中で、マーケターが一番就任期間が短いのも事実です。CMOが一番危険な役職かもしれません(笑)。