プラットフォームに求めた「アクションの少なさ」「穴のない仕組み」
MZ:ツールの選定にあたって、目指した体験を実現するためにどのような点を重視されましたか?
山中:一つは、オンライン参加であろうと参加者がしなければならないアクションの数を少なくすることです。参加者にはオンライン参加に必要な操作に不慣れ方、その形式自体に抵抗感があるという方もいます。できるだけハードルを下げたいと感じていました。
もう一つは、運営側として「穴」を作らないこと。たとえば、特定のWebページ上に会議参加用のURLがあるという状況では、どこかで流出した場合に使い回されてしまう危険があります。当然この危険性には前々から気づいており、参加登録したメールアドレスがないと入れないようにする必要があると考えていました。予想外のエラーがあった場合、ある程度の規模では人力で対応も可能かもしれませんが、特に並行する会議数が多いイベントでは不可能です。このような穴を作らない仕組みが必要と考えていました。
MZ:こうした前提のうえで、今回は配信プラットフォーム「Zoom Events」を採用していますが、どのような経緯がありましたか?
山中:事前のリサーチとして海外の大きな会議の様子を見ていると、運営側の精神的なハードルからか自国のプラットフォームを利用しているケースが多く見られました。しかし、我々の目指す国際会議で上手く機能するか考えると懸念点が多く悩みましたね。
一方、様々な運営実行委員の方と話をするなか、海外の研究者との普段のコミュニケーションにはやはりZoomが多く使われている状況でした。当時、ZoomミーティングとイベントプラットフォームとしてのZoom Eventsにどのような差があるのかはあまりわかっていませんでしたが、使い勝手の良さについてZoomが知れ渡っているのは間違いありませんでした。ハイブリッド開催の方針が固まった折に詳しく話をうかがったところ、ちょうどZoom Eventsの大型アップデートがあり、先述の要件についても期待できるものとわかりました。
MZ:Zoom Eventsの概要を改めてお教えいただけますか?
島方:Zoom Eventsは、ハイブリッドイベントやオンラインイベントの管理から運営、チケット発行、決済まで、すべてのプロセスをワンストップで可能にするオールインワンイベントプラットフォームです。
Zoom Meetings やZoom Webinarsのどちらで開催するかを選べる点に加え、マルチセッション、複数日に渡るイベント、同時間帯にパラレルで開催するイベントにまで対応できる管理機能が特徴となっています。
島方:従来のイベント運営では申し込みフォームの準備やチケットの販売、当日の配信、バーチャル ブースの体験機能などを別々のツールやサービスで行われるケースが多かったのですが、Zoom Eventsは、イベントロビー・Expoフロア・ネットワーキング機能など、出席者と参加者のつながりを構築する機能や、メール配信機能を備えており、Zoomの安定した配信とともにこれらをまとめて行える唯一無二のプラットフォームとして進化しています。
前例のなかった大規模同時配信でフルハイブリッド化に成功
MZ:こうして準備した結果、今回の開催ではどのような体験を提供できたのでしょうか?
大石:オフラインの会場である早稲田大学では120の教室を確保し、Zoom Events上でもそれに対応して120のセッションを同時並行で配信できるようにしました。プログラムの整理もあり、実際には最大で93セッションを同時配信しました。
山中:本来、同時並行で配信できる数は限られますが、その点はZoomにご相談し、柔軟な対応をしていただけました。
島方:我々としても過去に経験がないほど大きな規模のイベント開催でした。しかし、グローバルのプロダクトチームに直談判して調整を重ねた結果、ご要望に近づけることができました。今回の経験を通じ、柔軟に対応できるZoom Eventsのポテンシャルをお見せできたのではと思います。