社員インフルエンサーならではの、チーム感と個性の尊重
同社のKPIは、個人アカウントに関してはフォロワー数とエンゲージメント率を設定しているが「目的に合わせて変えていくべき」と河原氏。フォロワー数が伸び悩む場面では、同じ境遇の仲間がいることも社員インフルエンサーの支えになっているようだ。
「成功や失敗を共有することで、1人だけで厳しい状況に陥るのではなく、仲間同士で頑張っていく雰囲気があることも救いになっていました」(河原氏)
オムニPBPは公募タイミングによって参画時期が異なるメンバーもいるため、先行事例として徐々にフォロワー数を伸ばしてきた体験も共有されるようになってきた。ただ、参画時期を複数設けている目的は別にもあるという。
「私たちの活動は、全国のPBPに波及することで初めてビジネスとしての価値が出てきます。全国の販売員のデジタル化・DX化を促進していきたいので、そのためにもジョブローテーションをしていきたいと思っています」(河原氏)

全社的なデジタル化・DX化を目指す一方で同社は「社員インフルエンサーが発信する情報のコントロールは行っていない」と河原氏は明言している。
「それぞれの個性を大事にしているので、個々のフィルターを通して情報発信することに価値を置いています。薬事法などの正しい情報は社内でトレーニングされているので、間違った発信がないか、コンプライアンスに違反するようなことはないかといった最低限の確認のみは、当人同士で対応してもらっています」(河原氏)
オムニPBPに委ねる姿勢は、社内ブランドからの意向に対しても変わらない。時には「こういう風に言ってほしい」という依頼を社内で受けることもあるという。しかし必ず行う必要はなく、参加したいオムニPBPに手を挙げてもらい、ブランドから説明を受けた上で、社員インフルエンサーの裁量にゆだねられるという。
「フォロワーのことを一番理解しているのは、社員インフルエンサー自身です。どう表現したらフォロワーに良さが伝わるか、どう使うとフォロワーがメリットを得られるかというところを考えてコンテンツを作ってもらっています」(河原氏)
ライブ感を共有しながら信頼関係を構築する場・ライブコマース
ライブコマースは、ショッピングとエンターテインメントの組み合わせという点では、一見テレビショッピングと似ているコンテンツだ。しかし、コミュニケーションの観点で大きな違いがある。
「私たちが大切にしているのは、視聴者からのコメントです。それらを読んでお答えすることで、演者から視聴者へ一方的に決まった情報を伝えるのではなく、視聴者とのやりとりを通じて一緒にライブを作っているという意識で配信をしています」(河原氏)

一緒にライブを作っている感覚は、河原氏自身が視聴者になった経験からも得られたという。
たとえば、気になっているけれど聞きづらいことを他の視聴者が聞いてくれ、「私も同じ気持ちだった!」と共感することがある。ライブをする演者とだけでなく「顔も見たことない視聴者同士でも一体感があると思っています」と河原氏。
また、ライブコマースにおける一体感は、体験したことがない人にはイメージしづらいものだ。だからこそ「今後新たな視聴者や本セッション参加者と一緒に、活動を広げていけたら」とも語った。
「場を盛り上げる人」や「一緒に楽しむ人」がいることで成り立つファンベースの体験がないと、なかなか売上にはつながらない点がライブコマースだ。コミュニケーションによる体験から売上を作り出すためにも、継続的な活動によって構築される「お客様・視聴者・フォロワーとの信頼関係」が重要な要素となっている。
